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大規模災害後の建物を調査する2つの理由

相次ぐ災害でいま、日本中で被災された方がいます。
大阪での地震、岡山県・広島県・愛媛県では大雨による水害です。道や線路に土砂が流れ込み、まだ十分な支援が受けられない地域もあります。
日本は大規模な地震を経験して、それに伴う法の改正や対策がされてきましたが、水害に関してはまだ十分とはいえません。
そして、今回問題となったのは情報の格差です。救助・物資の支給・ボランティアまで、状況が把握できず、長く辛い思いをされた方もいます。SNSを利用して発信されるメッセージに正直、驚きました。

こうした状況の中でも、被害にあったことを嘆いているばかりいられません。
インフラの整備、残骸の後片付けなど、被災者は慌ただしいです。
では、人だけでなく、被害にあった建物はどうなるのでしょうか?二次災害の危険があるため、壊れかけた建物をそのままにはできません。しかし、家主は後片付けに追われて建物まで手が回らないのが現状です。こんな時は、どうするべきなのでしょうか?
今回は、誰がどのようにして対応していくのかを調べてみました。

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目次

自然災害のあと-罹災証明書

地震・台風・豪雨など自然災害によって建物が倒壊したり、何らかの被害に合ったのが家屋の場合、被害状況を確認して「罹災(りさい)証明書」が発行されます。
この罹災証明書が発行されることで、様々な支援を受けることができます。

  • 修理費用の一部を国や市町村が負担してくれる
  • 生活支援金が支給される
  • 税金・国民健康保険料が減免される

被害状況や所得などにより支給金額は異なりますが、公的支援を受けることができます。さらに罹災証明書の有無によって、仮設住宅に優先的に入れるなど優遇されることがあります。

この調査は基本的に被害に合った各市町村の職員によって、行われます。
しかし、例外として大規模災害になった場合は、「応急危険度判定士」が被災地に入り調査をします。こちらについては、のちほど説明します。

自然災害のあと-一括「全壊」とは

この罹災証明書が発行されるまでに、通常なら1週間程度の時間がかかります。
災害の規模が大きい場合には、混雑してさらに時間がかかります。

そんな中、2018年7月に起きた岡山県倉敷市真備町では、被害に合った地域の約2,100棟を一括して「全壊」と判定しました。
テレビでも連日報道され、住民の方々が救助を待つ姿は記憶に新しいところです。

しかし、なぜ十分な調査もしないままに「全壊」判定ができたのでしょうか?ここには、過去の災害が教訓として活かされています。
2011年3月11日に起きた「東日本大震災」のあと、2013年に「被害認定基準の運用指針」が改定され、「一括判定」が定められたからです。さらに、今春には床上1.8m以上の浸水被害だと見るだけで分かる場合は、調査なく「全壊」と判定できることが含まれました。

これにより、早急な罹災証明書の発行を可能とし被害にあった住民の負担を、早く軽減することができます。

応急危険度判定について-誰が判定するの?

建物を安全に維持していく責任は、その建物の所有者または、管理者にあります。
これは、自然災害後も同じで、安全を確認しなくてはいけません。

しかし、現状として被害に合った直後にその義務を果たすことは、無理な状況であるのは誰にでも分かります。そこで市町村が応急対策の一環として、「応急危険度判定」を実施します。

応急危険度判定士とは?

近年の日本における自然災害は、大規模であり被害地域も広いため被害を受ける建物も多くなります。
所有者などに変わり応急危険度判定をする市町村にも限界があります。

そこで活動のお手伝いをするのが、「応急危険度判定士」です。
一級建築士、二級建築士、木造建築士のいずれかの有資格者であることを条件に、都道府県で実施される講習会に参加して、認定登録を行います。
一般財団法人日本建築防災協会によると、2017年3月までに108,195名が登録されています。

活動は、被害対策本部の要請を受けて、被災した建物の応急危険度判定を行います。

※応急判定士の活動は地震災害のみで、その他の災害での活動は行いません。詳細はこちら

応急危険度判定について-調査方法は?

市町村や応急危険度判定士が行う調査は、建物の外部から目視となり、人命に関わる二次災害を防ぐことが目的となります。
主に調査されるポイントです。

  • 沈下・傾斜・破壊の程度
  • 外壁・窓ガラスの落下
  • 付属設備の転倒

大規模な地震となれば、調査対象の建物が多くありますが、応急危険度判定士の場合、2人1組となり1日に15棟を目標に調査されます。

調査が終わった建物には、3ランクに分けられ判定結果が掲示されます。

  • 危険(赤色)・・・非常に危険な状態のため、立ち入り禁止
  • 要注意(黄色)・・・立ち入ることはできるが、何らかの危険性がある
  • 調査済(緑色)・・・使用可能だが、安全が保証されるまでの調査はできていない

応急危険度判定について-判定を行う理由

調査方法を見ても分かるように、その内容は決して十分なものではありません。
では、なぜ調査をするのでしょうか?
理由は2つあります。

被災者に正しい情報を提供する

判定結果は、住人はもちろん近くを通る人にも分かる所に掲示されます。
地震が収まっても余震の心配はあり、残った建物は見るだけで損傷が分かるものばかりではありません。被災者は、外観は変わらなくても、建物内部の柱や梁がどうなっているか?人が住むだけに耐えられる状態なのか?いち早く知りたいはずです。

危険であれば、立ち入ることも近くを通ることも避けます。正しい情報を提供することで、二次災害を防ぐことができます。

被災者の不安を減らす

自然災害は脅威です。地震だけでも、ここ数年の間に何度も経験しています。
一度の地震で、当たり前だった日常生活を失い、被災者の喪失感は計り知れません。
そんな不安を抱える被災者を、少しでも安心させるために、専門家による調査を行うのです。

応急危険度判定士の活動は、あくまでもボランティアです。
活動に賛同する専門家たちによって行われます。誰かの役に立てること、助けてくれる人がいること、被災者の安心に繋がるといいですね。

被災宅地危険度判定制度

この制度は、1995年1月の阪神・淡路大震災での宅地被害を教訓に創設された協議会です。
活動は地震だけに限らず、大規模な自然災害にて宅地の被災状況を確認して、二次災害を防止することを目的としています。

応急危険度判定と同様に、都道府県に認定され「被災宅地危険度判定士」が2〜3人でチームを組んで、調査します。
調査結果も3ランクに分けられ宅地に掲示されます。

  • 危険宅地(赤色)・・・立ち入るのが危険な宅地
  • 要注意宅地(黄色)・・・立ち入れるが、何らかの危険が予測される
  • 調査済み宅地(青色)・・・被災した規模は小さいと考えられる

こちらの活動も、被災者に役立ちますね。

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まとめ

応急危険度を中心に、大規模災害後の対応についてまとめてみました。
調べていく中で分かったことは、大規模災害=地震を前提としていることです。地震大国といわれる日本ですし、過去には大きな地震が起こっています。法の改正もそうした地震の後にされています。
しかし、近年は台風や大雨、竜巻による自然災害により被災している方々がいます。「地震・水害・風害」それぞれに対応した運用指針を示されるように願います。

また、被災者に追い討ちをかけるように、建物の修繕が義務だとして早急な対応を迫る詐欺が横行しています。このようなことはありませんので、怪しいなと思う時は必ず、行政に問い合わせてください。
まずは、日常生活を取り戻すことが最優先です。

被災者の方の1日も早く、平穏な生活に戻れるようにお祈り申し上げます。

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