物流に欠かせないのが倉庫です。
港や空港などでは、輸送用の製品や材料を保管するために倉庫は重要な役割を果たしています。
直接、私たちの生活に関わることはありませんが、「倉庫」には保管する物によって分類できる事はあまり知られていません。
実際、倉庫ではどんなものが保管できるのか?物流においてどのように活用されているのか?
そんな倉庫について詳しく調べてみました。
倉庫業とは
倉庫業とは、他人の荷物・物品を倉庫で預かり保管する事業です。主に倉庫は物流において重要な役割をしています。そして適正な倉庫業を運営するために、倉庫業法が制定されています。
倉庫業法の中には、「倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない」とあります。
この登録に対する条件が2つあります。
- 倉庫の種類毎に定められた施設・設備基準を満たすこと
- 事業を適切に管理運営するための「倉庫管理主任者」を選任して管理させること
倉庫業と聞けば、やはり物流事業者のイメージが大きいですよね。でも実際には、自社の倉庫(入出荷業務)で他社から荷物や物品を在庫として預かった場合も倉庫業となります。
施設の基準は非常に厳しく、建築物を作るためにある「建築基準法」や「消防法」の基準以上といわれています。
また、倉庫管理主任者の仕事として、安全・防火を管理します。さらに行政への届け出も行います。
また、倉庫業は「営業倉庫」とも呼ばれます。
倉庫業は保管物により3つに分類される
まず倉庫業は、保管される物品によって「普通倉庫業・冷蔵倉庫業・水面倉庫業」の3つに分類されます。
普通倉庫業
普通倉庫業は、倉庫業の大半を占めているため倉庫業と言われると、この普通倉庫業をイメージされることも多いです。
普通倉庫業で保管できる産業と物品です。
- 農業
- 鉱業(金属・原油・天然ガスなど)
- 製造業(食品・繊維・化学工業・紙・パルプ・機械など)
- 消費者の財産(家財・美術品・骨董品 など)
保管できる産業の貨物も幅広く、そして家庭用品に至るまで保管できる物品の数も多いです。
倉庫業の大半を占めると言われる理由です。
冷蔵倉庫業
10℃以下で保管することができる倉庫を冷蔵倉庫業といいます。
保管する物品です。
- 水産物
- 畜産物
- 農産品
- 冷凍食品
保管温度の設定は、それぞれの物品によって異なるため約10℃〜マイナス60℃の間で細かく設定され保管しています。
例えば、まぐろはその鮮度と変色を防ぐために超低温と言われるマイナス50℃以下で冷凍され保管しています。
水面倉庫業
河川や海そして貯木場を利用して水面で保管する倉庫をいいます。
保管するものは、主として原木です。
山間で切り出した木材を河川で下らせて集積します。陸には上げず、そのまま水面に浮かせたまま保管しておきます。
また、水面倉庫として決められていることもあります。
- 築堤や工作物によって防護されていること
- 水害による原木の流失防止できること
- 照明装置が設置されていること
これら設備が整っていることが条件に含まれます。
さらに普通倉庫業には8種類ある
倉庫業の大半を占める普通倉庫業は、さらに細かく8種類に分けられています。
1類〜3類倉庫は、設備や構造基準によって分けられます。
1類倉庫
このタイプが多くの普通倉庫と呼ばれる建屋型営業倉庫です。
設備や構造基準について一番高い水準とされ、保管できる物品が幅広くあります。
設備基準
防水性能・防湿性能・遮熱性能・耐火(防火)性能
保管できる物品
日用品・紙・電気機械・1類〜5類の物品
その他にも外壁の基準、災害・消火設備・防犯・防そ(ネズミ)など満たさなければならない基準が多くあります。
2類倉庫
満たす設備基準が緩和されますが、保管できる物品に制限ができます。
設備基準
防水性能・防湿性能・遮熱性能
※耐火(防火)性能は不要
保管できる物品
でん粉・肥料・セメント・2類〜5類の物品
3類倉庫
設備基準はさらに緩和され、燃えにくい・湿気により変化しない物品が望ましいです。
設備基準
防水性能・遮熱性能
保管できる物品
ガラス類・陶磁器・鉄材・3類〜5類の物品
野積倉庫
4類倉庫です。
野積みとは、屋外で物を積むことをいいます。
ここで保管する物品は、雨・風・日光の影響を受けない物品が望ましいです。
設備基準
土地の周囲を柵や塀で囲むこと
防護や消火設備はもちろん、防犯については照明装置を設置して備えること
保管できる物品
木材・自動車・れんが類
水面倉庫
先述した「水面倉庫業」が5類倉庫になります。
設備基準
周囲を築堤などの工作物で防護する
災害などにより流失しないよう防止する
防犯に備える
保管できる物品
原木など
貯蔵槽倉庫
6類倉庫は、タンク・サイロにより密閉された物品を保管する倉庫です。
設備基準
