どんな建物を建設する時でも、必ず必要になるのが設計図です。
例えば、一般的な家屋であればご自身や家族の希望があるでしょうから、それを設計士に伝えて図面を起こしてもらうのもそれほど苦労はされないでしょう。
しかし、倉庫や工場の建設を考えた場合にはどうでしょうか?すでに用途は決まっているでしょうから、それを可能としてくれる倉庫になればいいという思いだけが大きくなってしまうのではないでしょうか?
そこで今回は、倉庫の設計図についてご紹介します。どんなところにポイントをおいて設計すると、建設後に「良い倉庫」として納得ができるのか?倉庫設計に欠かせないポイントを確認していきましょう。
大前提!倉庫は木造でななく鉄骨造で建てるべし
設計図を考える前に、良い倉庫を建設したいなら木造ではなく鉄骨造で建ててください。
理由は「柱」です。
木造建築は構造上、柱の本数が増えてしまいます。これは、地震に備えて建物の強度を高めるためです。ですから一定の間隔を空けて柱を建てると、広い空間を作り出すことができないのです。
そもそも、倉庫は商品を保管するための建物ですから、柱が多くあると置く場所が限られてしまうので、本来の役目を果たすことができない可能性も出てきます。
まずは、広い空間を使用する倉庫として、倉庫は鉄骨造で作るところから考えてください。
柱が作業の邪魔をする
倉庫において柱が増えることは、ただ単に商品を置くスペースが確保できなくなるだけではありません。
もう一つ鉄骨造での倉庫建設をオススメしたい理由は「作業の効率化」です。
倉庫は商品を保管して、いずれ出荷をしていきます。この一連の流れで人やフォークリフトが作業を行います。
後ほどお話しますが、こうした流れがスムーズに行える倉庫ほど、倉庫内の作業効率は上がっていきます。
柱が少ない方が動きやすいのは、誰にでも理解できるでしょうから、あとはその空間内での流れを考えていくだけです。
鉄骨造は空間を広くできる
鉄骨造では、基礎となる地盤をしっかり整えてから柱を立てるため、本数が少なくても建物を維持することができます。
そして、作り出したい空間に合わせて構造を整えることができるから、倉庫内で広い空間を作り出すことができます。
木造と鉄骨造の構造の違いは、どちら良い悪いというわけではありません。大切なのは「何を建設するのか?」です。それに合わせて構造を選び、設計図を作成していくというのはが理想的なのです。
そもそも設計図が必要な理由
建物を建設するためには、設計図が必ず必要となります。
理想を形にすることで見えてくる問題点や改善することでさらに良くなることが思いつきます。
設計士が作成して、クライアントを含めた関係者でアイディアを出し合うことも一つのコミュニケーションにもなります。
建設後のイメージができる
世の中には、頭でイメージすることを文章や形に表現することが苦手という人が多いです。
ですから、建設業者との打ち合わせで上手く伝えられないという人も多いはずです。
設計士は、一度話を聞き設計図を作成します。いきなりイメージと一致することはなくても、そこから話を膨らませていくことも修正することもできます。
言葉を形にすることで、建設後のイメージがしやすくなるのは大きなメリットです。
働きやすい空間作り
倉庫建設の設計図は、商品の保管場所、動線において建設後のイメージを膨らませていきます。
ほとんどのケースは事業のために建設されます。いかに倉庫を有効活用するのかが大事です。
では、なぜそこまで動線にこだわるのか?ここの疑問を持たれる方も多いはずです。
実は、動線を考えるのは作業効率化を上げることで、無駄なコストを削減することにもなるからです。
例えば、倉庫=収納といった、ここだけを意識していると、商品はきっちり運び入れることができます。より多くの商品を保管することができます。けれど、収納だけを意識していると、商品を出荷する時に時間がかかってしまいます。探して、運び出すという動線に不便が生じるようになります。
つまり、どの作業をするにしてもスムーズな動線を心がける方が、倉庫でのコスト削減につながるのです。
倉庫設計で良い倉庫になる3つのポイント
ここからは、さらに倉庫設計において良い倉庫、使い勝手の良い倉庫になるポイントをご紹介します。
商品の配置を最初に決める
広い倉庫内で、まず考えるべきなのが「商品の置く場所」です。
事業で使用する倉庫のほとんどは「商品を保管して出荷する」という流れを担っています。
取り扱う商品も一つではありませんから、置くいちをただ決めるというよりは「動線」を意識した配置を考える必要があります。
例えば、商品のカテゴリー別に置くのは分かりやすくていいのですが、それでは倉庫内では不向きなことがあります。最も重要とするべきは出荷です。人気商品の売れ筋であれば出荷される機会は増えます。逆に、シーズン商品であったり、定番で安定した商品であれば、出荷される機会は全く違います。
場所が倉庫であるということ、保管と出荷のバランスを考えて商品配置をすると上手くいきます。
移動動線を考える
保管から出荷までの流れにポイントがあることが分かると、一連の作業の配置を決めていくことができます。
倉庫での一連の流れはこのようになります。
・入荷
・検品
・入庫
・保管
・出庫
・梱包
・出荷
これらに合わせて配置を決める時には、動線を考えると分かりやすくなります。
例えば、倉庫の従業員で行う作業と外から来る業者が絡む作業、どちらを倉庫内で行い、どちらを倉庫の出入り口付近で行うかは一目瞭然です。
さらに考えていくと、倉庫内でUターンするような動線は避けたいということです。行ったり来たりの行動は地味に無駄なことです。それによって、他の作業員の仕事を邪魔をすることも考えられます。
動線は奥から手前へ、前進する流れで考えると効率が上がり各作業がスムーズに勧められます。
倉庫で働くのは人だけじゃない
倉庫内のレイアウトを考える時に、商品を置かない通路幅を設けます。これは、倉庫内で作業をする従業員のために必要な部分となります。
しかし、ここで問題となりやすいのは「倉庫内で働くのは人だけではない」ということです。じゃあ、誰が働くのか?といえば、作業をサポートしてくれるフォークリフトです。
重い商品、多くの商品を一度に運ぶ時に役に立ちます。
実は、通路幅を設計する時に、フォークリフトのことを忘れてしまうケースがあるのです。人が通る幅よりも広くスペースを確保しなくてはいけません。
あとで気づいたら、その時に対処すればいいと思われがちですが、角が曲がりにくかったり、商品が置ける個数が減ってしまったりと、他で問題が生じるようになります。
こうしたことも地味にストレスとなりやすいので、設計図を作成する段階から通路幅を考えてみましょう。
そして、模型を作成する場合には立体的に確認することができますから、より丁寧に確認してください。
まとめ
今回は、倉庫設計における良い倉庫を建設するためのポイントをご紹介しました。
ただ広いスペースがあればいい、商品が保管できたらそれでいい、倉庫がシンプルな建物だけに安易に考えがちです。
だから、設計にも時間をかけたくないという方もいらっしゃるでしょうが、良い倉庫として稼働させるためには、ここが最も重要な部分になることを忘れないでください。
そして、必ず動線に沿ったシュミレーションを行ってください。平面の設計図から立体的になった時にイメージがガラリと変わります。
一度でうまく行かせようとはせず、何度でもトライ&エラーを繰り返すことで良い倉庫になっていきますよ。