建設する建物の規模が大きくなるほどに、建設基準は厳しくなっていきます。
特に日本においては、地震大国であるので耐震、免震の基準はもちろんですが、建設する場所にも規定が設けられるケースもあります。
さらに、建物の用途によって建物の分類や建設条件が異なることはご存知でしょうか?
実は意外と知られていないというか、認識の違いから驚かれるケースもあります。その一つが「特殊建造物」です。
大きな建物が全て特殊建造物かといえば、決してそうではありません。
今回は、特殊建築物である倉庫を例題として特殊建造物の建設注意ポイントをご紹介していきます。
特殊建造物とは?
特殊建造物は、建築基準法の第2条項二号の定義において記載されているものをいいます。
そこに定義されているものを簡単にまとめてみました。
・多数または様々な人たちが建物を利用する
・利用者の安全を担保する
この二つの項目から、様々な建物が思い浮かびます。例えば、ホテルやデパートには、様々な用途で多くの人たちが利用をします。その全ての利用者たちが安全に利用できるように、防火や避難に関するルールが建築基準法に規定されています。
建築基準法の第2条項二号に記載されている建物はこちらです(一部抜粋)。
学校・体育館・病院・劇場・観劇場・集会場・展示場・百貨店・市場・ダンスホール・遊技場・公衆浴場・旅館・共同住宅・寄宿舎・倉庫・自動車修理工場・映画スタジオ
ただし、ここに記載されている建物が全て特殊建造物かといえばそうではなく、また逆に記載のない建物が特殊建造物に該当することもあります。
特殊建造物は建物で決まるというより、建設する建物の条件によって該当すると缶ゲル方が妥当です。つまり、危険物の貯蔵、福祉系の施設など、全く関係ないと思っていたら特殊建造物に該当するということが分かると、建設自体を取りやめる、一旦中止となることがあるので、ご注意ください。
特殊建造物となる基準を知る
多数の人が利用することが考えられる建物を建設する場合、一度は確認するということを考えた方がいいのですが、特殊建造物の基準としてはこのように考えると分かりやすいです。
・建設する建物の「特殊建造物の用途となる床面積の合計が200㎡を超える場合
これを基準とする理由は、建築基準法の第6条第1項第一号の建築物になるからです。特殊建造物を建設するうえで、外せない法令になるのでこれを基準として必ず確認するようになると、特殊建造物の建設について理解が深まります。
特殊建造物に該当しない建物
多数の人が利用する建物、施設であれば特殊建造物ではないということはわかりました。
ここでは意外にも特殊建造物ではない建物、特殊建造物に間違われやすい建物をご紹介します。
基準はあるものの、全てのきちんと把握することが難しいため、判断に悩む建物があります。判断を迷わせるのは、特殊建造物の規定の一つでもある「多数の人が利用する」というところ。この解釈の違いに注意してください。
工場
実は、工場は特殊建造物には該当しません。毎日、多くの人が作業をしていますが、決まった人しか出入りをしていないため特殊建造物の条件には該当しません。
ただし、工場であっても、下記に当てはまる場合には、特殊建造物として申請をする必要があります。
・自動車の修理工場
自動車工場に関しては、二つのことから特殊建造物として申請が必要となります。
一つは、ガソリンを扱うこと。もう一つは、危険物の取り扱い、保管するため。
製造系の工場では、こうした危険物を取り扱うことが圧倒できに多いです。自動車工場だけでなく、類似していると思う工場の場合には、一度確認をしてください。
事務所
様々な事務所がありますが、どんな事務所であろうと特殊建造物には該当しません。建設事務所など業者の出入りが多いことがイメージできる事務所であっても、床面積が1万㎡以上ある事務所であっても、特殊建造物ではありません。
長屋
長屋は、1つの建物に複数の住戸が存在します。古くからは平屋の長屋が多くありましたが、最近では2階建て長屋も増えています。つまり、1つの建物を多くの人たちで共有していることが分かります。
しかし、長屋も特殊建造物には該当しません。該当しない理由としては、緊急時に避難経路にあると考えられます。アパートやマンションの場合には明確な避難経路がありますが、一点に集中するため人が集まりパニックになります。長屋の場合には、個々に避難経路があるため人が集中することなく安全に避難できるので、特殊建造物には該当しないと考えられます。
倉庫は特殊建造物に該当する
倉庫は、特殊建造物になります。保管するものや取り扱うものに関係なく、倉庫であれば全て特殊建造物になります。
ですから、倉庫の建設が決まったら必ず建設条件や注意点などを考えてみてください。
一般的な住宅の違いを把握しておく
基本的な違いとしては、一般的な住宅を新設するのとは違うということです。戸建てとは規模が違うこと、そして用途も全く違うので、初めて倉庫を建設する時には十分に注意してください。
進め方がわからない時は専門家に相談する
倉庫を初めて建設する、倉庫建設に不慣れな部分があると感じている時は、迷わずに専門家に相談をしてください。
費用や施工に時間がかかる中で、書類の不備や条件に合わないことが途中で分かると、建設を中断することになります。これは、大きなダメージになるので、こうしたことが避けられるように相談をしてください。
特殊建造物(倉庫)の建設時の注意点
では、実際に倉庫を建設するための注意点についてご紹介します。
こちらでは、全体的な注意点をご紹介していきます。細かな条件などは、建設する倉庫によって異なる場合があるので、きちんと確認をしてください。
確認申請が必要となる
建物を建設する際には、事前に建設を予定している都道府県や市町村に建設の申請をする必要があります。
これは「建築確認」とも呼ばれ、建物の設計・敷地配置などが建築基準法に定められる規定に反していないかを確認するためです。
法律に反するような建物を建設する業者は、ほとんどの場合でいませんが、行政や審査機関など第三者からの確認が求められます。
この申請については全ての建物が対象ですが、倉庫は特殊建造物であるため決められた書類を用意しなくてはいけません。
申請から確認が終わるまでには一週間以上かかるので、倉庫建設の着工までに終われるように書類の準備から提出、確認終了のスケジュールを立てておきましょう。
定期的な報告義務がある
特殊建造物の建設後には、建物を状態を定期的に報告する義務があります。
なぜ、報告の義務があるのか?
ここまでの流れでも分かるように、特殊建造物は一般住宅や建物とは異なる建築物だということがお分かりいただけます。
そして、不特定多数の人たちが利用する点から、建物の損傷、老朽化している恐れがあるからです。
危険リスクを抑えて建設した建物なのに、使用することでそれを維持できないとなれば、大きな事故や地震などの災害時に被害を最小限に抑えることができなくなります。
検査をするのは、建築基準法で定められた専門の技術者です。定期的に調査を行い、行政への報告を行います。こうした定期的な検査や報告義務があることも、事前に把握してスケジュールしておくと安心です。
法令通りの建設が求められる
特殊建造物で、最も心配されるのは火災や地震など災害時に安全に避難できるのか、建物の被害を最小限に抑えることができるのか?です。
不特定多数の人たちが利用する中で災害が起きれば、パニックは避けられません。また、火災は周りの建物に火が移ることは避けたいことです。
こうした安全面から、特殊建造物は建設条件から外れることが許されません。個性的なデザインや空間にこだわりたいという希望が通ることは非常に難しいです。
まとめ
特殊建造物となる倉庫を建設する際の注意点についてご紹介しました。
大きな建物となれば、工場も含まれるところですが、さらに詳しく条件を見ていくと工場は含まれず、倉庫だけが該当することが分かりました。
様々な点で注意点があることを知れば、倉庫建設の際の業者選びも慎重になります。周りの情報に踊らされることなく、自分の目で確認をするようにしてください。