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いつ来てもおかしくない、南海トラフ地震。想定される被害と耐震対策について。ーその1

いつ来てもおかしくない、南海トラフ地震。想定される被害と耐震対策について。

超巨大地震―「南海トラフ地震」が刻一刻と近づいていることが警告されているのはすでにご存知でしょう。
静岡県の駿河湾から九州の日向灘にかけての海底に、日本列島の陸側のプレートの下に海側のプレートが沈み込んでいる溝のような地形「南海トラフ」はあります。このプレートの境界に少しずつ「ひずみ」がたまり、限界に達すると一気にずれ動き、巨大地震が発生するといわれており、これが「南海トラフの巨大地震」です。
政府の地震調査委員会は、マグニチュード8から9の巨大地震が今後30年以内に「70%から80%」の確率で発生すると予測しており、被害は、四国や近畿、東海などの広域に及び、東日本大震災を大きく上回ると想定しています。
この巨大地震が起きると各地を激しい揺れが襲うとともに、沿岸部には巨大津波が押し寄せるといわれています。津波による浸水面積は東日本大震災の倍近く、1000平方kmを超えると考えられており、静岡県では津波の高さが最大30mを超えると予想される地域も存在する。これは、一般的なビルの8~9階分の高さに相当するものです。
「いつか来る」と言われて久しいこの大地震。政府によって発表される発生確率は年とともに上昇しており、未曽有の大災害は次第に「必ず来る」ものへと、その認識が変わってきている。
今回は南海トラフ地震が起きた時の建物による想定被害、建物の耐震性をあげる方法、建物耐震チェックシート、すぐにとりくめる耐震対策について2回に渡って紹介したいと思います。

 

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目次

建物による想定被害

南海トラフ地震が起こった場合、建物が全壊及び焼失するなどの被害は最大で約 2,386 千棟と想定されています。また、その被害をもたらすものとして地震の揺れ、液状化、津波、急傾斜地崩壊、地震・津波火災によるものなどが考えられています。

上記の地震の揺れ、液状化、津波、急傾斜地崩壊、地震・津波火災により、家屋やビルなどの建物の倒壊などの被害が引き起こされます。また、倒壊はしなくても屋内であれば家具の転倒や落下物、屋外であれば壁の崩落などによって大ケガをしたり被害が引き起こされます。

建物が被害をうけることでおこる人的被害もかなりの規模になるという想定がされています。南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの試算によれば、その想定死者数はなんと32万人にのぼるといわれています。これは、「過去最悪」と言われた1923年に発生した関東大震災における死者数(10万5000人)の3倍以上の数字です。100年前とは違い、建物の耐震・免震化が行われた現在でこの被害が想定されているのだから、南海トラフ地震の破壊力は計り知れません。

また、被害地域を東海、近畿、四国、九州の4つに分けた場合、建物被害は 4 つの地方がそれぞれ大きく被災するケースで大きな差はないですが、人的被害は津波による被害で地方によって大きな差が生じており、東海地方が大きく被災するケースが他のケースより大きい傾向となっています。

建物の耐震性をあげる方法とは?

想定される被害を考えると、来たる南海トラフ地震に向けて、建物の耐震性をあげることは重要なことといえます。耐震性とは、建物に伝わる地震のエネルギーに対してどのように対処するのかによって、耐震・制震・免震の考え方に分けることができます。

「耐震」とは粘りと強さで揺れを抑えること、「制振」とは建物に入った地震のエネルギーを吸収して揺れを抑えること、「免震」とは建物に入る前に地震のエネルギーを吸収して揺れから逃れることを指します。どの方法でも既存の建物の耐震性をあげることに有効です。

「耐震」補強とは?

いわゆる「耐震補強」には、鉄骨ブレースなどを取り付けたり、柱を太くしたりして柱の粘り強さを増す「柱補強」と、建物の強さを増す「壁補強」(壁の増設や増打ち)があります。
これらはそれぞれを単独で考えるのではなく、耐震診断の結果から,建物の性状を把握し、使い勝手や施工計画なども考慮して総合的に補強方法を検討します。また、補強工法によってその効果は異なります。

(方法その1) 既存建築物の開口部に鉄骨ブレースを設置することで、耐力とねばり強さを向上させる方法がそのひとつです。その特徴は以下の通り。
・軽量で施工性がよい。
・採光・換気・眺望確保が容易。
・コストは鉄筋コンクリート壁よりかかる。
・剛性は鉄筋コンクリート壁に比べ低くなる。

(方法その2)柱のねばり強さ(靱性)を改善するために、せん断補強やスリットの設置する方法があります。その特徴は以下の通り。
・平面計画に影響が少ない工法。
・比較的短工期ですむこと。
・狭い場所でも工事が可能。

