建設関係の仕事で、いま問題となっているのは、人手不足です。
鳶職や塗装業といった職人だけでなく、現場監督など現場を指揮する人材も不足しています。
こうした問題を解決するべく、政府も外国人労働者を積極的に受け入れるように動き出しました。
では、いったいこれほどまでに、深刻な問題となっているのか?また、その改善策はどんなことが実施されているのか?
建設の現場について、調べてみました。
建設現場の高齢化が進む
近年の建設現場を見てみると、高齢化が進んでいることが手に取るように分かります。現在、中心となって働いている世代は、50代です。
50代といえば、サラリーマンなら役職につき後進の育成をしているころです。しかし、建設現場では、いまなお現役として職場で作業をしている状況です。
この状況から、若者がいないこと、成り手がいないことが顕著に分かります。
人手不足は20年前から続いている
実は、建設業の人手不足は20年以上も前から始まっています。
就職者数の減少が始まったのは、1997年とされています。すでにバブルは崩壊しており、建設投資が減少したことで、仕事の件数が減ってしまったことが原因とされます。
1997年まで日本では、700万人近くの就職者がいましたが、ここから緩やかに減少傾向となり、2015年には半数近くまで落ち込んでいます。
人手不足の原因は3つ
建設業の現状が分かったところで、さらに人手不足となる原因を考えてみましょう。
大きな問題として3つ挙げられます。
- 若者の就職離れ
- 離職率が高い
- リーマンショックの影響
詳しくご説明します。
若者の就職離れ
第一に考えられる原因として、建設業への就職を希望する若者が減少していることが挙げられます。
建設業が若者に人気がない理由は「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kと言われるものに当てはまるからです。
確かに、建設業は、建設現場での仕事がメインとなるので、一日のほとんどを外で過ごすことになります。
夏は、熱中症になりやすいですし、冬は気温が低く体調を崩しがちです。
そんな中での肉体労働は、体を酷使しながらの仕事となります。この状況は聞いているだけでも、「きつい」ことが伺えます。
汚いのは、衛生的に受け付けない人もいます。特に建設現場に用意されるトイレは、仮設タイプのものがほとんであり、汚れた靴のままや服で利用するため、掃除が追いつかないことがあります。
ここ数年で、建設業への就職を希望する女性が増えていますが、衛生的でないことを理由に就職を躊躇する女性がいるのも、現実です。
そして、常に危険と隣り合わせの状況にあります。
ビルやマンションなどの建設現場では、高所での作業があります。建設重機を使用して高所まで建材を上げることができても、取り付けるのは「鳶職」と呼ばれる職人にしかできません。
低層階で作業をしていても、こうした建材の落下がないとは言い切れませんし、作業手順を誤って事故となることも考えられます。
安全対策はしていても、危険なイメージが払拭できていません。
離職率が高い
就職する若者が減少している中で、離職する人が多いのも人手不足に拍車をかけています。
離職する原因は、先ほどの3Kと呼ばれる「きつい・汚い・危険」以外にもあります。
- 給料が安い
- 労働環境が悪い
- 価値観の違い
給料が安い
肉体労働で毎日きつい作業が続けば、それに似合う給料が欲しいと望むのは自然なことです。しかし、実際に満足のいく給料が支払われないとして、離職してしまう人たちがいます。
これについては、一般労働者より建設業の労働者の方が、給料が安いという報告があります。
まず、考えられる理由としては、日給制です。
建設会社に属する現場の社員であれば、給料は保障されています。しかし、職人の多くは、ひと月に仕事をした日数分でしか給料に反映されないため、悪天候が続いたり、建材の到着が遅れるなど、作業ができない日が増えれば給料は減りますし、毎月不安定な給料となってしまいます。
また、他業種と同様に、建設業界でも「資格・キャリア」が評価されます。
1級建築士をはじめとする国家資格から、民間で認められた資格が建設業界にもあります。
資格を持っていないとできない作業が、意外にも多くあるため、業務に関係する資格を取得していれば、資格手当として給料に反映されます。
しかし、この資格も誰でもすぐに取得できるかといえば、そうではありません。受験条件によっては、勤続年数が含まれるものがあるため、時間がかかる場合があります。
