IT技術の発展が目苦しい中、建設業界でもIT技術によって変わってきたことがあります。
それが、施工管理です。
施工管理は、建設現場において欠かせない業務ですが、規模が大きくなるにつれ負担が大きく、近年では人手不足により、資格を有する人材を確保することが難しくなっています。
今回は、IT技術によって施工管理業務がどのように変化してきているのか、また取り入れることでのメリットなどをご紹介します。
施工管理とは
施工管理とは、建設現場において納期に間に合わせるように工程を管理したり、危険を避け事故のないように安全管理をしたり、何より図面通りの作業を行う品質管理などを管理する仕事をいいます。
建設現場では、一度に全ての作業を開始することはできませんから、基礎から始まり柱や梁の組み立て、作業に必要な足場作り、外壁や内装作りなど作業日程をあらかじめ決めていきます。
その都度、使用される建材や重機の運搬と置き場を考え、発注者と打ち合わせをしていきます。これらは納期に間に合わせるだけでなく、安全に作業をしてもらうためにも必要なことになります。
施工管理の業務は、現場監督や現場管理と呼ばれる人たちが行いますが、施工管理技士と呼ばれる国家資格を有する人たちです。
施工管理の問題点
施工管理は建設現場には欠かせないことは十分に分かります。
しかし、様々な問題点を抱えているのも現実です。
若手の不足で人材育成ができない
建設業界でも人出不足は深刻な問題です。特に若手がいないことで、施工管理や技術や仕事のやり方などを任せられる人材を育成することができていません。
実際にデータとして見た場合、建設業界での若手(29歳以下)は、建設業界全体の約11%だと言われています。このデータを聞くだけでも若手が少ないことは分かりますが、実は他の業界より低い数値となっており、どれだけ厳しい状況なのかが分かります。
建設工事は増加の見込み
2020年に開催が予定されていたオリンピックは延期になったものの、それらに関連する施設の建設ラッシュが終わり、勢いは落ち着いたかに見えます。さらには、新型コロナウイルスの流行によって、予定されていた工事が延期、中止になったケースも少なくありません。
では、なぜ増加を見込めるのでしょうか?
建設業界としては、上記の2つのことは痛みが生じるケースですが、現在も大型物件と呼ばれる建設は動いています。建設する物件が大きくなるほどに施工管理は緻密になり、関わる業者や職人も増えていきます。段取りよく、安全に現場をまとめる人材が求められるのは必然的なことなのです。
若手が不足している3つの原因
建設業界は、非常に魅力的な業種です。
通勤経路や自宅近くに建設現場があると、「何ができるのだろう?」と期待されます。それを作る側になることは、未来を変えていくような夢でもあります。
それなのに、就職する若者が少ないのには3つの原因があります。
不規則な休日と残業
施工管理にある工程管理とは、納期期日に間に合わせるように各作業の日程や建材の搬入スケジュールなどを決めていきます。
工程通りに作業が進められていけば何も問題はありませんが、天候や予定外の問題が起こることで日程は少しずつズレてしまいます。小さなズレが積み重なれば納期に間に合わなくなります。
納期に間に合わないとなれば、休日返上で現場に入る業者もいますし、残業をすることもあります。建設現場に業者が入るのですから、現場監督も出勤となります。また、工程の調整や日報作成などもあるので、施工管理者としての事務処理が時間に終わらないと持ち帰りで作業が続くこともあります。
こうした問題が人出不足の原因の一つであることは間違いありません。そのために働き方改革として、建設現場の土日休日を実施している建設会社があります。これは国の取り組みとしてのモデルケースですが、労務費の補正導入など改善するべき点が明らかになってきたので、今後に期待したいです。
給与と評価
高い技術を持ちながら正当な評価が得られない、または下請け会社であるため十分な報酬が得られないことがあります。また、建設業界では、国家資格を有する人も多くいますが、それに合うだけの仕事ができていないケースもあります。
身につけた技術を活かしたいと期待をして入社しても、仕事の充実感がない、給料も安いとなれば、やりたいことであっても離職率が上がってしまいます。
雇用形態、技術に対して正当な評価をして十分な給与が得られるように、こちらも国が政策として始めています。
危険
高所での作業、建材の落下、機材の取り扱いなど、建設現場は常に危険と隣り合わせな状況にあります。もちろん、そのための安全対策をされていますし、現場には「安全第一」のスローガンを、誰もが目にする位置に掲げています。
しかし、危険や恐怖というのは、良いことより先に目に入りますし、考えるほどに不安が増加していきます。まれに起こる落下事件などのイメージによって、建設業界=危険な業界という意識付けをされてしまいます。
危険がある仕事を避けたいと考えてしまいます。
問題解決にアプリを利用する
建設業界でもIT技術を取り入れて、これまでのやり方を一新しています。
施工管理に関しても2つのIT技術を取り入れて、業務改善を行なっています。
施工管理アプリの活用
アプリは、スマートフォンやタブレットで作業ができるため、現場でも使えることから導入を始めている建設会社が増えています。
施工管理アプリでは、こんなことができます。
紙が不要になる
工程の作成ができ、保存もクラウドで行います。これまで紙に書き起こしたり印刷していた作業は不要となりますし、エクセルで作成する手間もなくなります。
現場情報の共有ができる
現場での作業情報や写真や図面を共有することで、現場での作業を一段と加速させることができます。施工管理によって、決められた通りに作業が進んでいるかもそうですが、現場で作業を進める職人や建材を搬入する業者にとっても、自分の仕事のスケジュールが予定通りに進められるかの確認ができます。
言った言わない、納品したのに足りない、このような些細なことで現場作業が止まることがなくなれば、納期に間に合わせることができます。
※現場の情報に関しては、「社内で共有するタイプ」と「社外とも共有するタイプ」と、アプリによって異なるので、確認が必要です。
アプリの問題点
アプリの活用で施工管理が整うことで、現場での作業や現場監督の仕事が格段と変わることが分かります。
しかし、アプリでは解決できない問題があることも知っておきましょう。
ITが苦手な人もいる
ITになれていない世代の職人や業者には、アプリを活用することに躊躇する傾向があります。パソコンやスマホの導入時に上手くできなかった思い出があるのかもしれません。
これからの時代、IT技術によって世の中は大きく変化していきます。古き良きものとの共存も課題ですが、時代の変化に柔軟に対応することも必要です。
ITでは理解できない人の気持ちのことも考えながら、IT技術との上手な付き合い方を提案してください。
アプリでの対応しきれない建設現場もある
非常に便利なアプリですが、現場での工期が長くなる、関わる人が多くなる、また既存のシステムとデータが一元化できないという場合があります。
アプリによって、できることは異なるので導入前にチェックしてください。
また、アプリを提供している会社についても確認してください。近年、アプリを導入してから撤退してしまう会社も少なくありません。常にバグをチェックしてアップデートが必要となるアプリにとって、会社が撤退してしまうことは、使用できなくなることを意味しています。信用できる会社であるかの確認が必要です。
ピンチをチャンスに変える
今回はIT技術、特に施工管理アプリについて取り上げてみました。
若手不足というのは、どこの業界でも問題ではありますが、建設業界は他業種より深刻化しています。就職率が低いだけでなく、離職率が高いことも問題なのです。
こうした問題を国に任せておくだけでなく、チャンスだと思い積極的に取り組むことが大切です。どうしたら就職したくなる会社になるのか?考えて実行してみると、建設業界自体が魅力的な業界になっていきます。