2011年3月11日は、東北大震災が発生した日です。
今年で7年となりますが、いまなお仮設住宅に住んでいる方も多くいらっしゃいます。
津波や原発事故から、私たちは何を学んでこれからの人生にどう活かすのか?家族や仲間と向き合って考えてみるのもいいかもしれません。
最近では、火山活動も多く報告されています。自然災害の恐ろしさを目の当たりにしています。
そして、日本は地震の多い国です。津波の原因も地震によるものです。
今回は、地震に備えて建築物に対する耐震がどこまで対策できているのか、考えていきます。
日本の建築基準法
日本で建物を建設する時には、さまざまな条件をクリアしなくてはいけません。
そのルールを明記しているのが、「建築基準法」です。
この法律の中には、建物以外にも、敷地や構造、設備に関して基本となることを定めています。
そして、私たち国民の命、健康などを守ることを目的とされています。
建築物で怖いことは、天災により倒壊してしまうことです。住む家を失うような状況は、被害に遭われた方々にしかわかりません。
そのためにも、この建築基準法に定められていることを守ることは、最低限度必要なことです。
また、建物の建設に関しては、消防法でも定められたルールがあります。
過去の事故でもあった、都心のビル火災で避難口に荷物があり逃げ遅れたというのは、消防法では違法とされています。
改正を重ねる耐震基準
耐震基準は、極端な言い方ですが大きな災害が起きる度に内容を見直しています。
自然の脅威は私たち人間の想像以上です。まだまだ万全な対策ができているとはいえませんね。
建築法規の歴史
日本で初めて建築法規が定められたのは、1920年(大正9)です。
建築基準法の原型ともいわれますが、当時は木造住宅をメインとして内容がまとめられています。
そして、関東大震災の翌年1924年(大正13)には耐震について初めて法規されました。
日本でも鉄筋コンクリートの建物が珍しくない時代になってきた中で、大震災の教訓を活かして、「設計震度」などを取り入れ、建物の強度が意識されています。
その後、昭和に入り何度と改正を繰り返しましたが、1981年(昭和56)に現行の耐震基準が施行されました。
この基準がある一定の水準を満たしているのでは?と、意識づけられたのが、1995年(平成7)に発生した「阪神・淡路大震災」の時です。
多くの犠牲が出たこの震災では、約21万棟の家屋が倒壊したと言われ、その中で約8割が建物の倒壊による圧迫死であり、さらに約9割が木造建築であったと国土交通省が報告しています。さらに倒壊した建物の多くが、現行の耐震基準の施行前に建てられた建築物でした。現行の耐震基準で建てられた建築物は、比べてみると被害は小さかったようです。
現在も耐震に関すること、地盤調査の義務付けなど、さまざまな視点から改正が続けられています。
耐震の基準
建築基準法で定められている地震の規模についてです。
- 中規模の地震動でほとんど損傷しない
- 大規模の地震動で倒壊・崩壊しない
少し曖昧な表現で書いてあります。どの程度の地震なのかわかりにくいですね。
国土交通省では、以下のように説明してあります。
- 中規模の地震動でほとんど損傷しない → 震度5を想定
- 大規模な地震動で倒壊・崩壊しない → 震度6〜7を想定
震度5以上は、実際に経験がない人たちでもテレビで見る被害状況から、その悲惨さが伝わってきます。
工場と耐震について
工場は「特定建築物」として指定されています。
特定建築物とは、不特定多数の人が利用する建築物であり、災害時に避難場所として利用する建築物のことをいいます。工場以外にも、病院・ホテル・学校などが対象とされています。
(対象となる建築物の用途と規模についてはこちら)
住宅と違い、特定建築物は大規模な地震が発生した時に、一時的な避難場所として多くの人たちを守る目的があります。
- 地震発生直後、自宅まで帰宅が困難な場合
- 自宅にいることが危険だと判断された場合
こうした人たちの助けになるべく、耐震診断・改修工事を行う必要があります。
建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)
1995年(平成7年)に施行、さらに2005年(平成17年)改正耐震改修促進法が施行され、耐震診断と改修工事を加速させることを目的としています。
この法律には、建築物の耐震化を強化するべく具体的な数値目標を掲げています。同じ国内であっても風土や環境は全く違うので、国土交通省、都道府県が計画を作成して、活動しています。
義務ではなく努力義務
建築物の耐震強化に向けた法律の制定が進む中、こうした耐震診断や改修工事については所有者の努力義務とされています。必ずしも行う必要はないということです。(1981年(昭和56年)5月以前に建設された建築物については、義務化されています)
工場・会社・社員を守る
阪神・淡路大震災、東北大震災、熊本地震など、数十年の間に日本では大規模な災害が続いて発生しました。こうした時、真っ先に考えるのは自分や家族の安全ですが、社員を抱える経営者は会社のことも考えなくてはいけません。
どんなところに注意が必要なのか、確認してみましょう。
建物を確認する
まずは、社屋・営業所・工場などすべての建物がいつ建てられたものかを確認しましょう。
- 1981年(昭和56年)以前の建物
- 震度5度以上の地震に耐えられる耐震補強ができている
過去の大規模な地震では、倒壊したほとんどの建物が1981年(昭和56)以前の建物があったことがわかっています。これを教訓とするなら、早急に改修工事することをオススメします。
避難場所としての準備をする
会社や工場は、社員やその家族に解放する避難場所として機能できるように備えておくと安心です。
東北大震災の際は、都心で交通混乱となり帰宅することができなかった人も多くいました。
- 一週間程度の水分と食料の備蓄
- 医療品・日用品などを保管する
長期的な避難所というよりは、一時的な避難所として必要なものを準備することで十分に対応することができます。
社員いるから事業が続けられる
大規模な地震で、工場建屋や機械に損傷があれば生産ラインは止まってしまい、会社には大きなダメージとなります。しかし、会社の建物や機械だけが会社の財産ではありません。社員の安否確認は重要です。
経営者が、大規模な地震時に最優先されるべきことは「社員の命を守ること」です。
建物の耐震について考え、改修することは、地震に備えるだけでなく社員を守ることにもなります。
社員や社員の家族は、被害に合うことで気持ちも塞ぎがちになります。自宅が倒壊すれば明日への希望も持てなくなるでしょう。こんなときに、経営者が社員にできることを見つけて対応することで、お互いに安心し希望が持てるようになります。
また、工場が稼働することで、被災した地元にも活気が戻りはじめます。日常を取り戻すことが一番の喜びです。
まとめ
ここまで、建築基準法を軸に耐震に対する取り組みを紹介しました。
これは、法律ではありませんが、BCP(事業継続計画)という取り組みが注目されています。
大規模な地震が発生した時、なんらかの被害は避けられません。
このBCPは、そんな状況の中でも「被害を最小限にとどめ、事業をすばやく再開させること」を目的としています。
大規模な地震のあと、工場や会社も地震前と同じ状況に戻るまでには時間がかかります。最悪な場合、工場の閉鎖、就労への意欲低下なども考えられます。
BCPの取り組みを進めることで、これらの最悪な状況を回壁することができます。
ぜひ一度、工場や会社の耐震について社員と検討してみてはいかがでしょうか?