防水性能・耐火(防火)性能
側面の強度
保管できる物品
袋に入っていない穀物類
糖蜜などの液状
危険品倉庫
7類倉庫です。
様々な法律により「危険物」と指定されている物品を保管する倉庫です。
厳しい設備基準の1類倉庫で保管できる物品でも危険物の指定があれば、こちらの倉庫で保管します。
設備基準
保管する土地の周囲を柵や塀で防護する
消火設備を設置する
防犯に備える
保管できる物品
消防法・第2条第7項
高圧ガス保安法・第2条
液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律・第2条第1項
石油コンビナート等災害防止法・第2条第4号
↓
これらにて危険物と指定されている物品
冷蔵倉庫
先述した「冷蔵倉庫業」が8類倉庫になります。
設備基準
外壁の強度
防水性能・耐火(防火)性能
温度計の設置
保管できる物品
10℃以下で保管する農畜水産物で生鮮・冷凍の物、または加工品など
その他トランクルームについて
平成14年に施行された「倉庫業法」には、トランクルームの認定制度が設けられました。
こちらは、物流で活用する倉庫とは違い、主に個人の財産を保管する倉庫として認知が高いです。
財産だと思う物は人それぞれですが、骨董品・書籍・家財などどれも大切な物に違いありません。
数あるトランクルームの中から、どこで保管するのか迷った時には「認定トランクルーム」の有無で選択する方法があります。
認定トランクルームとは、国土交通省の登録を受けさらに優良であると認められたトランクルームをいいます。
物流でも個人でも大切な物を預けることに違いはありませんね。
物流の流れと倉庫の役割
倉庫は、保管する物品によって種類があり設備が整っていることが分かりましたね。
では、ここで実際に物流の流れに沿って倉庫の役割を確認してみましょう!
検品・・・倉庫に運ばれた物品が適正であること、数や破損などを確認する
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入庫・・・物品に合う保管場所に運ぶ・倉庫内では、在庫数・入庫日付・物品の状態などを管理する
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流通加工・・・お客様の要望に合わせて包装・ラベル貼り・組み立てなどを行う
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ピッキング・・・主に日付順(入庫日)に出荷のためにピッキングをする
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仕分け・荷揃え・・・ピッキングされた物品を輸送される各方面別に分けて、荷物を準備する
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出庫・・・輸送するトラック・貨物船などに指定された時間に荷物を運び入れ出庫する
倉庫は、ただ物品を保管するだけでなく出庫されるまで品質を保つために管理を怠らないよう努めていることが分かりますね。
倉庫立地の良し悪しで、利益は変わる
倉庫も立派な物件です。
荷物を保管して適切に管理を行い、そして入出庫を繰り返すことで利益を上げていきます。
そのためには、どんな立地条件で倉庫を建設することがいいのでしょうか?
ここまでの調べで倉庫は、流動的であることが分かります。
さらに物流の流れからも迅速に適切に運ばれることが望ましいですよね。
この2つの条件を満たす立地として考えられるのは、
- 港湾・主要幹線道路・鉄道から近く、荷受しやすい場所
- 主要都市にアクセスしやすく流通の拠点になる場所
今後、交通が整備されることで、立地の良い土地を入手したいライバルが増えることも考えられます。
さらに、建設となれば法律と建設条件などは必ず確認が必要になります。
建設基準法に基づき、主に3つが考えられます。
- 倉庫建設が可能な区域であるか
- 敷地面積の何割まで建設可能であるか
- 建物の構造上で防火や制限はないか
もう一点、調査してほしいことがあります。
それは、都市計画の予定線に敷地が該当していないかです。
立地条件を満たしていても、建設できるのか?将来的に取り壊しはないか?様々な観点から確認してください。
まとめ
今回は、倉庫について調べてみました。
その種類は多く、そして決まった形だけではないことが分かりました。
さらには、トランクルームのサイズで一個人も倉庫を活用することが増えてきました。
物流の流れが円滑に行われるからこそ、日本経済は支えられ、私たちの生活が豊かになります。
そんな物流の一部であり、支えている倉庫の存在は重要です。
今後、倉庫の機能や特性を活かしていき、その重要性を物流で発揮してほしいですね!