不景気が続く中で、新規建設を諦めるケースがあります。
例えば、名古屋駅前はリニア新幹線の開通に合わせて百貨店や路面店を含む大規模や建設工事が予定されていましたが、コロナウイルスの感染拡大によって建設は一時停止となり、今もそのままです。
大きな公共事業だけでなく、企業自体も本社ビルの必要性を考えるようになり、縮小傾向にあるとも言われています。
新設は無理でも倉庫、工場は必要だという企業では「貸倉庫」、「貸工場」を考えているところもあるのではないでしょうか?
規模や条件などにもよりますが、倉庫を借りながら工場として作業をすることも可能になる?という声もあります。少しグレーな感じで利用を考えるのは不安が残ります。
そこで今回は、貸倉庫、貸工場の違いや利用時の注意点についてご紹介します。
建物の種類について
不動産登記法によって、建物は用途にとって種類が分けられています。
工場:製造、加工などの作業を行う。規模が大きい建物
作業所:規模は工場より小さく、労力作業を行う建物
倉庫:物品を収納・保管する建物
物置:個人レベルの収納・保管を目的とする小さな建物
納屋:農業に必要となる農機具、作業道具などを収納・保管する建物
建物を登記する際に、種類を記載します。これによって建設された建物の用途が決まります。
倉庫と工場は同じ建物なのか?
倉庫と工場は用途が違うので、建物としては違うものです。
しかし、様々な場面で同じような扱いをされることがあります。
物件検索
インターネットで物件検索をしてみると、倉庫、工場のどちらにも同じ物件が紹介されていることがあります。これには違和感を感じます。
なぜ、このようなことが起こるのか?
実はこれには、ちょっとしたカラクリがあります。
倉庫を工場として使用していた
建物の種類は「倉庫」。だから物品を収納・保管する建物です。けれど、先に借りていた業者が「工場」として利用していたのです。
その後、貸倉庫を、倉庫としても工場としても使用ができるため、物件検索にはどちらでも紹介されているのです。
貸倉庫を工場として利用できるポイント
一般的に登記本に書いてある建物の種類として使用することが正しいです。
しかし、貸倉庫のままで工場として利用することができるのも事実です。
ここでは、貸倉庫を工場として利用できるポイントをご紹介します。
貸主の許可を得る
建物の種類は倉庫でも貸主が工場として使用することに許可を出した場合は、工場としての使用が可能になります。
軽作業のみ使用する
ただし、本格的な工場としての稼働は認められません。あくまでも軽作業程度に使いたいということであれば、貸主次第ではありますが、貸倉庫を工場として利用ができます。
倉庫と工場の併用で使用する
倉庫と工場を併用することを前提に考えているなら、貸倉庫の場所の用途地域を確認してください。工場としての使用に問題がないのなら、倉庫面積の一部を作業スペースとして、つまり工場として使用してもよいというルールがあります。
もちろん、最終的には貸主の許可が必要となりますが、きちんと情報を確認した上で交渉をするのは得策です。
用途変更の可能な物件を見つける
ここまで繰り返し「軽作業」というと思うのは、軽作業以上の工場として使用は可能なのか?ということです。
実際にはハードルが高そうですが、可能性はゼロではありません。以下のように条件が整えば、本格的に工場として使用ができます。
・貸主より内装工事を許可をもらっている
・用途変更が可能な物件である
ここまでくると貸し倉庫でなく貸工場を借りる方がいいように思いますが、条件が合う場合には倉庫を工場として使用ができます。
貸倉庫を工場として使用できないポイント
工場として使用するのはことは可能ではありますが、やはり工場としては使用ができない貸倉庫もあります。
建物に関しては法律的な問題もあるので、勝手なことはできません。必ず不動産屋や貸主に確認をするようにしてください。
事業内容に問題あり
貸主の許可を得て、工場としての使用が可能であっても使用できないケースがあります。それは、事業内容です。行政の許認可を必要とする事業であった場合は、そちらの内容をクリアしていないと工場としての利用は認められません。
この場合は、貸倉庫を借りるメリットもなくなります。
許認可が必要となる業種は1,000種類ほどあります。業種によって届出、免許、許可、認可、登録といった感じに、手続きや窓口が異なります。
パチンコ店、ガソリンスタンド、保育園など思う以上に幅広い業種なので、必ず確認をしてください。
貸主の許可が出ない
行政の許認可、用途変更など公的な理由をクリアできても、貸倉庫の持ち主である貸主の許可が出ない限りは、工場として使用することはできません。
貸倉庫を工場とするメリットが感じられたり、契約交渉によっては貸主の許可を得ることは可能かもしれません。
しかし、許可を得ないまま勝手に内装を変えたり工場として使用してはいけません。すぐに退去命令が出てしまうこともあります。
必ず契約を守るようにしてください。
周辺への配慮も忘れない
貸倉庫の周辺の様子をチェックしてください。どんなに物件を気に入っても工場とする場所に適していないようなら、再検討する余地があります。
また、これまで倉庫だったところが工場となるので、環境が変わることを周辺住民の人たちがどのように思っているのかは配慮が必要です。特にニオイや音が出る時には丁寧な説明が必要です。
できれば、これらは貸主と賃貸契約をする前に済ませておきましょう。なぜなら、借りてからのトラブルで契約を解除したくてもできない場合があります。使えない物件を借り続けるのは無駄遣いとなってしまいます。
周辺住民、貸主、対人間であることは、行政に許可を取ること以上に丁寧に慎重さが大切です。決して無理なことはしないようにしましょう。
貸倉庫ではダメ!建物が「工場」でないといけない業種
貸倉庫を工場として使用することをまとめてみました。
建物の種類は登記にて明確にされていますが、条件が整うことで貸倉庫を工場として使用することは可能だとわかりました。ただし、契約や許認可に反することはできないので、きちんと確認することをオススメします。
そして、そもそも貸倉庫では認められない業種があります。
・製造業(特に食品関係)
・行政の補助や申請が必要な業種
こちらに該当する場合には、貸倉庫で事業を始めることはできないので、建物の種類が「工場」と明記される物件を探してください。
また、ここまで貸し倉庫を工場として使うことをご紹介してきましたが「逆はダメなの?」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
こちらに関しても同様に倉庫として使用することができます。もちろん使用するためには貸主の許可や行政などに確認が必要な業種ではないかをきちんと確認してください。
今回は、貸倉庫と貸工場を別の用途で使うことにフォーカスをしてきました。そもそも建物は、用途がはっきりしているから、それに合わせて設計され建設されます。規模が大きくなるほどに審査も厳しいですし、住宅であっても建て替えができない区域もあったりします。
そうして建設された建物を別の用途で使用するのですから、不便や勝手が違う場合があるので、契約前に現地で確認して、貸主さんともきちんと話して進めてください。