どんな建物にも「耐用年数」という寿命があります。
法令に従い、安全性の高い建物を建築しても、その状態で維持していくことは不可能です。
そして、地震大国の日本において、耐震性、耐久性などは常に研究がされ、さらに強化な建物を建築しているので、性能としても衰えていきます。
そんなことを考えると「建物は、建設した時から劣化していくしかないのか?」と考えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか?
もし、そうだとすると、誰も建物を建設しようとは思わないはずです。何かしら建物を維持していく方法があるから、建物を建設しています。
その方法が「修繕」です。建物を維持していくためには、経年劣化してきたとこを修繕していくことで安全な建物を維持していくことができます。
今回は、こうした安全な建物を維持していくために修繕をする目的と、建物を修繕する時のポイントをご紹介します。
建物の寿命「耐用年数」とは
建物の大きさに関わらず、建設をされた建物を安全に使用できる期間が設けられています。それが「耐用年数」と言います。
しかし、建物の価値は人それぞれです。建物を利用する人、建物をサービスとして提供する人など、立場が違えば建物の価値も異なってきます。
そこで、耐用年数は3つの価値で分けて考えられています。
法的耐用年数
この場合の法的とは、国税庁を指します。予め定められた減価償却資産の耐用年数です。
建物には、主に二つの基準によって耐用年数が決まります。
・建物の構造
・用途
倉庫や工場が、鉄骨造など耐久性に優れた構造であっても、建物の劣化に影響するような物を取り扱っていれば、耐用年数は短くなります。
経済的耐用年数
建物の経済的価値を基準とした耐用年数です。
倉庫や工場もそうですが、建物は貸し借り、売買されるものです。
価値としては、やはり新しい建物、最新の設備を備えたものが高く評価されます。
つまり、年数を追うごとに価値は下がっていきます。
中古物件に築年数が表記されているように、値段を決めるポイントにもなっています。
物理的耐用年数
食べ物に賞味期限があるように、建物の使用期限です。
建物として使用できなくなるまでの耐用年数を表しています。
年数が経てば老朽化は進みます。使い方次第では、早く老朽することも考えられます。
また、見た目的には問題なくても建物の内部で腐食や劣化が進んでいれば、倒壊してしまうこともあります。
この3つの耐用年数は別々の角度から見ていますが、どれも建物にとっては重要なポイントを押さえています。
これらは、建物の状態を見て決められます。つまり、修繕をすることで耐用年数を延長させることも可能だといえるのです。
倉庫・工場を修繕する2つの目的
倉庫・工場は建設された後、定期的なメンテナンスを行います。これは、建物の構造や用途に関係なく、すべての建物を対象としています。
なぜなら、誰もが経年劣化していくことを知っているからです。
そして、あってはいけないことですが、設計図通りに建設されているか、不備やミスはないかなどをチェックするためでもあります。
では、具体的に修繕をする2つのポイントをご紹介します。
建物を良い状態で維持する
これは、物理的耐用年数からみた目的になります。
つまり「建物を長期的に利用する」ことを考えて、倉庫・工場の修繕を行うということです。
良い状態とは、建設された状態に近い状態をいいます。建物の汚れも劣化もない状態を長く維持することができれば、必然的に耐用年数は長くなります。
建物の安全性を維持する
建設後、メンテナンスをして修繕をしている建物は「安全性の高い建物」だということがいえます。
建設する前、設計の段階で耐震、耐久、耐火など様々な性能を考えて建物は設計されます。
しかし、これらも年月が経てば劣化が始まります。
建物の劣化は、建物の価値として評価が低くなるだけではありません。性能が下がるため、安全性の低い建物として評価されるようになります。
地震、水害、火事など、災害はいつ起こるか分かりません。つまり、修繕をしなければ、倒壊してしまう危険を抱えたままとなるのです。
利用する人たちを守るため、時には災害時に役立つ建物として利用できるように修繕を行うのです。
失敗しない4つの修繕ポイント
倉庫・工場において修繕は必要ですが、ただ修繕を行えばいいというものではありません。
一般住宅とは違い、倉庫・工場のように建物が大きくなれば、修繕も計画的に行う必要があります。
まずは、始める前に建物に関する情報を整理しておきましょう。
・建設された年
・過去に修繕した場所
・破損状況
・環境による劣化
このように、建物について確認しておきこと、気になることを全て書き出してみましょう。関係者だけでなく、実際に利用している人や従業員にも話が聞けると、さらに詳しい状況が見えてきます。
様々な意見や状況が確認できると4つのカテゴリに分けることができます。
・外装
・内装
・建物の構造
・設備
これらのカテゴリ別にポイントを確認してみましょう。
外装を修繕するポイント
建物の外装というのは、主に「屋根・外壁」をいいます。
雨、風、紫外線、塩害などによって建物の内部より劣化の速度は非常に早いです。
また、劣化が始まると人の目に止まるようになります。汚れやひび割れ、錆や破損などを指摘されるようになるので、修繕の必要性を痛感します。
こうした指摘が始まることには、内部への水漏れなどが心配されるのでいち早く修繕する必要があります。
つまり、外装の修繕は、定期的に行うように計画を立てておくことをオススメします。放置しておくほどに修繕する範囲が拡大されていくため、費用がかかってしまいます。
内装を修繕するポイント
内装もまた、人の目に付くので指摘されやすくなります。また、汚れや破損を放置しておくと、それがそのまま会社のイメージとしてお客様に印象として残ってしまいます。
また、内装は環境による劣化というよりは、建材と用途や用具との相性にもよります。
傷が付きやすい床の上に机や棚を設置すれば、移動させるときに傷は付きます。
設計の段階から、作業内容や設備の配置と相談しながら、修繕しやすいものを選ぶのがポイントです。
構造を修繕するポイント
建物の構造とは、柱・梁・基礎などを指します。
使用される建材は、構造や性能によって違うため耐用年数も異なります。
しかし、その建物にも共通して言えることは、劣化を放置すれば必ず倒壊するということです。
建物の強度は、利用者には分かりません。また、ひび割れや汚れがあったとしても建物の内部で劣化が始まっているとは想像ができません。
だから、構造の修繕については専門家に診断を依頼することが、最も安全への近道といえます。
誰に依頼していいか分からない時には、建設を依頼した建設会社を通じて専門家を紹介してもらうことをオススメします。ネットや口コミだけで決めてしまうと、詐欺や手抜きの原因となりやすいので、信頼できる人からの情報を頼りにしてください。
設備を修繕するポイント
倉庫・工場において設備の中で最も修繕を必要とするのは電気と水道です。
品質管理、室温など、商品や従業員のために明るさや温度を管理する必要があるため、電気は不可欠です。配線や漏電など普段から確認してください。
水も同様です。汚染や水漏れなど、こちらも普段からのチェックが必要です。
これらは、普段から気にしていないと、当たり前なこと過ぎて異変に気付けない可能性があるのです。
当たり前なことほど見落としがちですし、使えないとなれば非常に困ります。
まとめ
今回は、倉庫・工場の修繕についてご紹介しました。
建物の用途は変わらなくても、建設時の価値が永久的に続くということはありません。
どんな部分でも部品でも必ず劣化が始まります。
物理的に耐用年数を伸ばすことで「修繕がきちんとされている」という安心感を利用者に提供することができます。
この価値は非常に大きいです。
見て見ぬふりをして修繕を怠れば、大きな事故の原因になったり、建物の価値を落としていくだけになります。
どんなに面倒でも修繕はしっかりと行なっていきましょう。