工場や倉庫は建物が大きくて、空間を広く作れることが特徴です。
その特徴を活かして、一度に多くの製造を可能に開いたり、多くの商品を保管することができます。
しかし、大きくて広いことが欠点となる部分もあります。
それは、湿度や温度の管理です。一定の温度を保つことを求められたり、カビの発生を防いだりと、用途によって空調の管理を求められるのに、それを保つことが難しいというのは、大きな問題です。
そこで今回は、工場や倉庫における湿度管理と温度管理の重要性と製造別に違う管理方法についてご紹介します。
工場や倉庫で湿度管理と温度管理が難しい理由
製品の製造、商品を保管する目的で建設される工場と倉庫において、なぜ湿度管理と温度管理が難しいといわれるのでしょうか?
まずは、難しい理由について考えてみましょう。
空調が効かない
工場や倉庫の空調が壊れているわけではありませんが空調が効かない、効きづらい状況になっているのは本当です。
では、なぜ空調が効かないのか?
それは、本来の目的のために広い空間になっているからです。
工場においては生産ラインの動線を作るために、倉庫では多くの商品を保管するために、それぞれ広い空間になっています。
広い空間を実現させているのは、建物が鉄骨造であることです。
鉄骨造の建物は、仕切りとなる柱の間隔が広くても耐性に問題はありません。だからこそ、仕切りなしの空間を実現させることができます。
空調を効かせるためには、ある程度の広さで仕切りを作ることが必要です。そうすることで適切な温度を保つことができますが、仕切りのない工場や倉庫では、どうしても空調が効かない場所ができてしまうのです。
風通しが悪い
仕切りがないことだけが空調の危機を悪くしているわけではありません。空調の風の通りを悪くしているものがあります。
・高く積まれた商品
・製造の機械
奇しくも本来の目的であったり、必要なものが風通しを悪くしているのです。
空調が効かない→トラブル
風通しが悪くなると、空気が流れず漂ってしまいます。そうした場所ができると、今度は湿気が溜まる場所となってしまいます。
カビは、商品の品質に影響が出たり、機械の故障の原因になる場合もあります。
品質の問題、機械の故障は、企業の信用問題に発展してしまうので絶対に避けたいことです。
商品や機械だけじゃない人命の危機
そして、商品や機械のトラブルだけではありません。
今、最も怖いのが人命にかかることです。
夏の暑さが尋常ではないことから、空調が効かない環境での仕事は過酷さを極めています。人が働くのに適した温度を超えているのです。そうなると怖いのが脱水症状です。部屋の中でも脱水になる可能性は十分にあります。
働く従業員にとっても湿度管理と温度管理は難しいで終わらせるのではなく、対策を考えてほしいのです。
工場と倉庫でできる湿度管理と温度管理の方法
少しでも室内の環境を良くするために、4つの方法が実施されています。
・除湿器、加湿器を設置する
・シーリングファンを設置する
・窓を開けて換気する(可能な場合)
・温湿度計を設置して記録する
対策として行われるのは、住宅とほとんど変わりません。しかし、規模が違うのでサイズや台数は大きく違ってきます。
また、温湿度計は場所によっても異なるのでご注意ください。
設置することでどれぐらいの違いが出るのかは、体感しかありませんので従業員に確認をしてください。
また、一つ問題点としては、これらを人の手によって行うのか?です。設備として最初から導入がされていれば、そのあたりも考慮されていますが、後付けの場合には、どうしても人の手を借りなくてはいけません。
最近では、スマート家電と言われるように、スマホやタブレットにて簡単に操作ができます。こうした設備を導入してみるのも対策として考えてみるのもアリです。
従業員の作業効率を考えると、別の作業で手を取られるのは地味にストレスとなる可能性があります。
記録を建物に活かす
湿温度計で湿度と温度を記録することを管理方法として加えたことには理由があります。
建物内が暑くなるのは、屋根や壁から熱が伝わっているからです。断熱や換気などを考えた素材を使用して効果があるのかを確認することができるのと、今後のメンテナンスの際に記録を参考にして対策を立てることができます。
これを従業員にお願いするとなると、やはり理由がわからなくて続かない可能性があります。
こうした記録を含めて自動で管理することは検討する価値があると思います。
製品・製造別の湿度と温度管理の目安
管理方法や対策に違いはありませんが、工場や倉庫で扱う製品の違いや製造環境が違うことで適切な湿度と温度は異なります。
そこで、ここでは主なジャンルのそれぞれの湿度と温度の目安をご紹介します。
食品関連
食品で最も怖いのは、腐敗と食中毒です。製造や保管している段階でこのようなことが内容に徹底した温度管理を行っています。
・生鮮食品・・・15度以下
・食肉製品・・・10度以下
・生鮮魚介類・・・5度以下
・冷凍食肉製品・・・マイナス15度以下
このように取り扱う食品によって適温が異なります。
食品工場となれば、加工、調理場があります。こちらの作業場については「温度25度以下、湿度80%以下」を目安として、それぞれに合わせて設定されています。
この中で働く従業員は暑さではなく、防寒対策が必要となります。
製造業(精密機器)
あまり知られていませんが、精密機器は湿度が低すぎると静電気が発生します。静電気によって回路に故障が起こる可能性があります。細かい部品を組み合わせて作られるものだけに、一度故障をすると修復に時間を取られてしまいます。
また、湿度が高いと水滴が発生するため、結露とザビの原因にもなります。
適した湿度は40~50度です。加湿器などを使い湿度を調整してください。
印刷関連
紙は湿度を嫌います。ご存知の通り、紙や本などは時間が経つと端からカールしたり波を打ち凸凹になります。さらに時間が経つと紙の色自体が変色を始めます。
実は、これは湿気を吸収しているから起こることなのです。工場や倉庫の中で湿度が一定上になると、時間の経過に関わらず同様のことが起こり始めます。
工場であれば、紙の状態が違うことでインクののり方や乾燥する速度にも影響が出てきます。
こちらの適した湿度は55〜65%です。
繊維業(衣類)
繊維にとって一番厄介なのが乾燥です。乾燥がひどい時に作業をすると途中で糸が切れてしまい、布など品質を下げてしまう原因になります。
しかし、乾燥を嫌って湿度を高くすると、今度はカビが生える原因となってしまうのです。
どちらも考えて中間を取りたいので、こまめに湿度を管理する必要があります。
カビの発生防止としては、湿度を60%以下に抑えることを目安としています。
従業員の作業環境を考えて作業効率を上げる
工場や倉庫において湿度管理の必要性がよく分かりました。
適切な湿度に保つように環境を整えることが必要ですが、もう一つ考えてほしいのは「その環境で従業員が働けるか?」です。
良いものを作りたい、トラブルは起こしたくない。理想や問題点を考えると、従業員に無理をさせてしまうケースもあります。過酷な労働環境においては作業効率が落ちてしまうため、良い製品が作れたとしても量産したり、管理することは難しくなります。
両立させることは非常に難しいですが、働き手がいなければ工場も倉庫も稼働させることはできません。
十分に相手のことを考えて、作業効率を上げていく対策も考えてみてください。