柱脚とは、読んで字の如く柱の足下のことです。その施工形式には、三つの型があることをご存知でしょうか。
その三つの型とは、「露出型」「埋込み型」「根巻き型」です。
それぞれの特性を知ることで、どういった建物に、どの形式を使うのが最適なのかを知りましょう。
露出型(1/3)
三つの形式のうち、一番ポピュラーなのが「露出型」です。
露出柱脚は、二つの形式とは違って、コンクリートの中に埋め込まれずに、地中梁天端に、アンカーボルトで結合されています。基礎コンクリートの上に位置する鉄骨柱のベースプレートを補強して、曲げ耐力、剛性を確保する型です。
バネ剛性が小さいため、露出型の柱脚は、建物が柔らかいという特徴があります。
力の伝達メカニズムが比較的わかりやすく、設計も他の二形式に比べて簡単です。
埋込み型(2/3)
基礎部分に鉄骨柱を埋め込むのが、この「埋込み型」です。
鉄骨柱を基礎部分まで埋め込むことで、柱脚自体を固定端にできます。三つの形式の中で、一番個定度が高い型です。柱脚に作用してくる曲げモーメントは大きくなりますが、その代わり、上部構造の変形を抑えることが可能です。
また、根巻き型の柱脚と比較して、上部構造の鉄骨部材の断面を小さくすることができます。
根巻き型(3/3)
個定度が高く、最も固い構造をしているのが「埋込み型」。逆に、個定度が三つの中で一番小さく、柔らかい構造をしているのが「露出型」。
「根巻き型」は、この二つの形式の、ちょうど中間的な位置づけの形式です。
中間と言うと、使いやすいイメージが湧くかもしれませんが、実は「埋込み型」や「露出型」よりも、構造的に力の伝達が複雑なのがこの「根巻き型」。そのため、扱いづらい柱脚であるとされています。
剛性を高めるために、基礎となる梁上にアンカーボルトを施工し、さらに柱径の2.5倍の長さにあたるRC柱をたてます。
基礎部分を全て基礎コンクリートに埋め込む「埋込み型」に対して、「根巻き型」は一階柱脚部に、基礎コンクリートとは別でコンクリート柱を打ち立てた形です。このコンクリート柱を「根巻きコンクリート」と呼びます。
回転剛性が高いため、柱脚に対して曲げモーメントが大きく作用します。その分、柱頭に作用する曲げモーメントが小さくなるため、上部構造にあたる鉄骨部材が小さくできます。
中小規模建築物における3つの形式の比較
現在、ほとんどの中小規模建築物で「露出型」もしくは「埋込み型」が用いられています。
何故かといえば「根巻き型」の場合、建物のスケールに比べて、あまりにも柱の周りが大きくなりすぎるからです。
それではポピュラーであり扱いやすい「露出型」だけではなく、「埋込み型」もまた用いられる理由はというと、何より「露出型」と比べて、意匠上のメリットが大きいことが挙げられます。
アンカーボルトやベースプレートが露出しないために、足元がすっきりするのはもちろんのこと、柱の断面を小さくできるのも大きなメリットです。
また、コスト面でも優秀で、露出型に比べて安く収められます。
ただし、基礎コンクリートを二回打設しなければならないため、工期が長くなることに注意が必要です。
もう一点抑えておきたいのが、埋め込んだ鉄骨柱と、基礎梁鉄筋が干渉しあって、かぶり厚が適切に取れない事態を避けるために、水平ハンチを鉄筋に設けるなどの、設計上の配慮が必要となる点です。
ハンチの分だけ柱周りの配管などを離さなければならないため、注意しましょう。
以上の点さえ気を付ければ、「露出型」に勝るとも劣らない「埋込み型」の利点を活かすことができます。
露出柱脚の押さえておくべきポイント
露出型が柱脚の形式の中で最もポピュラーであることは既にお伝えしました。
それではここからは、露出柱脚の押さえておきたいポイントをいくつかご紹介していきましょう。
露出柱脚の既製品
現在多くのメーカーが、露出柱脚の既製品を販売しています。
メーカーごとに特徴がありますが、いずれも原則として責任施工のため、構造に信頼がおけます。建方の精度も確保しやすくなり、更には、基礎コンクリートとの定着性も、製作ものの柱脚に比べて優れているため、基礎根伐り深さを浅くすることができます。
ただし、各メーカーで基礎柱形の寸法やボルトの長さなどは異なるため、使用する部材を他メーカーの製品に交換する場合は、再度構造設計が必要になるので、注意が必要です。
現在多くの現場で採用されているのが、ハイベース(日立建材)やベースパック(旭化成建材)です。メーカー側が性能を明確にしていることが、人気の秘密でしょう。
柱脚廻りの寸法は、柱脚に対して求める性能により決まってきます。
3層の住宅を例にしてみましょう。
3層の住宅で多いのは、露出柱脚の既製品と、200mm角の角形鋼管という構成です。その場合のベースプレートの寸法は、360mm。ボルト頭のレベルは、基礎コンクリートの天端にプラスして165mm。そして、ベースプレートを受ける基礎柱形のサイズは、550mmとなります。
既製品を用いない場合や、既製品でもメーカーによっては多少寸法に差が出ますが、それでもほとんど違わないといってよいでしょう。
柱脚を設計するのは構造設計者が主に担当しますが、意匠側が思い描いた通りの納まりを実現するためには、これらの寸法などを踏まえて、意匠と構造をうまく両立していくのが重要です。
露出柱脚の二つの構造形式
2000年、建築基準法で柱脚の性能基準が改正されました。
それまで、露出柱脚の構造形式は、固定柱脚と、ピン柱脚に分かれていました。
固定柱脚とは、柱脚に曲げ耐力や曲げ剛性をもたせる柱脚の形式で、ラーメン構造と呼ばれる梁と柱とを剛接合する構造で用いられることが多い形式です。
一方、ピン柱脚とは、引張力、圧縮力、せん断力を基礎に伝える柱脚の形式で、ブレース構造で使われます。
これが改正により、露出柱脚は回転バネを考慮した上で設計しなければならなくなったため、すべて「半固定形式」となりました。
とはいえ、半固定方式の中にも、「固定に近い半固定」と「ピンに近い半固定」があります。そのため、2000年以前と同じように、「固定形式」「ピン形式」という名称がつかわれることもあります。
こうしたピンに近い半固定方式は、半地下のケースに有用です。
住宅に半地下を設ける場合、H形鋼柱を地下階床より立ち上げたRC壁の上に載せる形式が多くあります。そのとき、RCの壁厚は、柱のベースプレート寸法を踏まえて、少なくとも柱径にプラスして 50mm以上は必要になってきます。しかし、RC壁の多くは、通常200〜250mm厚程度です。そのため、鉄骨柱の断面寸法によっては、柱脚が納まらなくなる可能性が出てきます。躯体重量の増大や、意匠上の納まりなどを考慮すれば、単純に壁を厚くすれば解決する問題ではないのは明らかです。
そこで、「ピンに近い半固定方式」が活きるのです。
しかしこの方式でも、アンカーボルトと、ブレースを取り付けるガセットプレートと、柱脚の間の寸法を確保するのが難しくなるなどのデメリットは残ります。
まとめ
柱脚の形式について、それぞれ理解は深まりましたでしょうか。
どんな形式を選んでも、メリットも、デメリットも存在します。
しかしそれぞれのメリットとデメリットを知ることで、よりふさわしい選択はできるはずです。
知れば知るほど、構造面でも意匠面でも、より優れた建物になることでしょう。
柱脚の基礎知識はこちら記事を参考にしてみてください。