(方法その3)柱増打ち補強、鋼板巻き補強で柱外周を補強することで、ねばり強さと圧縮強さを向上します。ピロティ柱に有効な補強方法です。
・繊維巻き補強は、柱外周を補強することで、ねばり強さが向上します。更なる短工期化に有効な補強方法です。
・耐震スリットの設置は腰壁、たれ壁等に耐震スリットを設けて、変形性能を改善します。

(方法その4)建物外周部にRC壁、鉄骨ブレース、フレーム架構などの補強部材を配置することで、耐力と剛性を向上させます。その特徴は以下の通り。
・建物内部の使い勝手が変わらないこと。
・『居ながら補強』工事が可能。
・外観ファサードの再構築もできること。

(方法その4)隣接する建物を連結し、それぞれの地震に弱い部分を補い合うことで、耐震性能を向上させる方法もあります。その方法としては、弱い建物同士を連結して助け合う方法、弱い建物に強い建物を連蹴るして助ける方法などがあります。特徴は以下の通り。
・連結することで、単独に補強するより合理的で経済的な補強が出来る。
・建物同士の地震時の衝突防止対策としても有効です。

「制震」補強とは?

「制震」補強とは地震の揺れのエネルギーを吸収する「制震装置」を利用する方法で、「制震レトロフィット」といいます。制振装置にはオイルダンパーや柔らかい鋼材など様々な種類のものがあります。建物が大きく変形したとき生じる建物の上層と下層の間の変位差や速度差をダンパーによって吸収させて建物の損傷を防ぎます。

この方法は鉄骨造の様に変形性能が高く柔らかい建物に向いている補強方法です。最近ではRC(鉄筋コンクリート)造のものにも適用されることもあります。

もっとも普及している工法は任意の階に設置した制震装置に、大きな地震力を負担させ、大地震のエネルギーを吸収する構造に改修する方法です。既存建物に組み込んだ制震装置が耐力を向上させ、かつ地震エネルギーの吸収により建物に作用する地震力を低減させます。
特徴は以下の通り。
・補強個所が少なくて済み、経済的。
・補強個所が少ないので、外部だけの補強も可能。
・既存建物の構造形式に左右されないこと。
・地盤、階数による制約を受けないこと。

「免震」補強とは?

建物の基礎や柱に「免震装置」を取り付けて、地震の揺れを建物に伝わりにくくする方法で「免震レトロフィット」といいます。既存の建物の基礎や中間階に免震装置を設置し、外観や内装、設備などを損なうことなく建物の固有周期を長くして地震の揺れの影響を受けにくくします。地震の揺れの影響は、取り付けた「免震装置」が吸収するため、基本的に免震層より上の部分の補強は大幅に不要になります。

「免震」補強は設備や機器、什器への影響も大幅に低減するため、地震後の機能維持を図ることが可能です。その特徴は以下の通り。
・地震による揺れを大幅(1/3~1/5)に低減。
・多くの場合に免震層以外は補強せずに済むこと。(居ながら工事が可能)
・軟弱地盤上の建物には適さないこと。
・建物周辺にスペースが必要。

「耐震」「制震」「免震」どれがいいのか?

どの、改修を選ぶかはそれぞれの期間や予算などの条件によりますが、それぞれの順位を表すとすると以下の通りになります。
・居ながら工事の適用の対応順は一般的には 免震補強>制震補強>耐震補強 の順になります。
・改修後の使い勝手としては一般的には 免震補強>制震補強>耐震補強 の順が良いとされています。
・工事のコストは一般的には 免震補強>制震補強>耐震補強 の順で高くなります。
・工期は免震補強だけが他の補強と比較すると工期が長くなる場合が多いです。

以上の点を考慮しながら、ご自身の条件にあった耐震工法を選ぶのがよいでしょう。

その他の耐震

建物の柱、壁だけでなく、耐震を考えなければならない場所があります。屋根と塀がその代表的なものです。この項では、その二つの耐震について紹介します。

屋根の耐震

コンクリートのビルや、工場のような建築では屋根はあまり考えなくてもいい部分ですが、一般住宅においては屋根の耐震はかなり重要なことになります。
屋根が地震と大きな関わりがあると言われているのは、建物の一番上にある屋根が重いと、大きく揺れたときに柱や壁に多大な負荷がかかり、倒壊につながる可能性があるからです。築年数は古い住宅では、瓦屋根を使用しているケースが多くがあります。瓦屋根は他の屋根材と比較すると重く、地震の揺れの影響を受けやすいという特徴があります。

他の屋根材のスレートや金属の屋根と比べると、たしかに瓦屋根は重いものですが、だからといって、耐震性が低いというわけではありません。建物の耐震性能は、壁や柱の量や配置、構造材がしっかり接合されているかなどで決まります。したがって、重いと言われる瓦屋根でも、それをしっかりと支えられるようバランスよく壁や柱が配置され、構造材も補強金具などで強固に緊結されていれば問題はありません。

