いつ来てもおかしくない、南海トラフ地震。想定される被害と耐震対策について。ーその2

いつ来てもおかしくない、南海トラフ地震。想定される被害と耐震対策について。ーその2

かならず来るといわれている南海トラフ地震が起きた際の想定される被害と耐震対策について2回にわたって紹介していますが、今回はその2となります。その1では、建物による想定被害、建物の耐震性をあげる方法についての具体策などを取り上げました。
その2では建物耐震チェックと耐震診断、すぐにできる耐震対策について紹介していきます。

耐震診断はまだあまり普及していない

耐震診断とは、大きな地震に対して建物が耐え得るかどうかの検査をすることです。耐震性能を正しく診断し、適切な耐震補強を施すことは、大地震から人々の生命・財産を守る事になります。
現在、耐震補強、改修が必要な住宅は全国に推定1866万棟あると言われています。これらの住宅の改修を推進するには、まず多くの家屋の耐震診断が不可欠です。しかし、耐震診断の認知度はまだまだ低く、必要な耐震改修かが進んでいないのが現状です。
この項では、耐震診断以前に自分でチェックすることとそれに続く耐震診断とその重要性について紹介します。

まずは10個のポイントで自分でできる耐震チェック

セルフ耐震チェックにおいて判断基準の参考になるのが、国土交通省が監修している「わが家の耐震診断」(財団法人 日本建築防災協会)です。こちらに照らし合わせてみると、ある程度の耐震性がチェックできます。どのような項目があるのか、その中身をみていきます。

1)昭和56年(1981年)以降に建てられている
建築基準法が大きく改正されたのが1981年(昭和56年)です。 そして2000年(平成12年)に再び建築基準法が改正され、震度6クラスの地震でも倒壊しない耐震住宅の基準が義務付けられました。 このことから、2000年以前に建築された建物で、特に1981年以前の建物は耐震診断を実施する必要があるといえます。

2)今まで大きな災害に見舞われたことはない
台風などの水害で床下浸水・床上浸水、火災、車の突入事故、過去の大地震、崖上隣地の崩落などの災害に遭遇したことがある場合は要注意です。災害に遭遇したことがある場合、その都度修復を行っていても建物自体に外見からではわからないダメージが蓄積されている場合があるからです。

3)増築していない。または建築確認などの手続きをして増築した。
増築したことがある場合、既存部の適切な補修や改修、接合がきちんと行われているのかをチェックしましょう。ズレや隙間が無いか、床鳴りや沈み込みは無いか、確認が必要です。

4)傷んだ箇所はない。または痛んだところはその都度補修している。
傷んだ箇所とは主に外壁や基礎のヒビ割れを指します。そこにひび割れは無いか。屋根の棟・軒先が波打っていないか、柱や床が傾いていないか、建具の建付けが悪くなっていないか、白アリの被害にあっていないかなどをチェックしましょう。また、お風呂場や台所などの「水廻り」は、水漏れまたは染み込みによる劣化が多いです。特にタイル張りのお風呂場は、注意が必要です。

5)建物の形はほぼ長方形、複雑な形ではない。
ご自宅の1階が長方形に近い形であるかをチェックしましょう。長方形に近いほど、地震に強い形であるといわれています。

6)一辺が4m以上の大きな吹抜けはない
1辺の長さが4m以上の吹き抜けは、地震時に建物をゆがめる危険性があります。

7)2階外壁の直下に1階の内壁または外壁がある。または平屋建てである。
2階壁面の直下に1階壁面がない場合、床を通じて2階の地震の力が1階の壁に流れ、大地震時には床から崩壊する危険性があります。

8)1階外壁の東西南北どの面にも壁がある。
東西南北、どの面にも壁はありますか? 住宅の場合、同じ木造住宅の中でも、壁の多い部分は揺れが小さく、壁の少ない部分は揺れが大きくなります。 どの方角にも、バランスよく壁があることが重要です。

9)屋根材は比較的軽いものである。または瓦など比較的重い屋根でも1階に壁が多い。
1階に壁が多ければ、瓦など比較的重い屋根葺材を使っている場合でも、建物損壊の危険性が低くなります。 重い瓦などを使用していて、1階に壁が少ない場合は建物損壊の危険性が高まりますので、注意が必要です。壁と窓の割合を確認すると、わかりやすいかも知れません。

10)鉄筋コンクリートの布基礎・ベタ基礎・杭基礎など基礎が強固である。
基礎の種別を確認してみましょう。 鉄筋コンクリートによる布基礎・ベタ基礎・杭基礎のような堅固な基礎は、その他の基礎と比べて丈夫です。

