前回は、倉庫勤務で有利になる様々な資格を紹介しました。今回は工場編として工場勤務の際に有利になる資格についてです。当たり前のことですが、工場で製造しているものや担当の作業内容によって必要になる資格は異なりますので、現在の仕事や目指している職種に必要な資格の選択の参考にしてみてください。
工場で必要とされる資格の種類
工場と必要とされる資格には『加工』『設備管理』『危険物取扱』などに関するものがあります。
『加工』とは様々なものを製造する工場で、部品を作るために切る・削るや、素材同士をつけるなどの作業を指します。この『加工』作業をするうえでの資格がいくつも存在します。
また、工場によっては、取り扱いに危険がある薬品や大量の熱や電気が発生する設備など、その取扱いと管理には細心の注意が必要なものが多くあります。安全な作業を進めるために必要なのが、『設備管理』『危険物取扱』に関する様々な資格になります。
それでは具体的に様々な資格を紹介していきます。
プレス金型取替作業者
プレス金型取替作業者とは動力によって動かされているプレス機械の金型やシヤーの刃物、あるいは安全装置、安全囲いの取り付け、取り外しなどの作業をします。
プレス機は圧力をかけて金属を加工するので、その金型の取り換え作業は危険な部分もあるため、国家資格が必要になります。
資格取得のためには規定時間(10時間)の学科と実技を受ける必要があります。実技は2時間ほどで学科メインになります。修了者には修了証が交付されます。
資格の種類: 国家資格
認定団体: 厚生労働省
備考:資格の受講は全国で行っており、最寄りの全国各地の労働局長登録教習機関にて受けられます。受講料は10,000円程度で18歳以上であれば誰でも受けられます。また、18歳以上でプレス機械による作業に5年以上の実務経験があると、「プレス機械作業主任者」の受験資格も得ることができます。
アーク溶接作業者
アーク溶接とは溶接棒と被溶接物の間にアーク(火花)を発生させ、その熱を利用して行う溶接のことです。生産工場や建設現場などにおいて、極めて広範囲で使用されています。
このアーク溶接作業を行うためには、労働安全衛生法に基づくアーク溶接特別教育の講習を受けて修了し修了証の交付を受けます。
講習期間は2日間(11時間)の学科と1日間(10時間)実技、合計3日間(21時間)です。この講習を受けた人であれば、誰でも資格を取得することができます。
また、アーク溶接作業者の資格には期限がないので、更新の必要はありません。そのため、 一度取得すれば一生有効になる資格です。
資格の種類: 国家資格
試験形式:講習
認定団体: 厚生労働省
備考:受講料は、以下の通り講習の実施団体によって異なります。公益社団法人東京労働基準連合会15,420円、一般社団法人労働技能講習協会12,330円、一般財団法人労働安全衛生管理協会11,330円です。
ガス溶接作業者
ガス溶接とは、金属同士を接合するときに、アセチレンをはじめとする可燃性ガスにより鉄を高熱にし、接合または溶断する方法で、機械器具製造工場や建設現場等において幅広く使われています。
ガス溶接の作業は、可燃性のガスと、支燃性の強い酸素を用い、高温の炎を取り扱うために思いがけない爆発・火災や中毒性の危険を伴う作業のため、労働安全衛生法等の法令において、ガス溶接技能講習を修了した者でなければガス溶接を行ってはならないと定められています。また、ガス溶接を行うときには修了証などの資格証の携帯が必要です。
資格種類: 国家資格
試験形式: 学科講習と試験、実技講習
認定団体: 厚生労働省
備考:ガス溶接の資格をえるためには2日間にわたる学科講習と実技講習を受ける必要があります。学科に関しては、合計で9時間の講習が行われ、設備の構造・取り扱いの知識、可燃性ガス及び酸素の知識、関係法令となっており、最後に学科試験が行われます。実技に関しては、5時間、ガス溶接等の設備の取り扱いの実技講習のみ行われます。
銀ろう付け技能者
“ろう付け”とは金属を接合させる方法であり、高熱を用いて金属同士を繋げる技術の1つです。通常の溶接は接合させようとしている材料そのものを溶かし接合させるのに対し、ろう付けは母材よりも融点の低い金属を溶かして接着剤(=ろう)として用いることで母材同士を接合させます。
銀ろう付けはアクセサリー作りの際など小さな金属部品の加工でよく使われます。
銀ろう付け技能者は、用いる材料によって資格の種類が異なり、下記の4種類があります。
・FA-Cu:銅板/薄板
・FA-S:炭素鋼板/薄板
・FA-SUS:ステンレス鋼板・薄板
・PA-Cu:銅管/薄肉管
資格種類: 民間資格
認定組織: 社団法人 日本溶接協会
試験形式: 学科 実技
備考:受験資格は、1ヵ月以上ろう付け技術を事業所などで習得している15歳以上の人で、さらに以下のいずれかを満たしていることが必要です。
・ガス溶接技能講習を修了している
