工場は、自分の土地であっても勝手に建設することができません。
なぜなら周辺環境を守るために、法律的に工場建設を禁じている土地があるからです。一例ですが、工場建設の際には、その工場が関連する法律の範囲内かどうか、確認しながら手続きを進めていく必要があります。工場の大きさ、工場の緑地の割合など、建築主が勝手に決めることができません。工場建設に関する書類を整え、届けを出して進めることが求められます。
では工場を建設するには、具体的に何をしていけばいいのでしょうか。
最低限知っておくといい3つの関連法について述べた上で、その後に必要な手順を考えていきましょう。
工場を建設するときに知っておくべき3つの法律
都市計画法
一言で簡単にいうと、都市の健全な発展などを目的とする法律です。
都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする法律です。(都市計画法 第1条 <目的>より)。都市計画法は建築基準法と密接な関係を有し、都市における建築等を規制します。例えば、建ぺい率や容積率は都市計画で決められます。
建築基準法
誰でもどんな建物でも建てていい、規制が一切ないとなったら…。どうしましょうか?建築基準法は無秩序な建築を避けるために、その土地に建てられる建物の条件を細かく定めている法律です。
建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする法律です。(建築基準法 第1条 <目的>より)
建築基準法では、建坪率や容積率以外の、前面道路幅員等に応じた制限も加わってきます。
工場立地法
工場周辺の環境を守るために、「四日市公害裁判」をきっかけに作られた法律です。工場を建てる段階から、周囲の環境との調和を図り、公害の発生しにくい体制を作ることを目的としています。工場立地が、環境保全を図りつつ適正に行われるようにするため、工場立地に関する調査の実施、工場立地に関する準則の公表及びこれらに基づく勧告、命令等を行い、これらを通じて国民経済の健全な発展と国民の福祉に寄与することを目的とする法律です(工場立地法第1条<目的>より)。
建設予定地が決まっていると仮定して検討
建設予定地の土地区分はご存知ですか?その土地区分に応じて、建設できる工場の業種が異なります。ここでは、都市計画法で定められた土地区分について、簡単に説明します。
<住居地域>
住むことにこだわりを持って分けられた地域のことです。戸建ての住環境にこだわった低層住宅から高層マンションまで、住環境を7種類に分類しています。
第1種・第2種低層住居専用地域…戸建(低層住宅)の良好な環境を守るための地域になります。基本的に住宅用途の建物しか建築できません。ただし、第2種では小規模な店舗(※兼用住宅であること)の建築が認められています。
第1種・第2種中高層住居専用地域…戸建というより5階建くらいのマンションが立ち並ぶイメージの地域です。居住者のために必要な中規模のマーケットや病院が建築可能です。学校、病院などは建てられますが、住宅以外の店舗などの用途の建物には制限があります。
第1種・第2種住居地域…低層・中高層住居専用地域よりも、建物の用途制限が緩められた地域です。イメージとしては都市での暮らしを満喫できるよう、スポーツ施設やホテルなどの建築も許可される地域になります。また小さな工場も建てることができます。
田園住居地域…田畑と市街地の共存を図る目的で2018年に追加された用途地域です。イメージとしては田園の中で、生活するために必要な設備が整っている地域です。幼稚園や診療所など生活に必要な最低限の建築物が建築可能です。
準住居地域…道路沿いで、自動車関連施設や大規模なホームセンターなどといった商業施設が建築可能で、業務兼住宅といったイメージの地域です。「準住居」という名ではあるものの、第二種住居地域以上の種類の用途の建物が建てられます。
<商業地域>
近隣がつくかつかないかで、想定する街のイメージに大きな違いがあります。
近隣商業地域…近所の商店街で、日常の買い物ができ、子供や老人もよく買いに来るというイメージです。住環境によくなさそうな飲食店や風俗関連の店舗は建築できません。
商業地域…イメージとしては大きな駅を中心とした繁華街です。商業施設を中心とした地域になります。いろいろな用途の建物を建築できます。ただし人が集まる場所なので、大きな工場や危険度の高い工場は建てることはできません。
工場を建てることができるのは、基本的には以下の工業地域です。例外的に、商業地域の一部で建てることができますが、建設予定の工場の規模、業種など、建設予定の工場が法律的にいうとどの工場なのか確認しましょう。
<工業地域>
工場の広さではなく、危険度で用途制限をします。
準工業地域…町工場と住居が混在している地域です。危険な薬品などを使用・貯蔵する工場以外の建物が建築可能です。13種類の用途制限の中で一番用途制限が緩い地域となります。
工業地域…働くための都市空間のイメージです。社員のための住居施設の建築は認められていますが、基本的にそれ以外は建築することができません。準工業地域で禁止された危険なものを取り扱う工場の建築が可能で、大規模な工場も建てることができる地域です。
工業専用地域…工場用途以外の建物はほとんどありません。生活より、工業の発展を優先して考えられた地域です。
土地区分の確認が終わりましたら、次に、建築基準法を確認
建設する場所によって、建てられる建物の敷地や構造、設備及び用途に関する守るべき最低基準が決まっています。着工前に「建築確認」や工事を開始してからの「中間検査」、そして、完成した後の「完了検査」など、段階に則った手続きや申請が求められるので、専門家と相談しながら進めましょう。
工場立地法の対象となる工場かどうか、確認
以下の業種に該当し、以下の規模の工場が工場立地法の対象となります。
対象となる業種…製造業、電気供給業、ガス供給業及び熱供給業(水力発電所、地熱発電所及び太陽光発電所 は除く)。
対象となる規模が 敷地面積 9,000㎡以上 又は 建築面積 3,000㎡以上の工場
ここに当てはまる工場については、敷地内に必ず「緑地」を設けることが求められます。また、敷地全体に対する緑地が占める割合も制限されています。
加えて、生産施設面積(工場建屋と屋外プラント)や緑地の整備状況について、工場が立地している都道府県、市に対し届出をする必要があります。届出してから90日間は着工不可なのでご注意ください。但し、これに関しては自治体の判断で短縮可能となります。建設予定の自治体に問い合わせしてみてください。
まとめ
建設予定の工場とその場所が、法律的にどこに該当するのかを、照らし合わせて確認することが、重要であることはご理解いだけましたか。
ただ、法律用語は一般で使われている意味と少し異なる場合もあります。自己理解にとどめず、専門家に相談しながら進めてくださいね。