オリンピック、万博などを通して、日本では建設ラッシュが続いています。
新規の建設物、老朽化に伴う修繕など、理由はそれぞれですが意外とおしゃれな建物が多いなと思う方もいらっしゃるはず。
そんなおしゃれな建物を見ていると「建物の建設には自由があるな」と思います。
他にもハウスメーカーの広告では自由設計を売りにしているところもあります。
けれど、実はそんな建物には、建築制限が存在します。建物の中である内装にも制限があるのです。
日本で建物を建設する際には、厳しい制限をクリアしているのだと思ってくださいね。
建築制限の基準は建物によっても違います。
そこで今回は、倉庫を例として、建物の建築制限について追求してみましょう。
なぜ建築制限があるのか?
ご存知のように、日本で建物を建設する際には「建築基準法」に定められた基準を満たすことが条件となっています。
地震大国である日本において、地震に強い(耐震性)建物を建設する際に話題となりますが、他にも建物に対する基準が制定されています。
では、なぜ建築制限が必要なのでしょうか?
理由は、建物で火事が起こった場合に被害を最小限に抑えるためです。
ビルが密集する都心部、危険物を扱う工場や倉庫、その他にも多くの人が集まるショッピンモールや映画館など、火事が発生した場合は延焼したり、スムーズに避難ができなくなったりと被害は大きくなります。
そして、消火活動にも影響があります。鎮火させるための活動も大事ですが、建物内の人たちを安全に避難させることも必要です。
その昔、江戸の町では放火は重罪。今現在もそれは変わることなく、建物の建築制限も火事の怖さを知っているからこそのことだといえます。
倉庫に関する建築制限
建設される建物の用途や大きさによって基準に違いがあります。
今回、例とする倉庫もカテゴリとしては同じでも、実際には建物の大きさや倉庫で保管するものの違い、用途の違いがあります。
大きなカテゴリとして、倉庫に対する建築制限についてご紹介します。
耐火要求の構造制限
どんなに優れた建物でも、火事で建物が燃えないとすることは不可能です。
だから、できることとしては、あまり燃え広がらないように耐火性に優れた建物を建設することです。
この場合の耐火性は、建物の構造を指しています。
耐火建築物と言い、建築基準法で定められた、建物の主要構造部(柱、梁、床、屋根、壁、階段など)に耐火性能のある材質などが使用されている建物のことをいいます。
耐火建築物の基準については、用途や大きさなどにもより違います。
倉庫の場合は、床面積が1,500㎡以上で準耐火建築物、3階以上の階が200㎡以上で耐火建築物とすることが定められています。
火事による被害を少なくするための基準ですから、非常に厳しいです。
防火区画の設置
防火区画とは、火が燃え広がるのを防ぐため、一定面積ごとに防火区画を設けることをいいます。
倉庫の場合、同敷地内で少し離れた場所で火災が発生しても、すぐには気づくことができません。しかし、火の周りは早く逃げ遅れてしまうなんてこともあります。
そこで、防火戸などを活用して、区画してひの周りを防ぐようにするのです。
防火区画には4種類ほどあります。スプリンクラーの有無を基準とした場合には、スプリンクラーがない場合には1,500㎡ごと、スプリンクラーがある場合には3,000㎡ごとに防火区画とすること。そして、防火区画は床・壁は準耐火構造(60分)、開口部は特定防火設備(60分)とすることが求められます。
非常用の進入口の設置基準
物流の倉庫など、規模が大きい倉庫(3階建て以上の倉庫)の場合は「非常用の進入口の設置基準」を満たす必要があります。
いわゆる外階段にバルコニーを設置するということです。
これも火事の際の消火活動のためです。
3階以上へ迅速に消火活動をする、救助を行うために、屋外から進入することができるように義務づけられています。
設置にも基準があります。幅75cm以上、高さ1.2m以上の開口部にバルコニー付きの進入口を設けるとされています。
場合によっては、非常用のエレベーターを設置したり、窓を代替えの進入口にすることで、基準をクリアできるケースもあります。
非常階段については、鉄骨で作られている場合、劣化が心配されます。非常時に錆びていて使えない、二次災害となることがないように、日頃からメンテナンスを忘れないでください。
内装制限
内装に使用できる資材の材質についても制限があります。
・燃えやすい材質
・燃えて有害物質が出る
主に、こうした材質なものは避難の妨げになるので、使用できる場所などに制限が設けられています。
延焼を抑えるために天井や壁に使用される仕上げ材は、不燃材料、純不燃材料を使用することは決められています。
【内装仕上げ材料の一例】
- 不燃材料:コンクリート、ガラス、金属板、モルタル、厚さ12mm以上の石膏ボードなど
- 準不燃材料:厚さ9mm以上の石膏ボードや厚さ15mm以上の木毛セメント板など
倉庫の建設には用途地域の建築制限(用途制限)の確認も必要
建築基準法の他に、都市計画法によって建築制限がある地域があります。
この建築制限は、建物に対してではなく建物の用途に対する「用途制限」となります。
例えば、
・住宅エリアに工場建設はできない
・良好な住環境を確保するため高層マンションは建設できない
・重工業の工場があるエリアには病院の建設はできない
このような住みやすい環境を作るための用途制限があります。
倉庫についても住宅エリアでの建設は厳しいので、土地のある地域の法令についても調べておくようにしましょう。
現在のところ、倉庫が建設できるエリアは、13の用途地域の中で7つあります。
- 準住居地域
- 田園住居地域
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
※「田園住居地域」は、農産物の製造・貯蔵などのための倉庫に限る
この中で倉庫を建設するのに適しているのは、準工業地域、工業地域、工業用地域であり、工場系の用途地域では、倉庫の建設にあっていることが分かります。
まとめ
倉庫を例にして、建築制限についてご紹介しました。
地震の耐震基準などで知られる建築基準法には、建物が火災になった時の被害を最小限に抑えるためのための建築制限の基準が定められていました。
燃えない建物を建設することは不可能なので、燃え広がらないように、延焼して周りの建物に影響がないように、様々な基準が設けられています。
私たちは、日々、目にしながらも建物の防火設備について知らないことが多いです。
大きな建物での火事の怖さを知りません。
建物に助けられることも多いので、少し気にすることも大切ですね。
また、建築制限だけを見ると、とても厳しい基準でもありますが、きちんと活かされ用途に合わせた建物となっています。
倉庫を建設する側は、制限に縛られるだけでなく、活かして建設することができるように法令を理解しておきたいですね。
また、建物の用途によっては、建設できないエリアがあります。
住みやすい環境を守るためであり、倉庫や工場、商業など建物に対する用途制限があります。
倉庫に対しても基準があるので、都市計画法をしっかり確認してください。
法令を守りながら、思い通りの倉庫が建設できるように守っていきましょう。