ビルや工場など、建屋の大きさに関わらず建設する際に思うことは、「長く価値を維持して使い続けたい」ということです。
日本に限らず、世界にはおよそ100年以上の前の建物が存在します。長く建物を維持することができれば、当初の利用目的だけでなく、歴史的価値があると評価されるようになります。
しかし、長く存在する建物が評価される一方で、劣化や使い勝手など見えない部分には多くの欠点が存在します。こうした欠点を解消しなければ、長く価値を維持しながら建物を利用することはできません。利用する人がいるからこそ存在させることができるのです。
今回は、建物を長く利用するため、また利用する人のために建物を価値を維持するポイントについてご紹介します。
価値ある建物のポイントは4つ
都心部を中心に、ビルやタワーマンションと呼ばれる高層の建物の建設ラッシュが続いています。
また、都心を少し離れた地域には、広大な土地を購入して工場やショッピングモールなどの建設が目立ちます。
その一方で、過去に建設された建物の修理や修繕が迅速に進められていないことも、日本では問題視されています。
建設の技術の進捗によって、また過去の災害を経験して、長く維持できる建物を建設することは可能となりましたが、価値ある建物のまま存在しているかは不透明です。
実際に、価値ある建物としてそんざいさせるためのポイントを理解しておく必要があります。
長く使うために考える
価値ある建物として大前提でもあるのは、「長く使う」ということです。
これは、建設時だけでなく完成後にも長く使うためのポイントがあります。
初期投資を惜しまない
予算など考慮すべき点はありますが、建設する建物に使用する建材や設備などを長く使えるものを選ぶことです。
どんな建材や設備においても、長く使えば劣化は必ず起こります。
つまり、長く使うことを見通して建設時から計画を立てることが必要となるのです。
例えば、建物にかかる荷重は人だけでなく、重量のある機材なども入ります。
・耐重性、耐久性を考える
・適している建材、設備を選ぶ
・建物など耐久年数を考える
様々な角度から考えると、建設時の初期投資を惜しむことで後々の建物の維持や価値に響くということがわかります。
建物の劣化を確認する
建設計画時に、将来的な劣化の想定をしますが、完成後は定期的に建物の確認を行い、劣化している部分を確認してください。
例えば、天候や天災によるダメージを受けた場合、確認しないまま放置しておくと建物の劣化を早めてしまうことがあります。特に、水まわりや外壁には十分に注意する必要があります。
修理・修繕を行う
劣化だけでなく、汚れた箇所などを丁寧にチェックをしたら、必要に応じて修理や修繕を行ってください。
また、あらかじめ想定していた経年劣化する部分についても計画的に進めてください。
修理と修繕は、建物を長く使うためには、欠かせないことです。どんな小さなことでも、タイミングを間違えることなく取り組んでください。
環境とエネルギーについて考える
建物を建設することで、周囲の環境も変わります。
そんな中で考えなくてはいけないのは、環境とエネルギーについてです。
これからの建物には、地球の温暖化への対応や、周辺への影響を減らす工夫や技術が必要となることを忘れないでください。
建物の緑化
一定規模以上の敷地を有する建建物を新築または増築する場合に、定められた割合以上の緑化を義務付ける制度があります。それを「緑化地域制度」といいます。
この制度は、市街地や建物を周辺において緑を効果的に増やしていくことを目的としています。制度が始まって10年ほど経ちますが、建物に「緑のカーテン」を作ったり、屋上やビルの一部に植物が配置されるようになりました。
最近では、壁一面を緑で覆ったり、数年後に建物まるごと緑で覆われるような設計がされています。
コンプライアンス遵守と美化
現代の建築物には、利便性だけでなく緑を増やしていくことが求められています。これは、緑化地域制度のような制度があるから守るというだけでなく、コンプライアンス遵守として注目され課題となっている背景もあります。
地球温暖化が進む中、近年では気温の上昇により人体に大きな影響を与えるほどになっています。原因は様々ですが、緑が失われていることは大きく影響しています。
そのため、建物や敷地に緑を取り入れること、周辺や環境を考えた美化に取り組むことは、社会的良識のある企業の行動だといえます。そんな建物を建設する会社はもちろん所有するオーナーにとっても評価にも繋がりますし、価値も上がることになります。
自然との共存
これからの建物は、ただ建設するだけでなく、緑を取り入れることで、今後は都心部での人工的な緑地を増やしていくきっかけになることが考えられます。
都心部で見られなくなった生物が生息できる場所を増やし、自然との共存が目的となります。
こうした未来を見据えた建物の設計が求められること、また自然と共存できる都心部での緑化に一役買えるような建物を計画していきましょう。
利用者のことを考える
建物や環境について価値を上げるポイントに続いて、やはり大事なのは、建物を利用する人たちのことです。
具体的に利用する人たちのどんなところを考えるべきなのかご紹介します。
空間作り
どんな建物においても言えることですが、居心地の良い空間つ作りが必要です。
外観や内装がスタイリッシュなデザインであったり、斬新な色使いであっても、なんとなく緊張感がありリラックスできない空間であっては、仕事など落ち着いて作業することができなくなります。
そんな居心地の悪い空間になってしまうと、人が集まることがなくなりオフィスとしても、セミナーを開催するにしても利用するがいなくなってしまいます。
例えば、天井を高くして圧迫感を無くしたり、窓を大きくして光が入るようにしたり、居心地よく癒しとなる空間が、建物の価値を上げていきます。
設備・機能で過ごしやすく
居心地の良い空間作りにも似ていますが、設備や機能面からも利用者が過ごしやすい空間にすることも必要です。
特に、空調や照明に関しては人それぞに好みが異なるため、頭を悩ませるところです。
同じ空間にいても、机の位置や座る場所が違うだけ感じ方が違うので、どのような空調や照明が適しているのか、検討してください。
また、健康面から考えると、換気や空気を循環させる工夫が必要です。コロナ禍において、いま利用する側が最も気にしている部分でもあります。
騒音・振動対策
建物の規模が大きくなったり、高層になっても騒音と振動は気になるものです。
騒音は、外気の音だけでなく、手すりの音や歩行の音なども気になるケースとして挙げられています。
振動は、災害対策はされているものの、意外にも人の歩行による振動が気になるというケースもあります。
大きな音や振動は不安となりますが、こうした僅かな違和感というのは、小さなストレスとして積み重なるため、利用する人たちの心と体の負担になってしまうのです。
災害対策で建物を守る
やはり、建物を価値を維持して長く使えるためにも、災害対策をきちんとすることが最も重要だと言えます。
近年では、水害被害が多く見受けられますが、震度1、2度程度の地震が頻発している地域もあります。こうした災害は日本で建設する以上、避けては通れません。実際に、過去の大災害を教訓にして、建築基準法は何度も改正をしています。
災害対策に万全はありませんが、こうした際に「人を守れる建物」であることが、何よりも建物の価値であると言えます。
建物は、利用する人やオーナーにとって、大事なものであり無くなっては困るものです。
日頃からの点検、修理・修繕にも十分に気を配って建物を維持してください。