どんな建物でも骨組みが必要です。枠がしっかりしてこそ、強度や耐震などに優れた建物を建設することができます。
一般的には建設中の建物を間近で見ることはありませんので、骨組みがどうなっているのかわかりづらいところです。
建築物ができるまで
鉄骨による建築物ができるまでには、さまざまな業種の職人が関わり、それを現場でまとめるのが建設会社です。外の仕事で体力勝負のように思いますが、実際には現場監督が緻密な施工図から工程に至るまでを行い、作業に無駄や間違いがないように進められます。
建築物ができるまでの流れです。
基礎・骨組みを組み立てる
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柱・壁・床を作る
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建物を仕上げる
これは、着工してからの流れですが、それまでにも、地質調査や設計などの作業があります。
今回は、この流れにある骨組み構造を取り上げます。
骨組み構造の違いについて
どんな建物にも骨組みはありますが、その構造には種類があり違いもあります。
- 木造
- 鉄骨造
- RC造
- SRC造
ビルや工場の建設となれば、RC造・SRC造を骨組みとして建設されます。
それぞれの特徴と違いをご紹介します。
木造
古くから日本で用いられてきた材料であり、日本の風土にも合っています。
耐震や強度の問題から、大規模な建物には適していませんが住宅には今も使用されています。
鉄骨造
S造とも言われますが、「Steel(スチール)=鋼」を表しています。
骨組みに使用される鋼材は、別の場所で形が作られ現場でボルトや溶接にて組み上げられます。
さらに鋼材の厚みによって、「重量鉄骨造・軽量鉄骨造」と分けられます。
重量鉄骨造・・・鋼材の厚みが6mm以上、高層ビルなどの建設に適している
軽量鉄骨造・・・鋼材の厚みが6mm未満、工期が短く住宅でも用いられる
RC造
RC造は「Reinforced Concrete」の略で、鉄筋コンクリート造のことをいいます。
鉄筋で型枠組み、コンクリートを流し込み固まったものを柱や梁とします。耐震性や耐久性に優れています。
SRC造について
SRC造は、「Steel Reinforced Concrete Construction」の略で、「鉄骨鉄筋コンクリート造」のことをいいます。RC造との違いは、鉄筋の型枠の中に鉄骨が入っているところです。
鉄骨が入っている分、柱や梁が重くなるイメージですが、全体の重量は抑えることができるので7階以上のビルの建設に用いられています。
鉄骨の骨組み手順(地下での作業)
鉄骨は、先述したように高層や大規模な建築物に用いられる鋼材です。
どのような手順で骨組みができるのか、確認してみましょう!
地下を掘り杭を打ち込む
骨組みとなる鉄骨を建てるために、地下を掘り土台作りから始めます。
地下に打ち込むのは杭です。
杭の役割は、
- 建物のを支える
- 地盤が弱い場合、支持層と呼ばれる深層部まで掘り打ち込む
杭には、様々な種類や作業方法がありますが、荷重(かじゅう)と呼ばれる建物の骨組みなどに加わる力を支える役目を担っています。
建物のみの重さだけでなく、完成後に入る家具や人の重さまで考えられているので、杭基礎と呼ばれています。
地下作業に欠かせない山留め
地下での作業は、予測がつかないことが起こることも・・・。
- 地盤が崩れる
- 水が流れ込む
- 近隣の地盤への影響
地下の作業で注意するべきことは、こうした地盤を壊さないようにすることです。
そのために行われるのが、「山留め」です。
山留めに用いる材料や方法もいろいろありますが、地盤の状態に合うものを選んで作業されます。
鉄骨の骨組み手順(地上での作業)
地下での作業で土台ができたら、いよいよ鉄骨で骨組みを組み上げます。
ここからは、構造により作業工程に違いがありますが、今回は鉄骨の組み方とコンクリート柱についてご紹介します。
数ミリも間違えられない作業
鉄骨を骨組みとする高層ビルや大規模建築物では、少しの誤差もズレも許されません。