ここまであげたチェック事項に3つチェックが入った場合は、資格をもった企業や建築士による耐震診断をおすすめします。次にその耐震診断について紹介します。

プロによる耐震診断のすすめ

既存建築物の耐震性能を評価し、「耐震改修が必要かどうか」を判断するのが「耐震診断」です。「耐震診断」は、建物の構造ごとに、国土交通大臣が認定した方法が定められています。耐震診断結果の報告が義務付けられた建物の耐震診断は、建築士の資格を保有し、国土交通省に登録された講習を受けている人しか行うことができません。
その「耐震診断」ですが、①予備調査→②本調査→③耐震性評価という流れで行われます。

①予備調査
予備調査では、設計図書や計算書、増改築の履歴など、診断に必要なデータを集めます。
②本調査
本調査では、現地で構造躯体(基礎、基礎ぐい、壁、柱)や部材の劣化の状況をチェックします。
③耐震性評価
耐震性評価では、①予備調査や②本調査の結果をもとに、耐震診断に使われる諸数値を用いて、耐震診断計算を行い、その結果はIs値(構造耐震指標)で表されます。

評価の指標であるIs値が0.6以上であれば、想定する地震に対して、所定の耐震性を確保していると判断されます。Is値が0.6未満の場合は、耐震性能をあげるための改修工事の検討にとりかかる必要があります。

工場などの建物、条件によっては耐震診断は義務です。

2013年に行われた耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)の大幅な改正により、不特定多数の人に利用される旅館や病院、大型店舗などに耐震診断の実施と結果報告が義務化されました。昭和56年よりも昔に建てられた建造物は耐震診断義務化の対象となります。
耐震診断が義務の工場の条件ですが、処理場もしくは危険物の貯蔵場の用途に供する建物を除く工場の場合で、「3階以上かつ1,000平方メートル以上」に該当した場合に、耐震診断が必要となります。
また危険物の貯蔵場または処理場の用途に供する建物の工場の場合は、「500平方メートル以上」もしくは「1階以上かつ5,000平方メートル以上」の条件に当てはまった場合、耐震診断をする必要があります。「1階以上かつ5,000平方メートル以上」の条件については、工場敷地境界線から一定距離以内に建てられている建築物に限るという注意点もあります。
専門業者によって行われる耐震診断としては一般住宅と同じように既存設計図面と現状の建築物との整合性の確認をすることから始まります。この作業を通して診断が必要と判断された場合は、実際の場所で地盤の不均一性、地耐力の不足、偏荷重、基礎形式といった違いによって生じる不同沈下の測定が行われます。また鉄筋コンクリート部分については、外部からの炭酸ガスの侵入による中性化や、耐震補強工事による切断事故を防ぐために欠かせない鉄筋探査も行われます。
上記の条件に当てはまらなくも、地盤の弱い地域に建てられた工場倉庫や、既に床に傾きが生じている場合は、早めに耐震診断を受けることをおすすめします。またコンクリートの一部が剥がれている、もしくは壁にヒビの入っていたり、増築が頻繁に行われている工場倉庫についても、同様です。

地震のとき工場、倉庫、事業所などに潜む危険とすぐにできる地震対策

工場や倉庫に潜む『地震による危険』について考えていきましょう。工場や倉庫などで、地震対策を怠ってしまった場合の危険とそれを防ぐ対策について紹介していきます。

1)落下
スチール棚など、商品保管用の設備の固定がない場合、地震によって棚が大きく揺れてしまい、商品が落下することが考えられます。この場合、落下した商品の破損はもちろん、下で作業している従業員が下敷きになるなどの人的災害もあり非常に危険です。この物の落下を防ぐには3つのポイントがあります。
1.棚の上を段ボールや備品を置く場所にしない。
2.ファイルや本など、災害時に飛び出す危険のあるものは戸のついた棚にしまう。
3.電子レンジやポットなど、棚に置いている小型電化製品はきちんと固定する。

物の落下は、災害時だけでなく普段の勤務中にも十分起こりえることです。普段からチェックし、気をつけるようにすることで、日常的な事故を防ぐことにもつながります。

2)転倒
壁などに固定されていない棚は、地震の揺れによって容易に転倒してしまいます。棚の転倒は、商品の破損、従業員が下敷きになり怪我をする、転倒した棚が機械にぶつかり製造用の機械が壊れるなど、様々な危険があります。
転倒防止対策を行う必要のあるオフィス家具類には次のようなものがあります。
・棚やロッカーなどの収納家具
・デスク
・コピー機、サーバーラックなどの電子機器
・パーテーション

東京都が行ったオフィス家具の耐震テストにおいて、震度6相当の揺れを起こすと、棚やロッカー、パーテーションなど背の高い家具の大半が転倒しました。その他にも、デスクの引き出しが飛び出した、棚に収納していた備品が落下した、といった状況もおきるといわれています。