・在学中の高校または職業訓練において、「ガス溶接技能講習」と同等の教育・講習を修了している
・ガス溶接作業主任免許を取得している
玉掛作業者
重い荷をつり上げるクレーン、今では建設工事だけでなく、工場内でも、いろいろな作業で使われています。このクレーンのフックに、荷を掛けたり、外したりする作業を玉掛けといいます。
この作業をする資格を得た人を玉掛作業者といいます。荷重1トン以上の揚荷装置およびクレーン、移動式クレーン、デリックの安全な玉掛業務を行うための技能者を認定する国家資格です。
玉掛けの資格はクレーンなどの吊り上げ荷重(または制限荷重)に応じて、以下のように法令で定められています。
・クレーン等のつり上げ荷重(または制限荷重)が1t未満の場合は、「玉掛け技能講習の修了者」または「玉掛け特別教育の修了者」であること。
・クレーン等のつり上げ荷重(または制限荷重)が1t以上の場合は、「玉掛け技能講習の修了者」であること。
資格種類: 国家資格
試験形式: 講習
認定団体: 厚生労働省(都道府県労働局)
備考:保有している資格や、玉掛け補助作業の経験により、講習を受ける時間が異なります。
クレーン・デリック運転士免許[床上運転式クレーン限定]
クレーン運転士の仕事は、工場や工事現場で資材などを吊り上げることです。吊り上げ荷重5トン以上のクレーンを運転するためには、国家資格が必要になります。
4種類あるクレーン運転士の免許の種類は4つ、その中で特に工場において必要になりそうなのが、クレーン・デリック運転士免許[床上運転式クレーン限定]になります。
床上運転式クレーンとは、工場内部の天井に設置されているクレーンです。UFOキャッチャーのような形式で、工場内の荷物を運びます。
その操作のための免許です。ちなみにクレーンの免許のひとつ、クレーン・デリック運転士免許であれば床上運転式クレーン免許を含む全てのクレーンの運転ができます。
資格種類: 国家資格
試験形式: 学科及び実技
認定団体: 厚生労働省
電子機器組立技能士
電子機器組立技能士は、電子機器の組立や修理に必要な技術を問われる検定試験です。家庭用電子機器や通信機器、工業計測器、卓上電子計算機など、ICやダイオード、トランジスタなどの電子回路を内蔵しているあらゆる機器についての基本電子回路の技能が問われます。
おもに、プリント基板に電子機器などを取り付け、半田付けや配線、側線などを施す作業が対象です。また、電子部品を実装している製造業のような工場においては、毎日のように繰り返される作業の中で、検定で培った技術を生かすことができます。
国家検定制度であるため世間的にも認知度も高いです。等級が、特級および1級~3級まであり、特級であれば管理者レベル、1級~3級に関しては、上級・中級・初級扱いとなります。
資格種類: 国家資格
試験形式:学科試験と実技試験
認定団体: 厚生労働省
備考:3級に関しては実務経験は必要ありませんが、2級に関しては2年以上の実務経験、1級については7年以上の実務経験、特級になると1級合格後5年以上の実務経験が必要です。
機械加工技能士
機械加工とは、旋盤、フライス盤、ボール盤などの各種工作機械や切削工具を用いて金属材料などを加工することです。加工には切削加工、研削加工等の様々な方法があります。
「機械加工技能士」は、「金属を切削・研削し、所要の形に作り上げる技能」を証明する技能検定制度(国家資格)の一種です。検定試験の内容は、使用する工作機械の種類によって区分されています。合格によって金属加工に関する技術のレベルを証明できる資格になります。
工場内に技能士がいると製品の品質が向上して顧客の信頼を得られるメリットが生まれることから、企業からも歓迎される資格となります。
資格種類: 国家資格
試験形式: 学科及び実技
認定団体: 厚生労働省
備考:1級、2級、3級そして特級の4つの階級があり、1級から3級は筆記試験(学科)と実技試験、特級は学科試験のみのテストです。
試験条件としては3級の場合は実務経験が6ヶ月以上、2級は2年以上、1級は7年以上であることがあります。
試験に合格すると「合格証書」と「技能士章」が授与されて、”技能士”と名乗り仕事をすることができます。
まとめ
ここまで、工場で働くときに持っていると役に立つ資格、有利な資格を見てきました。今回掲載していないもののなかに、フォークリフト運転技能者、危険物取扱者があります。
前回の倉庫編に登場した資格ですが、工場においても大変役に立つ資格ですので、見返してみてください。
また、今回触れなかった電気工事士という資格があるのですが、大変重要な資格なので、別の機会に取り上げたいと思います。
今回取り上げなかった資格もまだまだたくさんあります。製造しているものが違えば、必要な資格も変わってきます。どのような資格を取得すれば良いのかは、従事している工場や業務で必要なものを見極めましょう。