オリンピックバブル、新型コロナなど建設業界には、良くも悪くも大きく影響されています。
特に2020年は、建設業界のどの業種にとっても事業自体が存続できるか?という状況になっています。先の見通しが立たない中で、不安ばかりが募るような一年になりそうです。
しかし、いつまでも下を向いているわけにはいきません。会社を存続させ、従業員の生活を確保していくためには、苦しい中でも新たな一歩を進めて行かなくてはいけません。
では、何をしたらよいのでしょうか?ここが明確にならないと、行動に移せませんよね。やはり、優秀な人材の確保と育成ではないでしょうか?
2024年4月より、これまで猶予が認められてきた「時間外労働の上限規制」が適用されます。いわゆる「働き方改革」です。人手不足の問題が深刻化する中で、人材育成をどのように進めていくのか?これに対して一つ解決策があります。それが、今回ご紹介する「建設ディレクター」という働き方です。
新たに新設された資格として、まだ建設業界でも馴染みが薄いかもしれませんが、この有資格者と仕事をすることで業務改善をするヒントはいろいろあります。まずは、どんな仕事をするのか?そして採用するメリットなどをご紹介していきます。
建設ディレクターとは
建設ディレクターとは、一般社団法人建設ディレクター協会が主催する育成コースを受講した人が有する資格です。
ITスキル、コミュニケーションスキルなどを学び、建設現場での業務がサポートできる、工事書類の作成などができるようになります。
現在、初級の第21期、中級の第2期が募集されています。
ITが解説する建設業界の問題
建設業界の人手不足は深刻化で、国からも様々な解決策を考えています。
人手不足となる原因はいくつか挙げられますが、ITの活用が遅れいることが問題視されています。
CADやドローンなど、一部の業務では積極的に活用されていても裾野を見ると、他業種では当たり前のようにITが導入されていることでも、建設業界では活用されていない場面があります。
・事務処理
・自社のホームページがない
・SNSやツールが活用されていない
こうしたITスキルの遅れから、正しく導入して活用することができるのが「建設ディレクター」です。のちほど、詳しくご紹介します。
女性活躍の支援になる
建設業界の人手不足も深刻ですが、そもそも業界に興味を持つ女性が少ないことも問題です。
最近では「建設女子」と呼ばれる、建設現場で働く女性が注目されていますが、やはり長期的に働きやすいかといえば、必ずしもそうではありません。
建設ディレクターは女性限定の資格ではありませんが、協会のHPには、受講する男女比は4:6だとあります。
事務的なサポートであり、事務所での仕事がメインとなるので、新卒者だけでなく産休や育休明けの女性が働きやすくて生きがいのある仕事ができます。
そんな社会で活躍できる女性を支援する資格です。
現場と事務のつながりになる
建設ディレクターに求められる役割がもう一つあります。
それがコミュニケーション能力です。
これまで、現場や工事に関する書類は現場監督が作成をしていました。ほとんどの場合、現場から戻っての作業になるため残業となっていました。
事務所のスタッフも基本知識がなく変わって作業を補助したくても、その業務に携わることができません。また、現場監督も専門性の高い書類作成なのは重々承知しているので、誰かにお願いすることをためらっていました。
仕事はもちろん、お互いの思いを知ることもないまま今日まできています。
こうした歯がゆい思いも、建設ディレクターの講座を受講したスタッフがいることで、書類作成をお願いすることはもちろんできますし、現場の状況など情報を共有することができます。
仕事が一緒にできることで、人間関係にとっても良い潤滑油になります。
建設ディレクター制度の3つのメリット
建設ディレクター制度を利用するメリットをご紹介します。
働き方改革
いよいよ 2024年4月より建設業界でも「働き方改革」が実施されます。
業務改善・人材育成・新規雇用を目的とする働き方改革は、すでに他業界では実施されています。建設業界は、少子高齢化による深刻な人手不足が解消できない状況で実施すると、工期が延長などが懸念され実施までの猶予がありました。
これまでにも国土交通省が、i-Construction(アイ・コンストラクション)を取り入れたり、建設現場の週休二日制度を試験的に行うなど、改善に向けて取り組んでいます。
建設ディレクター制度も、建設業界の労働に関する問題を解決するべく新設されたました。
・労働環境
・生産性や品質の低下をなくす
・従業員の賃金
建設ディレクターは、現状抱える問題への解決だけでなく、人材の確保と育成にも繋がることが期待されています。
生産性の向上
人手不足による問題によって、建設される建物の品質や生産性に問題がでることが心配されています。
今後建設業界では、建設される建物ばかりでなく、バブル期に建設された建物の修繕などが予定されています。
そのためには、人材の確保はもちろんですが、技術の継承をしていかなければ品質の低下が心配されます。
建設ディレクターは、ITのプロですから現場で働く人の事務処理の負担を軽減し、コミュニケーション能力にも長けているので、現場での問題や不安にも力になることができます。
女性活躍支援
女性が職探しをする中で、建設業界を避ける人も少なくはありません。「きつい・汚い・危険」というイメージが強くあります。
建設ディレクターは、現場に行くことなく社内での仕事になります。昼間は一人での作業になることもあるので、人間関係に悩まされることなく働くことができます。
資格も初級・中級とあるので経験を積むことで、会社からも信頼度が上がるのでやりがいにもなります。
問題解決Q&A
建設ディレクターの育成、雇用を考える方へ、問題を質問形式に解決していきます。
受講対象者は誰ですか?
協会HPには受講対象者が明記されていません。
ただし、効果的な対象者としては、自社の労働環境の改善を前向きに考える会社の方が期待ができるとされています。
講習について簡単に教えてください
初級コースは8回の講習になります。現在は、オンラインでの受講が可能です。
講習内容は、こちらです。
初級編では建設業界の動向や社会情勢をベースに建設業の基礎知識、建設ディレクターが関われる施工管理の考え方を学びます。また、設計図書の見方や積算の構成、工事書類のポイント、電子納品を理解し、現場担当者とのコミュニケーションをスムーズにとることを目標に工事全体の流れや専門用語を学びます。
中級編ではITをベースに、より実践的な内容を学びます。
引用元:一般社団法人建設ディレクター協会
費用について教えてください
初級編・中編で受講料金が違います。助成金の対象となるため金額が異なります。条件に該当すれば、無料となる「厚生労働省 就職氷河期世代の方向けの短期資格等習得コース事業」の対象でもあるので、詳しくはHPをご覧ください。
取得できる資格を他にもありますか?
建設ディレクターの講習では「建設ディレクター」、「建設業経理事務士4級」が取得できます。3級取得へのステップアップもできます。
まとめ
今回は、今後の活躍が期待される建設ディレクターをご紹介しました。
女性が避ける傾向にある建設業界ですが、実際に事務職員として働く女性は、結婚・出産後にも働き続ける人が多いという報告もあります。
こうした環境や人間関係が整っている会社で、長く働けることは求人にも良い影響を与えます。新卒で入社してくる時期にもなりますが、コミュニケーションのプロでもある建設ディレクターがいれば、今後の人材育成にも弾みがつきますね。
※資格内容や受講についての情報は、一般社団法人建設ディレクター協会のHPを参照しています。