オフィス家具の固定は安全のために必須です。家具を壁や床に固定する転倒防止グッズを適切に使って、被害を防ぎましょう。
そのオフィス家具ですが、棚のような背が高いものからデスクのような背の低いものまでさまざまです。東京都が行ったオフィス家具の耐震テストによると、1つのグッズだけを使用しても転倒をほぼ防げないことがわかりました。家具の上下を別々の転倒防止グッズで支えるのが、家具の転倒を防ぐ有効な方法です。そのためのオフィスでも使える転倒防止グッズをご紹介します。

家具の転倒は、災害の際に避難経路をふせぐ原因にもなります。しっかり固定をする前に、家具が避難の妨げにならない場所に配置されているか確認しましょう。確認ポイントは2つです。

【L型金具】
棚やロッカーの上部と壁、柱を連結して固定する金具です。ネジやボルトによって固定するタイプが多いのですが、中には粘着剤を使用しているものもあります。

壁や家具を傷つけずに固定したい方や、建物が賃貸で、壁に穴を開けられないという方にオススメです。床固定金具と組み合わせて併用すると固定の効果が大きくなります。
ロッカーや棚など高さ120cmを超える家具が複数並列している場合は連結金具を使い、連結、固定したほうが安全です。連結金具のボルトは直径6mm以上のものがおすすめです。

【床固定金具】
オフィス家具を床に固定する金具です。ロッカーや棚、デスクなど定位置が決まっている家具は、床に固定することで地震時の転倒を防ぐことができます。L型金具など壁固定ができるツールと併用しましょう。

【突っ張り棒】
家具の上部と天井の間に設置して、家具の転倒を押さえる棒状の器具です。壁や家具を傷つけず、お手軽に設置できるのが特徴。天井と家具の強度が弱いと効果が見込めないため、設置する前に必ず強度を確認してください。次に紹介するマットやプレートと組み合わせて使うと転倒防止に有効です。

設置の際は、一つの家具の左右に一本ずつ垂直に立てることを徹底してください。天井や家具に接している面が大きいものほど耐震性があるので、購入の際はそういったタイプのものを選ぶのがオススメです。

【耐震マット】
家具の底面と床を接着させる粘着性のゲルです。ゲル状のマットを切り取り、テレビや置物など軽量、小型の家具の底面に貼り付けて、モノの落下を防止します。マットの大きさは家具の大きさと比例させるのがポイント。有効期限に注意して使用しましょう。L型金具、突っ張り棒との併用が有効です。

【ストッパー】
家具の下に敷いて転倒を防ぐ器具です。テープ状のプレートを家具の下に敷いて倒れにくくする、ストッパーの役割をもつもの。
半透明の合成樹脂でできており、粘着剤を使用していないため、床や家具に傷がつきにくいのが特徴です。ハサミやカッターで好きな長さにカットできるので、家具の大きさにあわせて自在に調整が可能です。

3)移動の危険
巨大地震が発生した場合には、数百キロあるような大型機械でも容易に移動してしまいます。場などで使用される大型機械は非常に重量があるため、地震によって機械が移動してしまい、従業員が挟まれるといった事故が考えられます。

それだけで周辺で作業を行う従業員の身を危険にさらしてしまうものですので、注意が必要です。
工場や倉庫内では、重量があるものを移動しやすいようにキャスターが取り付けられている物が多いです。
このような設備は地震によって簡単に移動してしまうことから、避難通路などをふさいでしまう等のリスクが存在します。
キャスターの固定確認をかならずしましょう。しっかりと移動防止用の対策を行い、事故を未然に防ぎましょう。

4)オフィス家具や機械のレイアウトの再確認
工場やオフィスでの地震対策の基本はレイアウトを整えることです。棚やロッカーなど大型の家具、機械を出入り口付近に置いていないか、家具や機械などが通路が120cm以上確保される場所に設置されているかを確認しましょう。

また、工場などでは避難時に邪魔にならないよう配管やダクトを最短距離でつなぐ機械のレイアウトを整えましょう。また、災害時に通路や出入り口をふさいでしまう場所にオフィス家具などがある場合は、他の場所に移動させる、小さめのものに買い替えるなどと工夫が必要です。

まとめ

今回は、建物耐震チェックと耐震診断、すぐにできる耐震対策について紹介してきました。
その1の冒頭にも触れましたが、超巨大地震、南海トラフ地震がいつおこってもおかしくないとと言われています。地震が起こってからでは、地震対策は間に合いません。会社や工場、そこで働く人々を守るために、耐震対策に真剣に取り組むことをおすすめします。

そして、工場や倉庫における地震対策は、様々なことを進めなけれいけませんので、まずは施設や設備の現状把握のためにチェックと耐震診断からスタートしてみてはいかがでしょうか。

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