あらかじめ工場で加工、検査を済ませた鉄骨を現場まで運び入れます。
鉄骨は、柱と梁のどちらも人の手によって組み立てられます。これは低層階でも高層階でも同じです。
高所での作業では、「現場の華」と言われる鉄骨鳶が活躍しています。鉄骨鳶の作業は、鉄骨を建てボルトでの固定です。
鉄骨鳶によって建てられた骨組みにズレがないかを測量士によって確認がされます。
測量士の確認が終わって鉄骨は溶接され固定されます。ボルトだけでなく溶接されるのは、鉄骨同士が接着することで建物の強度が高くなるからです。
時間との勝負!コンクリート柱を作る
鉄骨が組み終えたら、コンクリートを流し込む作業へと移ります。
鉄骨の周りを鉄筋で囲みます
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コンクリートを流し込む型枠を作る
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コンクリートを流し込む
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コンクリートが固まったら型枠を外す
鉄骨・鉄筋・コンクリートが一体となって建物の柱となります。コンクリートが完全に固まるまでには、約1ヶ月かかります。
ここで、重要なのは「コンクリート」です。コンクリートは、一度水に溶かして「生コン」という状態にすると、数時間後には固まり始めるのです。さらには、余ったコンクリートを再利用することもできません。
そのため、短時間で作業を終えられるようにコンクリートには、より慎重になるのです。
どんなときも安全第一で作業する
現場での作業は、常に危険と隣り合わせです。
骨組みの作業でも鉄骨を安全に高所まで運ぶなければなりません。
建設会社スタッフや職人だからと、なれた作業であっても油断は禁物です。どんなところを意識して安全な現場としているのでしょうか?
視覚で認識する
まずは、視覚で確認することで一人ひとりの安全への意識を高める工夫がされています。
目標や標語を掲げる
広い現場でもわかるように目標または標語を掲げます。
朝礼などで声に出して読んでみたり、作業中でも眼に止まることで、不思議と覚えて安全な作業を心がけるようになります。
警告色を使う
現場への立ち入りを禁止したい時、柱や段差がわかりにくい場所が現場には多く存在します。
そうした時に警告色を使い、危険が潜んでいることを伝えることができます。
- コーンやバリケードに赤色を使用する
- 柱や段差部分に黄色と黒のテープを縞模様で巻く
当たり前のように思えますが、逆に言えば「当たり前のように危険な場所」ということがわかりやすくなります。
ネットやフェンスを活用する
建築現場では、安全に作業するために足場が必ず組まれます。その後、ネットで覆われます。
そして、建設中の建物には作業効率や構造のために開口部があります。これらにはフェンスが必ずされています。
どちらも目的は同じです。
人や物が落下しないように防ぐためです。
高層の建物を建設する際に、もっとも怖いのは落下です。地上で作業している人も頭上から何かが落下してくるとは思いもしません。
こうした危険を防ぐために、ネットやフェンスが活用されます。
現場の基本であるヘルメット着用
これが一番の基本です。
建設現場に入るすべての人に義務付けられています。
危険な場所であることは、誰もが理解しています。そんな場所で、気取ってもなんの得にもなりません。
現場へは、作業とは別に見学に訪れる人もいます。
そんな時は、安全に対する声掛けを行い、事前に注意点を伝えることで危険を回避できます。
まとめ
建物の骨組みができるまでをご紹介しました。
この他にも、骨組み作業の効率をあげるために、鋼材は別の場所で加工され、現場でもルールがあります。例えば、現場(敷地)が狭い場所であれば組み立てるのも建物の奥から手前とします。使用する鋼材も組み立てる順番に積まれています。
骨組みができると、壁・床・内装へと作業が進むので骨組みは見えなくなります。
見えなくなったあとも、骨組みに加わる荷重を支えることで、私たちは安全に使用ことができるのです。