この記事では次の内容をまとめています。
・鉄筋コンクリート造の特徴
・鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴
工場・倉庫建設を考えているけれど、どんな構造にしたらいいか分からないという方が知っておくべきことをまとめました。
鉄骨造とは
柱や梁といった構造部分に鉄骨を使用している建物のことです。
”steel” からとって「S造」と呼ばれることもあります。
鉄骨造はさらに重量鉄骨造と軽量鉄骨造に分けられます。
鋼材の厚みが6mm以上のものを重量鉄骨造、6mmよりも小さいものを軽量鉄骨造と呼びます。
同じ鉄骨造ですが、この2つの間にはいくつか異なる特徴があります。
鉄筋コンクリート造とは
構造部分に鉄筋とコンクリートを用いた建物です。
” Reinforced Concrete” からとって「RC造」と呼ばれることもあります。
鉄筋を組み、その周りを型枠を用いてコンクリートで固める構造になっています。
鉄筋とコンクリートはお互いのデメリットを補い合っており、木造や鉄骨造に比べて優れている点が多くあります。
例えば、コンクリートは引っ張る力に弱いですが、鉄筋は強いです。
ただし、鉄筋コンクリート造には建設コストが高いなど、デメリットもあります。
鉄骨造と鉄筋コンクリート造の違い5つ
この記事では鉄骨造と鉄筋コンクリート造の違いを項目別にご紹介します。
1 | 耐久性・耐震性 |
2 | 耐火性 |
3 | 工期 |
4 | 建築費 |
5 | 用途 |
耐久性・耐震性
鉄骨造は耐久性や耐震性が高いです。
例えば、地震が発生すると鉄骨はしなるため、倒壊の危険性は低いです。
また、鉄骨自体が丈夫な部材なのも耐久性が高い理由の1つです。
鉄筋コンクリート造はさらに耐久性や耐震性に優れています。
鉄筋は引っ張る力に強く、コンクリートは圧縮力に強いという特徴があり、それぞれの力が建物を守ります。
耐火性
耐火性は鉄筋コンクリート造の方が優れています。
なぜなら、コンクリートは熱に強いからです。
一方で、鉄骨は耐火性においては不安が残ります。
鉄骨は温度が高くなると、溶けて耐久性に影響を与えるからです。
ただし、耐火被覆の処置を施せば耐久性を上げることができます。
工期
鉄骨造の方が工期は短いです。
鉄筋コンクリート造の工期が長い理由は次のようなものがあります。
- 全体の重量が重く、基礎工事や地盤改良工事に時間がかかる
- 鉄筋を組んだり、コンクリートを流して固めたりと工程が多い
建築費
建築費は鉄筋コンクリート造の方が高いです。
理由は次のようなものがあります。
- 工期が長い分、稼働する人数が増え、人件費がかかる
- 鉄筋もコンクリートも使用するので材料費がかかる
- 建物の重量があるので地盤改良工事や基礎工事に費用がかかる
鉄骨造の建設コストは鉄筋コンクリート造より安いですが、木造よりは高いです。
用途
鉄骨造は工場、倉庫、事務所などに使われることが多いです。
重量鉄骨造は部材が丈夫で、使用する部材の数を減らすことができるため、室内に大きな空間が必要なスポーツ施設やホームセンターなどに使われることもあります。
鉄筋コンクリート造は遮音性に優れているため高層マンション、中低層マンションによく使われています。
気密性が高いので、気温管理を徹底する必要がある製品を扱っている工場や倉庫にも向いています。
鉄筋コンクリート造の特徴5つ
この記事では鉄筋コンクリート造の特徴を補足としてご紹介します。
1 | 遮音性が高い |
2 | 気密性が高い |
3 | 冷暖房を効率的に使える |
4 | 建物全体が重い |
5 | 解体費用が高い |
遮音性が高い
鉄筋コンクリート造は遮音性が高いのが強みです。
住宅用の建物によく使われる理由の1つです。
工場にとっては製造の際に発生する音が外部に漏れないというメリットがあり、近隣住民とのトラブルを防いでくれます。
また、従業員にとっても、休憩室で現場の音が聞こえずに静かに休むことができるのは嬉しいはずです。
気密性が高い
鉄筋コンクリート造には気密性が高いという特徴があります。
これによりカビや結露が発生しやすくなるのはデメリットです。
製品にカビが発生したり、結露により水分が付着したりすれば、最悪の場合、出荷することができず、ロスとなります。
また、食品工場では消費者が直接口に入れるものを製造しているため、健康被害の原因となります。
鉄筋コンクリート造で工場や倉庫を建てるなら、カビや結露対策を行いましょう。
冷暖房を効率的に使える
