鉄骨工場の技術と品質を支える5つのグレードについて

鉄骨工場の技術と品質を支える5つのグレードについて

日本の建設業は、完全な分業になっており、それぞれに専門の業者が存在します。
例えば、建物の設計、柱や梁の製造、建設現場で組み上げる鳶職など、多くの人や職人の力によって建物が建てられていきます。

多くの高層ビルや倉庫や工場は、鉄骨造で建てられていますが、それら建屋を骨組みとなる柱や梁は「鉄骨工場」と呼ばれるところで制作されています。

鉄は重くて固いため扱いも大変ですが、どのようにして鉄骨工場で加工されていくのか。また、鉄骨工場と一括りにしてしまいますが、実際にはグレードがあり扱える鋼材や建築条件があります。

今回は、鉄骨工場のグレードを中心にして、鉄骨工場についてご紹介します。

鉄骨工場での仕事の流れ

鉄骨造の建物の骨組みとなる柱と梁は、事前に鉄骨工場にて制作されたものが現場へと搬入され現場で組み立てられます。

設計する

設計図とは別に、工場で工作図が作成されます。これは、原寸通りに制作するのはもちろん、工場内での指示書的な役割をになっています。
工作図ができることで、必要となる材料の手配を始めていきます。

加工する

発注した材料の検査が済むと、加工に入ります。
・切断
・孔開け
・開先
ここでいう加工とは上記の工程をいいます。

組み立てる

加工された鋼材は、工作図や設計図に基づいて組み立てていきます。
鉄は固いものですが、熱を加えることで柔らかくなり、冷めることで再び固まり縮んでしまいます。この性質を考えて溶接をして組み立てることが必要となります。

溶接する

組立溶接が終わると、建物の構造上主要となる部分(接合部)の溶接を行います。
溶接にも手法はいくつかありますが、人が作業したりロボットを使用して行う場合もあります。

サビ止め塗装

鉄の弱点はサビです。出来上がった鉄骨に防錆としてサビ止め塗装を行います。
塗料は、立地条件(海が近い、屋内外など)によって使い分けるので、場合によっては亜鉛メッキ処理を行うことがあります。

搬入・現場での組立

仕上がった鉄骨は工場から建設現場へと、トラックやトレーラーによって搬入されます。搬入までのルートや、橋が耐えらられる重さであるかなどを考慮して運ばれていきます。

ここまでが鉄骨工場の仕事ですが、場合によっては現場で組み立てや溶接を行うケースもあります。

鉄骨工場のグレードとは

鉄骨工場には工場認定制度と呼ばれるものがあります。
これは、品質の良い鉄骨が生産され供給されるために必要なものとして実施されています。

・品質管理能力
・製造・検査設備
・制作実績
・技術力の向上と研究開発能力

工場の認定には厳しい審査・評価基準があり、これらをクリアした工場だけが5つあるグレードの中から認定されます。

認定制度について

鉄骨工場のグレードを決めるのは、専門機関の審査・評価を受ける必要があります。
現在、日本には2つの専門機関があります。

・株式会社全国鉄骨評価機構(JSAO)
・日本鉄骨評価センター

グレードは5つあり、評価の高い順に「S・H・M・R・J」とあります。日本で最も多いのは「Mグレード」です。最高位のSグレードの審査・評価は厳しく、日本にも10社前後しか存在しません。
各グレードについては、後ほどご紹介します。

また、認定期間は5年です。繰り返し更新が必要となるので、常にクオリティの高さを維持していく必要があります。

認定されるメリット

厳しい審査・評価を受けて認定工場となるメリットは、5つあります。

・溶接部の性能が保証される
・検査体制が担保される
・優れた鉄骨が提供できる(耐震性)
・工場の信頼度が上がる
・検査への対応も安心できる

生産される鉄骨の信頼度が高いほど、建設された建物は安全であることがいえます。
安心して使用できる鉄骨工場だと認められれば実績となり、建設業界での信頼度も上がるので、次の仕事へと繋げていくことができます。

