鉄骨の建物は丈夫で、大きく間取りを取ることができるのがいいと、工場や倉庫だけでなく自宅も鉄骨で建設される人もいます。
そんな鉄骨が嫌うもの、それが「錆」です。
一度錆びてしまうと、鉄骨の強度は下がってしまい、建物の強度も下がります。もろくなった鉄骨の柱や階段は危険ですから、人が使用することができなくなってしまいます。
では、錆でしまった鉄骨造の建物や外階段はそのまま放置しておくしかないのでしょうか?
錆びないように対策をしたり、補修して再度しようすることはできないのでしょうか?
今回は、鉄骨の錆対策、錆の補修工事についてご紹介します。
なぜ、鉄骨は錆びるの?
鉄骨はご存知の通り、鉄です。鉄は晴天で空気が乾燥している時には、状態が安定しています。しかし、雨が降ったり湿気が高くなると非常に不安定な状態になります。
雨や湿気に含まれる水によって、鉄の表面は溶解します。
理科の時間に習った原子記号を覚えていますか?鉄は「Fe」と表記されます。このFeは電子の数などが安定した状態が表現されていますが、水によって溶解することでバランスを崩してしまい、鉄(Fe)ではなく「酸化鉄」となります。この酸化鉄が「錆」なのです。
科学の話を含みましたが、これが鉄骨に錆が発生する原因です。
錆の種類について
鉄骨が錆びる仕組みがわかりましたが、実は錆にはいろんな種類があります。
私たちが生活の中や、鉄骨に見られる錆は「赤錆と黒錆」と言われるものです。
赤錆は、先ほど錆が発生する原因で話したものになります。水分と空気中の酸素によって発生するものをいいます。
黒錆は、鉄瓶などが熱せられて、こちらも空気中の酸素と付着することで発生する錆です。
よくある鉄骨が錆びる部分
鉄骨造の建物ののどこに錆は発生しやすいのでしょうか?
・非常階段(外階段)
・階段の手すり
・柱とのつなぎ目
・柵
・鉄の扉
主にこうした部分が錆びやすい部分となります。鉄骨が錆びてくると赤錆ですから表面が茶褐色になります。色が変色してきて、少しずつ鉄がもろくなると、今度は鉄骨に穴があきます。
錆び穴と呼ばれる部分は「腐食」です。こうなった鉄骨は、腐っているわけですから、見た目に変化が現れた鉄骨は、強度も下がっているので折れたり、一部が倒れてしまうことがあるので、非常に危険です。
錆を補修するためにできること
鉄骨の錆びている状態で補修工事の内容が異なります。
建物への被害が少ない、少し錆びているという状態であれば、錆びに効果的な塗料を塗装することで補修工事完了となります。
溶接する
茶褐色になり、錆び穴がある状態までになった鉄骨に塗装をしても効果的な補修工事とはいえません。
まずは、錆び穴、腐食した部分を可能な限り取り除きます。ここまでできたら、次は元の状態に戻すための作業に入ります。
鉄骨は、溶接することで別の鉄骨とつなぐことができます。
つまり、腐食を取り除いた元の鉄骨と新しい鉄骨を溶接して、元の形に納めます。
この溶接が補修工事になります。
依頼主の意向に合わせて補修工事をする
鉄骨の補修工事はわかりましたが、実際には錆びた部分を補修するだけでは工事が完了したとはいえません。水に弱くて錆びるのですから、雨漏りの点検や日頃からの対策を考える必要があります。
しかし、ここで一つ考えなくてはいけないことがあります。鉄骨の錆は、雨に濡れたからといって、すぐに錆びるわけではありません。少しずつ長い年月をかけて錆びていきます。つまり、建物も建設されてから長い年月が経過しているのです。錆だけでなく、建物全体の強度にも問題があるでしょう。もしかしたらすでに取り壊しが決まっているケースもあるかもしれません。
鉄骨造の建物は、解体して鉄を処分するのに費用が高いため、取り壊しせずにそのまま放置されていることもあります。地震大国の日本では、古くなって崩れそうな建物や塀を早急に補修するか取り壊すように、行政を通じて持ち主に伝えられます。