鉄筋コンクリート造は断熱性と気密性が高いので、冷暖房の効きがいいです。
夏は冷気を、冬は暖かい空気を外に逃しません。
そのため、光熱費を抑えることができます。
工場や倉庫は電気代が高くなりやすいので、これは大きなメリットです。
鉄筋コンクリート造は建設コストが高くなりやすいですが、このように稼働後に節約できる費用もあります。
建物全体が重い
鉄筋とコンクリートを使用しているため、建物全体の重量が重いです。
つまり、地盤や建物の下部にかかる負担が大きく、地盤改良工事や建物の基礎工事を他の構造に比べて本格的に行う必要があります。
その分、建設コストは大きくなり、工期も長くなります。
また、地盤によっては鉄筋コンクリート造では建てられないというケースもあるかもしれません。
建設コストを抑えたい、できるだけ早く工場・倉庫を稼働させたいという方は鉄骨造の方が向いています。
解体費用が高い
鉄筋コンクリート造は建設コストだけでなく、解体費用も高いです。
これは鉄筋の周りをコンクリートで固めていて頑丈な造りなっており、解体には重機がたくさん必要で、時間もかかるためです。
鉄骨造か鉄筋コンクリート造かどちらにするか考える際には、解体するときのことも考慮しましょう。
鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴5つ
この章では鉄筋コンクリート造と名前が似ている鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴をご紹介します。
1 | 性能が高い |
2 | 寿命が長い |
3 | 耐震性が高い |
4 | 建築コストが高い |
5 | デザイン性が低い |
性能が高い
鉄骨鉄筋コンクリート造とは鉄骨の周りに鉄筋を組み、コンクリートで固めたものです。
鉄筋コンクリート造との大きな違いは構造部分の中心に鉄骨が通っていることです。
耐久性、耐火性、防音性など、あらゆる面で優れているのが特徴です。
高層ビルや超高層マンションなどで使われることが多いです。
寿命が長い
鉄骨鉄筋コンクリート造には寿命が長いという特徴があります。
鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造の工場用・倉庫用の建物の法定耐用年数は38年です。
ちなみに木造は15年、鉄骨造は一番長いもので31年です。
ただし、法定耐用年数はあくまで減価償却できる期間を示したもので、実際はメンテナンスをこまめに行うことでもっと長く使用できることもあります。
耐震性が高い
鉄骨鉄筋コンクリート造は木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造とあらゆる工法の中でも特に耐震性が高いです。
鉄筋コンクリート造も耐震性は高いですが、鉄骨鉄筋コンクリート造は鉄骨が構造の中に入っていることで地震による変形への耐性がより強くなっています。
大きな地震が発生する日本において安心して利用できるという大きなメリットがあります。
建築コストが高い
鉄骨鉄筋コンクリート造は建築コストが高いのがデメリットです。
次のような理由で建築費が高くなります。
- 鉄骨、鉄筋、コンクリートとあらゆる部材を使っている
- 工程が多いので完成までに時間がかかる
- 多くの人件費がかかる
建設コストを抑えたい方には他の工法が向いているでしょう。
ただし、鉄骨鉄筋コンクリート造は先ほどから触れているように耐久性、耐震性、耐火性などに優れていて、性能はとても高く、得られるメリットも大きいです。
デザイン性が低い
デザイン性が低いというデメリットもあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造では構造や間取りに制限が出るので、希望する構造やレイアウトが実現しない可能性があります。
まとめ
鉄骨造と鉄筋コンクリート造は構造が異なるため、用途、建築コスト、耐震性とあらゆる面で違いがあります。
工場や倉庫を建設するのにどちらがいいかは求める性能や予算など、条件によって異なります。
最後にどのような人にそれぞれの構造が合っているかをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
鉄骨造がおすすめのケース
- 建築コストを抑えたい
- 出来るだけ早く建物を稼働させたい
- カビや結露が発生しにくい構造を選びたい
鉄筋コンクリート造がおすすめのケース
- 耐久性、耐震性、耐火性、防音性を重視している
- 冷暖房にかかる費用を抑えたい