さらに、資格を取得していたり、これまでの経験を活かして活躍してきたことがキャリアとして評価されますが、就職したばかりの若者は、資格もキャリアもありませんから、給料のベースアップは厳しいものがあります。
労働環境が悪い
労働環境には、長時間労働が挙げられます。
例えば、雨が連日降り、作業ができない日が続いた場合でも、納期には間に合わせなくてはいけません。一つの作業が遅れると、その建設現場全体の作業が遅れることになるので、1日の作業時間が長くなってしまいます。
理由があることとしても、やはり労働時間が長くなることは、良いこととは言えません。
価値観の違い
そして、価値観の違いは避けられません。どんな業種でもあることですが、建設業界でも同じです。
建設業は、肉体労働ですから、体で作業を覚えていくことが多くなります。誰しも最初か上手くいきません。こうした時、50代の作業員だと厳しい言葉を言われながら、覚えた人もいることでしょう。それが結果良かったと考える人は、若者に同じような対応をすることが考えられます。
しかし、ゆとり世代と呼ばれる若者には、通用しないことが考えれます。怒られることも少なく、みんなで励ましあって頑張ろうという世代です。
価値観の違いは、自ずと生まれてしまいます。
リーマンショックの影響
バブル崩壊後、緩やかに就職者が減少していく中で、離職者増加の拍車をかけたのが、「2008年のリーマンショック」です。
アメリカの投資銀行の破綻が引き金となり、世界規模での金融危機となりました。
これにより、建設業も仕事が減少してしまい、多くの職人が離職していますし、建設会社でも転職を希望する人が増加しました。
現在では、この影響から回復傾向にあるとされています。
2011年の東日本大震災に関連する事業があること、そして、2020年に開催予定の東京オリンピックの建設ラッシュが、需要を拡大させています。
しかし、人手不足のため、こうした事業まで行えるだけの体制が取れていないことが問題視されています。
建設業界が盛り上がっていけば、就職者の増加や、離職した人たちの復帰も見込めるはずですが、人手不足を解消するまでには達しないようです。
人手不足を解消する2つの対策
政府の対応としては、外国人労働者を積極的採用することが挙げられています。雇用側にもメリットがあるように、政策を考えていますが、長く働いてもらうためには、人手不足とは別の問題が発生するかもしれません。
そこで考えられる方法として、2つの対策が実施されています。
- 待遇改善
- イメージの改善
身近なところを改善するだけで、日々の意識は変わっていきます。
待遇改善
ここまでの状況でも分かるように、かなり過酷な業務をしながら給料が安いという、意見が多く聞かれます。
まずは、作業の効率化を上げることを考えてみましょう。
職人による作業が多い中で、ロボットや機械の導入を検討して、現場に取り入れている企業があります。ドローンによる空撮も始まっています。
今後は、AIの導入も考えられます。人の手では限界だった場所を、AIが可能とすることが増えていきます。
ロボットやAIの導入は、若者の関心を集めることができますし、チャレンジしたいと考える学生が増えることも期待できます。
イメージの改善
やはり、「きつい・汚い」は改善したいことです。
まずは、作業着です。
ニッカポッカを履いている職人が多い中で、作業着のデザインや素材を変えるなどして、おしゃれな作業着でアピールする企業があります。
服としての機能はそのままに、デザインを変えるだけでも就職希望者への印象は変わります。
さらに、知ってもらうことで世間のイメージを払拭する動きも見られます。
建設現場で使用される重機の見学会を開催したり、大学の学部に関係なく企業説明を行うことも裾野を広げる効果はあります。
そして、SNSやブログを利用して、若者にアピールをする企業も増えています。
実際の現場での声を届けることや、就職を考える若者の悩みを解消することにも一役買っています。若者が求める形で伝えることも、イメージの改善に繋がります。
まとめ
今回は、建設業の人手不足について、調べてみました。
いま最も心配されているのは、2020年の東京オリンピックまでに建設が間に合うかどうかです。人手不足により作業が遅れていると言われています。
都心での事業でも人手不足と言われるのですから、地方ではもっと苦しい状況が伺えます。
就職活動をする学生が一人でも多く、興味を持ち就職してくれると、改善している努力が実を結びます。