また、認定制度を実施しているのは国土交通省なので、審査・評価をクリアすれば「認定=大臣認定工場」ということになるので、国に認められた工場となるのも大きなメリットとなります。

各グレードについて

5つのグレードについてご紹介します。
各グレードで定められることが2つあります。

・建物の規模・・・鉄骨溶接構造の建築物
・使用鋼材・・・鋼種・最大板厚・開先加工(詳細あり)

認定の範囲内において鉄骨工場では鉄骨の制作を行うことができます。

※以下の基準は一般社団法人 鉄骨建設業協会を参照しています。

Sグレード

・建物の規模・・・建築物の制限なし
・使用鋼材・・・制限なし

最高ランクのSグレードでは、制限がありません。なにも制限がないということは、逆にいえば審査は厳しいことを意味しています。どこよりも品質の良いもの、安全が提供できるということを誇っています。

Hグレード

・建物の規模・・・建築物の制限なし
・使用鋼材・・・鋼種520N,490N,400N級・最大板厚60㎜・開先加工制限なし

高層ビルを中心とした全ての建築物の鉄骨を製造することができます。

Mグレード

・建物の規模・・・建築物の制限なし
・使用鋼材・・・鋼種490N,400N級・最大板厚40㎜・開先加工制限なし

日本で最も多いとされるMグレードでは、中高層ビルを中心として全ての建築物の鉄骨を製造することができます。

Rグレード

・建物の規模・・・5階以下の建築物(延べ床面積3000m2以内高さ20m以上)
・使用鋼材・・・鋼種490N,400N級・最大板厚25㎜・開先加工22㎜~75㎜(溶接方法および鋼種による)

Rグレードから建築物の制限があります。
5階以下のビルが基準となります。

Jグレード

・建物の規模・・・3階以下の建築物(延べ床面積500m2以内高さ13m以上軒高10m以下)
・使用鋼材・・・鋼種400N級(ただし通しダイアフラムは490N,400N級)・最大板厚16㎜・開先加工22㎜~75㎜(溶接方法および鋼種による)

3階以下の低層ビルが中心となります。

鉄骨性能評価の流れについて

認定工場となるためには、段階を踏まなければいけません。
審査・評価を行う機関に申請をして、審査・評価が必要となります。ここを通過することができたら国土交通省へ申請をして認定を受けることができます。(認定書が発行されます)

※下記の評価基準等は、株式会社全国鉄骨評価機構(JSAO)を参照しています。

評価基準(審査)の内容

書類審査と工場審査の2つがあります。

書類審査
・品質管理の組織体制
・所定の資格者の有無・配置
・社内規格(工作基準・検査基準・製作要領書作成基準・外注管理基準)の内容
・所定の製造設備・検査設備の有無

工場審査
・主要材料・加工・組立・組立溶接および溶接に関する品質管理状況
・溶接入熱・パス間温度の管理状況
・製品の検査方法
・製造設備・検査設備の点検状況
・社内教育の実施状況

性能評価の審査

工場審査では実態の状況確認として評価員、調査員が審査を行います。

・Mグレード以上の工場審査は評価員2名以上
・J及びRグレードの工場審査は評価員2名以上又は評価員と調査員の2名以上

最終的な審議は各地区の評価員会において行われます。

申請の期間

認定申請は、いつでもできるわけではなく決められた期間に申請を行います。その後、スケジュールに合わせて審査・評価を受けることになります。

申請から認定書が発行されるまでには、約半年ほどかかります。その間に審査が順調に進めば問題はありませんが、改善を求められることがあります。早急な対応と再審査となる場合もあるので油断できません。

まとめ

鉄骨工場の仕事の流れと認定制度についてご紹介しました。
日本の建設技術は、世界的にも非常に高い評価を受けています。実際に東南アジア諸国では日本の建設会社が建設をしながら技術を指導しています。また逆に、溶接など高い技術を学びに制度を利用して来日する若者がいます。

鉄骨工場での技術の高さ、評価を維持していくためにも認定制度は必要であり、信用される証です。

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