建設業界が抱える悩みの一つに、人手不足が挙げられます。
2020年に開催予定だった東京オリンピックに向け建設ラッシュだった時も、人手不足によって、工期が間に合うのかという状況でもありました。
大乗様々な方法で人手不足を解消しようと、国土交通省が「建設キャリアアップシステム」を「導入しました。全国規模での運用から1年になったいま、改めてシステムの概要とメリットをご紹介します。
建設キャリアアップシステムとは
建設キャリアアップシステムとは、技術者一人ひとりの資格や現場や作業の経歴を登録して、就職や正当な評価に基づく報酬を得るために活用できるシステムとなります。
このシステムの導入によって、これまで個々には知られていなかった資格や経歴を知ることができるので、実際の建築現場で必要する人材を見つけやすくなるなど、技能者だけでなく、事業者側にもメリットがあるので、国土交通省はシステムの導入に期待を寄せています。
建設キャリアップシステムが導入された理由
このシステムが建設業界に導入された理由は2つあります。
問題を解決して建設業界を盛り上げていきたいところです。
建設業界の高齢化と人手不足
建設で働く人を世代別に分けてみると50代が多く、60代、70代でも現場作業をする人がいます。
それに対して20代は全体の1割程度と言われています。
建設業を希望する若者がいないのは、「厳しい・汚い・危険」というイメージが強いためです。
技術を繋いでいく若者がいないことで、業界は人手不足になり高齢化が進んでいます。
正当な評価で報酬が得られない
どんな業界でも資格を有する人は評価が高く、その評価にあった報酬を得ることができます。
建設業界では、資格があることで機械操作ができたり、特殊な作業ができることがあり、有資格者がいることで建設できることがあります。そのため、評価が高く、資格手当など報酬に反映されます。
しかし、通常の作業や経歴などは評価されにくく、個々に評価され報酬が得られるというよりは、一つの職種として評価、報酬が決まるケースがほとんどです。
システムの登録されること
実際に、どんな情報を登録して利用できるのかを流れをご紹介します。
技能者と事業者に分けられる
建設キャリアップシステムには、「技能者」と「事業者」に分けて登録することができます。
また、事業者の中には「下請」と「元請」に分かれています。
情報の登録(技能者・事業者)
最初にシステムに必要な情報を登録します。
技能者は、基本情報に加えて、社会保険の加入と健康診断の受診歴の有無が必要です。
また、自身の評価基準となる保有資格、研修・講習への参加歴などを登録します。
事業者は、企業情報はもちろん、建設許可情報、社会保険の加入について登録をします。
カードの取得(技能者)
システムへの登録が完了すると、ICカードが配布されます。
ICカードには2種類に分けられて、いずれかが届きます。
・一般カード・・・登録した全ての人が対象となるカード
・ゴールドカード・・・作業や経験が豊富な登録基幹技能者が対象となるカード
カードを取得するのは技能者ですが、事業者はICカードで建設現場の入退場管理に利用することができます。
※現在は、一般カード(白)とゴールドカードの2ですが、いずれは白・青・シルバー・ゴールドの4つに分けられる予定です。
現場の登録(事業者)
事業者(元請)が、工事内容を入力します。
・現場の工事名
・工事内容
施工体制の登録(事業者)
事業者(元請・下請)が仕事内容を入力します。
・次数
・作業内容
・立場
就業履歴の蓄積(技能者)
就業履歴には、各現場などに用意されたカードリーダーにかざすことで自動的に行われます。
事業者側が事前に登録した現場の内容が、一定のルールによって技能者の就業履歴として蓄積されます。
また、取得した資格、講習の有無についても登録され、証明ともなります。
システム導入に必要なもの
建設キャリアップシステムを導入するためには、2つのことが必要となります。
登録料と利用料
建設キャリアップシステムを利用するためには、技能者、事業者ともに登録料が必要です。
技能者登録料・・・インターネット申請2,500円・窓口・郵送3,500円
事業者登録料・・・資本金に応じて11段階に別れる
管理者ID利用料(事業者)・・・2,400円/ID
現場利用料(現場・元請事業者)・・・3円/就業履歴
カードリーダー
カードリーダーは、現場での就業履歴を管理して蓄積していくためには必要です。
カードリーダーは市販のもので対応ができます。(建設キャリアップシステムのホームページにて紹介がされています)
システムの閲覧について
登録した情報を閲覧するためには、システムにログインする必要があります。
ログインにはIDとパスワードが必要になるので、管理してください。
閲覧できる情報の一覧はこちらです。
・生年月日
・社会保険加入状況
・職種
・保有資格
・就業履歴
情報は閲覧だけでなく、出力することも可能ですし履歴書としても活用できます。
情報の扱いについて
技能者の基本情報と就業履歴情報を閲覧できるのは、限られています。
・技能者本人
・所属事業所
・技能者が入場している現場(事業者)
・システムに登録している他の事業者(閲覧制限あり)
システムを利用するメリット(技能者)
技能者が、システムを利用することで得られるメリットをご紹介します。
自己アピール
自分が持っている資格や経験は必ず活かされます。
これまで履歴書に書くぐらいで、アピールができなかった技能者でも、事業者が閲覧しているので、伝わりやすくなります。
賃金交渉ができる
これまで、賃金は職種・年齢などを基準に決められたというのがほとんどです。あまり個々に賃金を考えるという習慣がありませんでした。
システムを導入することで、保有資格、就業履歴を賃金交渉のアイテムとして正当な評価を得るきっかけができます。
モチベーションが上がる
資格や就業履歴が認められ、賃金に反映されたら技能者自身のモチベーションは上がります。
お金がすべてとはいいませんが、賃金が上がることで仕事の取り組みも変わっていくはずです。そうなれば、現場としても良い成果に繋がります。
システムを利用するメリット(事業者)
技能者とは違ったメリットが事業者にもあります。
身元が保証される
建設業界では、会社に所属する技能者ばかりでなく、一人親方として個々に仕事をもらいながら働く技能者もいます。
そのため、現場から現場へと仕事をする一方で、社会保険への加入率が著しく低い業界でもありました。
国土交通省でも社会保険に加入をしていない事業者を排除する方向で取り組みが進められています。
システムには社会保険に加入しているかの有無が必須となっているため、身元が保証される技能者を獲得することができます。
人材育成できる
人手不足の中でも、建設業界に就職する若者もいます。また、別の業種から転職する人もいます。
こうした人材を逃さないためにも、きちんとした研修や現場での経験が積めるように整えたいと考えます。
システムには、保有資格や就業履歴が登録されているので、現場での活躍とともに人材を育成できる技能者をスカウトも可能です。
まとめ
建設キャリアアップシステムについてご紹介しました。
どんな職種でも資格や実績、経験を武器に賃金の交渉をしたり、キャリアアップを行なっています。しかし、建設業界は、それを活かしきれていない部分もあり、離職率が上がっているのも事実です。
今後、新規の建設案件の他に、老朽化が進む建屋をどうしていくのかも課題であるため、建設業界には多くの人材が必要となります。
このシステムで少しでも改善されていくことに期待したいですね。