工場運営において、事故やケガなく仕事を進めるためには、安全を常に確認することが不可欠です。今回は、今すぐできる安全を確認するためのチェック基準として3つの項目を紹介します。
現在、工場を運営されている方は、採用されているルールに照らし合わせみて3つの基準が盛り込まれているか確認してみてください。また、これから工場を建てるという方は、安全確認のためのルールづくりをする上で、少なくとも紹介する3つのチェック基準を盛り込むようにしてみてください。それではさっそく、3つのチェック基準をみていきましょう。
3つのチェック基準
工場を安全に稼働させるためには業種や大きさなどで様々な安全確認項目が必要です。そのような中、これから述べる3つのチェック基準がすべての工場に共通して確認されるべき項目といえます。
チェック基準1:不安全行動を取っている人はいないか
不安全行動とは、労働者本人または関係者の安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為をいいます。手間や労力、時間やコストを省くことを優先し、つい「これくらいは大丈夫だろう」、「面倒くさい」、「皆がやっているから」、「(作業を早く進めるためには)仕方がない」などと考えたり、「長年経験しているから大丈夫」、「自分が事故を起こすはずはない」などの慣れや過信から、安易な行動がとられた結果、労働災害に発展するケースが少なくありません。
具体的な不安全行動としては、
・防護・安全装置を無効にする
・安全措置の不履行
・不安全な状態を放置
・危険な状態を作る
・機械・装置等の指定外の使用
・運転中の機械・装置等の掃除、注油、修理、点検等
・保護具、服装の欠陥
・危険場所への接近
・その他の不安全な行為
・運転の失敗(フォークリフトなどの乗物)
・誤った動作
などが挙げられます。このような不安全な行動をとっている人がいないか、危険を無視・軽視している人がいないかを常に確認しましょう。
チェック基準2:工場内、設備・装置は不安全状態になっていないか
不安全状態とは人間ではなく機械や物や建物などに事故が発生しうる状態、また事故の発生原因が作り出されている状態になっていることを指します。
具体的な不安全状態としては
・物自体の欠陥
・防護措置・安全装置の欠陥
・物の置き方、作業場所の欠陥
・保護具・服装等の欠陥
・作業環境の欠陥
・部外的・自然的不安全な状態
・作業方法の欠陥
などが挙げられます。工場内の床・壁・扉・階段などに危険な箇所がないか、設備・装置を使用する人や周辺の人に危険が及ぶ可能性がないか、暑さ・寒さをはじめとした環境に問題がないかなどを確認しましょう。
チェック基準3:5S は徹底できているか
5Sとは工場をはじめとする仕事現場において重要な5つの要素「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Sitsuke)」の頭文字をとった言葉です。それぞれの要素が意味する具体的な内容をみていきましょう。
5S「整理」「清掃」「清潔」「しつけ」それぞれの意味
整理とは工場のような大量の資材や廃材がある職場において、必要なものと不要なものを分けて不要なものを捨てることです。また工場では、使用頻度の少ない機械の工程を外注することも「整理」に含まれます。
整頓とは資材や道具をすぐに取り出せるよう、置き場所や置き方をあらかじめ決めておくことです。このことは作業効率を向上させる上でも重要となります。
清掃とは作業終了後に掃除をしてゴミや汚れのないきれいな職場を保つことです。またそれだけでなく、機械のメンテナンスを定期的に行うことも「清掃」に含まれます。
清潔は、「整理」「整頓」「清掃」に共通する目的として、「清潔」な状態を維持することです。常に職場を清潔な状態に保つためには、汚れたらすぐに掃除をすることを意識する必要があります。
以上の4つの「S」を決められたとおりに実行するための「S」が「しつけ」です。忙しいときや疲れているときなどは上記の4Sをおろそかにしがちであることから、いつでも変わりなく4Sを維持するという点においても、この「しつけ」は重要です。
ゴミが散乱している、工具が床に置いてある、装置が汚れているなど、5S が不十分な点がないか、それにより危険な箇所がないか確認しましょう。また、5Sは業界や業種によってはそれだけでは不十分であることも多いため、場合によっては項目を追加する必要があります。5Sとは、あくまでも最低限の基準として認識しましょう。
チェックにひっかかった場合にすべきこと
安全確認のチェック基準にひっかかった点がある場合、そのままにしておいては危険が放置されたままになってしまうので、以下のように行動しましょう。
・些細なことも指摘する
「あのくらいならいいか」ではいけません。どんなに小さくても問題点は指摘しましょう。
・問題を見つけたその場で指摘する
危険な行為や箇所を見つけたら、その場で指摘し、改善を促しましょう。
・労働者とともに改善策を検討する
「ダメだ」と一方的にいうだけでは、労働者のやる気を損ねるだけです。労働者とともに、改善策を検討することが重要です。
・指摘事項の情報共有
指摘事項をその職場で情報共有しましょう。共有することで同じ危険を未然に防止することができます。
・他部署でも同様の危険を改善
他部署でも作業・環境が類似することは少なくありません。情報を共有して同様の危険がないかを確認し、問題があれば改善しましょう。
まとめ
ここまで、安全確認のためのチェック基準とチェック後の対処についてみてきました。安全を保つことで事故を防ぎ予期せぬ危険を防止できることはもちろんですが、そのほかにも安全対策を行うことで得られる効果があります。最後にそのことについて触れたいと思います。
安全性に気を配ると、作業環境を整理することに繋がります。その結果、生産性の向上につながっていきます。機械や道具などの設備を整理整頓するので、作業スペースが広くなり、作業で必要な資材や道具などの「モノ」をスムーズに見つけることができるようになります。モノを探すための時間が短縮されることにより生産性の向上につながることになるわけです。また、安全に作業するために、注意点や機械の使い方などをわかりやすく手順化すれば、作業の効率も向上させることができるのです。さらに、汚い工場よりも整理整頓され清潔な工場のほうが職場環境としては状態がよく、従業員のモチベーションの向上からの生産性アップも見込めます。このようにして安全性を追求すると生産性向上の効果を得る道筋ができるのです。
今回見てきた3つのチェック基準はどのような種別の工場にも共通して基本となるものです。これに加えて食品工場なら食品工場のためのチェック基準、自動車工場なら自動車工場のためのチェック基準と、業種別に異なる必要なチェック基準が加わってくることになります。
安全性向上から生産性向上につなげていくために、チェック基準に照らし合わせて安全確認を行い、ひっかかる項目を減らしていくことが重要なこととなるでしょう。