工場を稼働していると、機械の稼働音、作業音など、日常的に発生する音が思わぬ騒音トラブルを引き起こすことがあります。加えて、自治体に持ち込まれる騒音に関する苦情は、年々増え続けている傾向があるそうです。
特に工場が住宅街と隣接している場合は日常的にクレームが寄せられることもあり、事業者として早急な対応を迫られます。クレームを放置して工場や工事の運用を続けていると、周辺住民との関係悪化により損害賠償や立ち退きを求めるトラブルに発展することもあるため、注意が必要です。
また、クレームが寄せられる前に騒音に気づき対策を施すこともとても重要です。そうした観点から今回は、今すぐできる騒音対策について考えていきます。
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騒音には3つの対策があります
工場の騒音対策には、
・音源対策
・工場建屋への対策
・工場建屋周囲対策
の3つがあります。
対策の順番としては音源対策、音源対策で軽減されない場合は工場建屋内対策、工場建屋への対策で軽減されない場合は工場建屋周辺対策と進んでいきます。
それでは、それぞれの対策の内容と具体的な方法についてみていきます。
音源対策
音源対策とは発生音源への防音対策のことです。音源対策は騒音対策の基本になります。騒音の発生源の機械が特定出来た場合、防音パネルなどで音源ひとつひとつの対策をおこないます。これにより、工場から外部へ漏れる騒音レベルの低減及び、工場内の騒音レベルが下がり従業員の作業環境の改善にもなります。
音源対策その1、防音ボックス
騒音源となる機械の特定ができている場合、そこだけを覆う組み立て式防音ボックスの導入がおすすめです。覆うことで、ボックス内から外部へ音を漏らさないようにしゃ音します。ボックス内は吸音処理をすると、より効果があります。
工場の一部分だけに防音ボックスを導入することになるので、短い期間で防音施工を施せます。また現場での工事作業の少ないこの騒音対策は、今現在可動しているラインにも影響が生じにくいメリットもあるようです。
音源対策その2、機械外装版の制振処理
騒音源となる機械の外装板を通して騒音が発生している場合、鉛テープを貼ったり、Lアングルなどを取り付けて重量を大きくし、振動をおさえます。
音源対策その3、防振装置、機械基礎補強による防振対策
機械の振動で工場が揺れている場合、それが騒音を発生させる原因にもなります。振動の程度に応じて、機械を置いている床の基礎部分に防振ゴム、防振バネを用いる工事を行います。
工場建屋への対策
音源対策で騒音が軽減されない場合やそもそも音源対策が難しい場合、工場建屋内での対策を行います。上手に対策を実施すれば、大きな防音効果をあげることができます。
工場建屋への対策その1、天井・外壁・内壁・間仕切り壁などへの対策
工場建屋の対策として考えられるのは、天井、外壁、間仕切壁へのしゃ音対策、室内は吸音処理をすることです。
天井、外壁、間仕切壁へのしゃ音対策としては、それぞれの場所にしゃ音材を貼ったり、防音パネル・屋内防音壁をたてることなどがあげられます。
それによって工場室内の壁・天井の防音性能を高め、外部に出る騒音レベルを低減します。
また、つぎに室内の吸音対策ですが、高音域の吸音にはグラスウールのような材料を壁に貼り付けるなどの施工することで対策ができます。
低音域の場合は、空気層が必要となるため高音域の軽減に比べてスペースが必要となります。また、吸音面積を多く取る事が可能な吊下げるタイプの吸音板などもあります。
工場室内の壁が反射性の材料で出来ていてワンワンと響いている場合などには以上の吸音対策をすることで、かなり改善されます。
工場建屋への対策その2、開口部への対策
壁、天井に十分なしゃ音対策、吸音対策を実施したとしても、開口部がそのままだと効果はありません開口部への対策としては以下のような対策があります。
・搬出入口の防音…搬出入口を二重構造にする。
・人の出入り口の防音…出入り口を二重扉にする。扉の素材を吸音素材のグラスウール、ロックウールにし、戸当たり部をパッキングする。
・窓の防音…窓を二重窓にする。
・換気口、ダクトの防音…吸、排気口の位置や向きにも注意が必要です。合わせて、消音チャンパー(注1)・消音ダクト(注2)をもちい、ダクト内での吸音、ダクト鉄板でのしゃ音化をします。
(注1)消音チャンバーとは
ダクト途中に設ける消音装置の一種で、箱型のチャンバ内側に吸音材を張ったもの。
(注2)消音ダクトとは sound absorbe duct
消音装置の一種で、ダクト内を消音材で内張りしたもの。
工場建屋周囲の対策
工場内部での音源対策、工場建屋の防音などの対策が十分にできなかった場合や、外部に騒音源がある場合は、いよいよ工場建屋周囲の対策を実施します。
工場建屋周囲の対策として一番多く用いられているのが、防音壁と呼ばれる「壁」を建てることです。「壁」を建てることによって周囲に直接音が届かないようにしゃ音をはかります。例えば、近隣の建物との間に防音壁を立てると、最大で25dbもの騒音が減衰するとも言われています。また工場と近隣の建物の距離が非常に狭く、屋外に防音壁を設置できない場合は、工場の中に壁を立ててしゃ音するという方法もあるようです。防音壁の材料としては、鋼製、セメント板、アルミ製など現場の条件に最適な素材を選びます。
まとめ
ここまで、工場建屋の騒音対策についてみてきました。すぐに取り組めそうなことから、大掛かりな工事が必要なものまでありました。騒音対策は周囲へのクレーム対策というだけでなく、騒音が軽減されることで作業員の耳にとって不快な音を減らせるメリットが得られ、作業環境の改善につながるともいわれています。よって、クレームが来ていなくても工場内で騒音チェックをして、できることから取り組んでみてもいいかもしれません。
また、騒音問題と直接的にはつながりませんが、工場の周囲に樹木や草花を植えて、環境の美化を図ったりすることも、周辺地域や住民へ心理的な効果が期待されクレームを減らすことへつながるとも言われていますので、その点も合わせて考えてみるといいかもしれません。
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