こうした様々な背景から、補修工事をする前に必要なことは、依頼主に建物の今後について確認することです。
建物の利用について
工場、倉庫、住宅など鉄骨で建てられた建物をどうするかを、こんな風に依頼主に尋ねます。
・近いうちに取り壊しを予定しているか
・まだ数年(目安は5年)は建物を利用するか
・今後も10年以上は利用を考えているか
錆びた部分や穴を見ていますから、何も考えていないということはありません。決断せずに保留にしていたという依頼主はほとんどです。
この3つの中から思いを聞いた上で、依頼主の意向にあった補修工事を提案していきましょう。
雨漏り対策
建物にとって雨漏りは大敵です。鉄骨は錆となります。木造でも同様に木が腐る原因となり、屋根に穴が空いたり、柱がもろくなる原因となります。
いずれにせよ、建物の寿命を縮める原因になるので、雨漏りをしていたら早急に補修をしてください。
しかし、取り壊しが決まっている建物に雨漏り対策をしても意味はありません。無駄に費用がかかるだけなので、雨漏りの補修工事は「今後も建物を利用する」と解答したケースのみに提案してください。
依頼主の意向に合わせて提案する3つの補修方法
今後も建物を利用すると解答した依頼主に提案する補修工事は3つの方法があります。
鉄骨補修工事
あと数年は建物を利用すると答えた依頼主に提案する補修工事です。
腐食が激しく、早急な対応が必要な部分だけ取り除いて、新しい鉄骨と溶接して補修します。
これだけでも十分な対応として、残りの数年は利用することができます。
費用も抑えることができます。
鉄骨強度と建物の現状復旧工事
利用年数が具体的に決まっていないが、5年以上は建物を利用することを考えている依頼主に提案します。
先ほどとの違いは、腐食している部分の補修工事だけでなく、サビを取り除き再発を防ぐ作業を行います。完全に錆を取り除くことはできなくても、溶接と一緒に行うことで鉄骨の強度が上がります。
鉄骨の補修、錆びの再発防止、雨漏り対策の工事
今後10年以上は建物を利用することを考えている依頼主に提案する補修工事です。
建物を10年以上利用するということは、建物の強度も考えなくてはいけません。利用を続けて自身によって倒壊しては意味がありません。長く安全に建物が利用できるように、雨漏り対策となる工事を追加して提案をします。
もちろん、これら3つの補修方法は、錆や建物の状態を確認した上で、建物がまだ利用できると判断したものに限ります。
ですから、すでに建物の経年劣化が激しく、部分的な補修工事だけでは対応しきれないと判断した場合には、取り壊し、鉄骨設備を取り替える工事となることをお伝えして、判断を仰ぐようにしてください。
事前に錆びない対策をする
建物を大切に、錆を少しでも防ぐことができるように、事前に錆びない対策をすることをオススメします。
ただし、錆はどんなに対策をとっても完璧に発生を防ぐことはできないことだけは、依頼主に伝えてください。これも事前に伝えることでトラブルを回避することができます。
今回は、2つの対策をご紹介します。
酸で錆の発生を防ぐ
リン酸で鉄骨を洗うと、皮膜ができて錆を防ぐことができるといわれています。
錆を防ぐ塗料で塗装する
先ほども伝えたように、錆はどんなに対策してもできます。
ですから、錆が発生しないように防ぐ塗料で塗装をします。こうすることで、雨に濡れても放置している建物より、錆の発生を防ぐことができるようになります。
さらに、酸素と水分を遮断するような塗料もあります。
錆びる前、錆を発見した時、こうした初期段階で塗装することで被害を小さくすることができます。
まとめ
鉄骨にできる錆の補修工事についてご紹介しました。
鉄骨は建物の柱、梁といった骨組みであり非常に大切な部分です。
建物を強度を落とさず長く使うことを考えていらっしゃるなら、日頃から錆対策をしていきましょう。
そして、錆びてしまった建物に対しては、人を巻き込ん多事故とならないように早急に対応してください。