とはいえ、自宅にこのような地震対策が施されているかどうかは、1981年に施工された「新耐震基準」が目安になります。これによって、耐震基準の大幅な改正が行われ、全ての建物に高い耐震性が求められるようになりました。

1981年以前に建てられた建物の耐震性は旧耐震基準によるものと推測されます。したがって、自宅の耐震性に不安がある場合は、まず竣工が1981年以前かどうかを調べ。以降であれば、新耐震基準が適用されていることになりますが、これ以前の住宅で瓦屋根の場合、今よりも厳しくない耐震基準の建物の上に重い屋根が乗っていることになります。「新耐震基準」以前に建てられ、その後追加の耐震補強をしていない住宅は、何らかの耐震対策をしたほうがいいです。瓦屋根の家の場合は軽い屋根材に葺き替える屋根リフォームをすることで耐震性を高めることができます。

住宅用の一般的な屋根材で、軽いものといえば、人工スレートとガルバリウム鋼板の金属屋根が一般的です。それぞれの特徴は以下の通りです。

・人工スレート
薄い板状の屋根材で、同じ面積で比較すると瓦の半分以下の軽さで価格もリーズナブル。耐用年数は20年から25年程度で、原則10年おきに塗装メンテナンスが必要です。

・ガルバリウム鋼板
サビに強く耐久性を高める加工をした金属の屋根材。同じ面積で比較すると瓦の8分の1の軽さです。価格は人工スレートよりもやや高めになります。耐用年数は40年程度で、10年おきに塗装メンテナンスをするのがよいとされていますがが、グレードによっては、塗膜の保証がある製品もあります。

古い瓦屋根は、これらの屋根材に葺き替えることで、大幅に軽量化することができます。とはいえ、耐震補強の方法は屋根リフォームだけに限るものではありません。どこにどのような補強をするべきかは、実際に耐震診断をしてみることが重要です。

ブロック塀の耐震

2018年6月18日に起きた大阪北部地震では、小学校でブロック塀が倒れて児童が犠牲となったことは記憶に新しいことと思います。他にも、1978年宮城県沖地震では犠牲者の64%がブロック塀の倒壊が原因となっており、1995年阪神淡路大震災でも約2500ヶ所でブロック塀の被害が発生したといわれています。

普段は倒壊の心配がなさそうなブロック塀も、耐震化されていなければ大きな地震の時には重大な事故を引き起こす凶器になります。耐震を考えるときにはブロック塀についても必ず併せて考えましょう。

屋外のブロック塀は、常に外気に接する環境のため雨水等の進入による鉄筋のサビ、ブロックのひび割れ、モルタルの劣化による目地のひび割れなどで、経年と共にかなり劣化しています。日本建築学会の調査によると、ブロック塀の耐久年数は規定を守られた良い設計・施工のものでも約30年とされています。

さらに、設計基準に沿った施工指導が適切になされるようになったのは10年前ぐらいからとされ、耐用年数30年が経過していなくても古いものには構造規定が守られていない危険の潜むブロック塀が多く存在しているといわれています。

地震時に倒壊の恐れがあると認識しつつも、撤去できない場所や隣地境界線上で手を付けられないなどの理由から現実には補強対策が遅れています。では、ブロック塀をどのように耐震化すればよいのでしょうか?一般的に行われる補強工事の一例をご紹介します。

・コンクリート控え壁を作る
部分的にはつり、鉄筋を掛けて配筋し型枠を組んでコンクリートを打つ。
・鋼製支柱をたてる
あらかじめ鉄工所などで製造した鋼製支柱を設置する。

いずれも大掛かりな工事です。さらに、施工後はスペースが狭くなり利便性が失われます。
また、境界線上や塀の裏側に狭くて人が入れないといった問題で工事そのものができない場合もあります。もし、可能であればブロック塀を撤去し、他の素材で塀を建てるという選択肢も視野にいれることもありだと思います。

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まとめ、耐震にあたって重要なこと

耐震とは、一見して弱そうに見える「部分」だけを補強しても建物の全体としての耐震性能が向上するわけではありません。建物全体のバランスで補強しないと、かえって被害が出る場合があります。
ある建物がどれくらいの耐震性能を持っているかは、粘り強さと耐力で判定しますが、これを主に決定するのが壁や柱などの「耐震要素」の配置です。これらを総合して全体としてバランスのとれた補強を行わないと、相対的に弱くなった部分に力がかかり、被害を大きくする可能性があります。
そのためにも重要なのが耐震診断とチェックになります。その2ではその点を紹介していきたいと思います。

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