「あなたの工場のその騒音対策、正解ですか?その1」では工場建屋の騒音を中心にみてきましたが、その2では、工場で使用している機械別で発生する騒音とその対策を取り上げていきます。
様々な工場で多種多様な機械が使用されていますが、騒音を発生する機械も多くあります。その中でも「金属加工機械」と「空気圧縮機及び送風機」の騒音への苦情が多いと言われています。その他には「木材加工機械」「印刷機械」の騒音へも多少苦情が寄せられるようです。
ここでは以上の4つの機械について取り上げていきたいと思います。
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金属加工機械
金属加工とは、基本的に金属によって金属を加工することを指します。金属同士のぶつかりになるので、そこから耳障りな騒音が発生します。金属加工機械はたくさんありますが、ここでは、中小の工場などでも多く使用され、衝撃性の騒音を発生しやすいプレス機、せん断機、鍛造機についてみていきます。
プレス機械
プレス機械は金属などに強大な圧力を加えて塑性加工(注1)を行うもの。加圧方式の違いから機械プレスと液圧プレスの2つの種類に分けられます。従来は機械プレスが主流でしたが、最近は液圧プレスに変わってきています。ただし、小物のしぼり加工といった作業の適応性や機械そのものの耐久性が高いことから、中小のプレス工場では未だに機械プレスが多く使用されています。
機械プレスの場合、プレス時に大きな金属音が発生します。機械の性質上、稼働中のプレス機械そのものへの音源対策は基本的に不可能です。よって、対策としては機械への防音カバーの設置や工場建屋のしゃ音対策があげられます。
(注意1)塑性加工とは金属などの材料に大きな力を加え形状を変化させて目的の形状に成形すること。
せん断機
せん断機とは、2つの刃によって金属を切断する機械の総称です。刃の形状によって基本的に直刃式と丸刃式のせん断機の2つに大きく分けられます。騒音が大きいのは衝撃が大きいギロチン式の直刃せん断機の方になります。
加えて、プレス機械と同じように稼働中のせん断機そのものの音源対策は難対策としては防音カバーや工場建屋対策に頼ることになります。ただし、せん断機の音は高周波域のものであるため、しゃ音対策や吸音対策によって大きな減音効果が期待できます。
(反対に低音域の音にはしゃ音対策や吸音対策はあまり効果がないと言われています。)
また、切断した金属が自然落下しないように、せん断機にコンベアや斜めの台を設けて衝突速度を下げることでも騒音低減は可能です。
鍛造機(たんぞうき)
鍛造機とは、熱した金属の塊に衝撃を加えて成形する鍛造作業に用いられる機械の総称です。昔はハンマーヘッドの自由落下による打撃が主でしたが、現在は空気圧などを付加してより打撃力を増す方式が用いられています。
鍛造機は中小の工場でも一般的に多く使用されており、発生する騒音が衝撃性でしかも騒音レベルも高いことから、苦情が寄せられる割合が多い機械です。
鍛造機の音源対策としては衝撃音を低減することが試されてきましたが、有効な低減方法は見出されていないのが現状です。
やはり、プレス機やせん断機と同様に、防音カバーや工場建屋対策によって騒音低減を実施します。なお、鍛造作業においては加工材料を熱するための加熱炉が必要であり、それによって工場内の換気をしなければならず、その点が騒音対策にとってはマイナス要因になってしまうことへの配慮も必要になります。
送風機および空気圧縮機
送風機や空気圧縮機もまた様々な工場で多く使用され、騒音を発生させているといわれる機械です。どちらも空気に圧力を加えて圧送する機械で基本的な原理は同じですが、圧力を高める方式として、ケーシング内の羽根車の回転によるターボ型と一定容積内に閉じ込めた空気を圧縮する容積型の2つに分類されます。
このうち、騒音が大きいとされるターボ型送風機とターボ型は圧縮機と容積型圧縮機についてみていきます。
ターボ型送風機
羽根車の回転を利用するターボ型送風機には、羽根の枚数と回転数によって出る回転騒音と空気の乱れからおこる乱流騒音があります。
最近では、羽の形や枚数の変更などで機械そのものの音源対策が進み、低騒音型と称される送風機が市販されるようになりました。
よって、稼働中の送風機の騒音の程度によっては低騒音タイプへの代替えが最善の対策といえます。代替えが難しい場合は、吸込口や吐出口へのサイレンサーの取り付け、本体ケースや接続ダクトの制振及び防音ラギングなどの対策が考えられます。
容積型圧縮機
容積型圧縮機は、圧縮の機構からピストンが往復して空気を圧縮する往復し式と回転式の2つに大きく分けられます。さらに回転式のなかに小型軽量で移動性に富んだ稼働翼式と比較的大容量を取り扱えるスクリュー式の2つがあります。
往復式と稼働翼式は比較的大きな騒音が発生しますが、スクリュー式は騒音・振動は小さく他の形式の圧縮機に比べて低い騒音レベルが示されています。よって、スクリュー式に代替えしていくことが好ましい対策ですが、それが難しい場合は基本的に送風機と同じ対策になります。
ただし、送風機に比べて圧縮機は圧縮に伴う熱が発生するため、金属加工機械で説明した鍛造機と同じように換気を必要とすることがあり、騒音対策としてはデメリットとなる部分もあります。
木材加工機械
木材加工機械には、パルプ製造に関するドラムバーカー、チッパー、砕木機と、製材・木工関連の帯のこ盤、丸のこ盤、かんな盤などがあげられます。この中でも騒音苦情を引き起こすことが多いのは、木工所や材木店で一般的に使用されている、帯のこ盤、丸のこ盤、かんな盤です。これらの機械は、金属加工機械に比べて高回転で作動し、それによって高周波域の騒音を発生します。
騒音対策としては、機種による騒音に大きなばらつきが見られることから、まずは低騒音型の機械を選定することが第一です。しかし、稼働中の機械があってそれが難しい場合は丸のこ盤については刃の交換が有効な対策といえます。
刃先形状が改良された刃への交換や、のこ身にスリットや小さな穴を空けたり、制振材料を貼り合わせるなどの対策が一部実用化されているものがあります。
木材加工では、木材を機械に送り込んだり送り出したりするためのスペースが必要となるため、機械自体を防音カバーで覆うような対策はなかなか難しい場合が多いです。
それに加えて、木材加工機械の騒音の多くは高周波域のもののため、せん断機と同様に工場建屋のしゃ音対策や吸音対策によって大きな減音効果が期待できます。
印刷機械
印刷の方法は、大きく凸版、平版、凹版に分類されますが、今日最も広く普及しているのは平版のオフセット印刷(版から一度ゴムに転写した後に紙へ印刷する方法)です。
オフセット印刷には、用紙一枚ずつに印刷する枚葉印刷機と、ロール状の巻き取り紙に印刷する輪転印刷機があります。
オフセット印刷機には紙の吸着・吹き付けに伴う音・ブロアーの音・紙を揃える音・インキの剥離音・排紙のチェーン駆動音など多くの音が発生します。
しかし、騒音レベルは、金属加工機械や木材加工機械などに比べて高くはありません。それでも、騒音トラブルが発生するのは印刷工場そのものが市街地に立地して住宅などと隣接することが多いためです。
とはいえ、稼働中の印刷機械に対する騒音対策は、印刷の工程が複雑でしかも精密であるため極めて難しく、印刷機が設置されている工場建屋のしゃ音対策が有効な騒音対策となります。
まとめ
ここまで、工場で使われている主な機械の騒音とその種類についてみてきました。すでに稼働中の機械だとなかなか対策を講じるのが難しいようです。新しい機械だと騒音対策を施したものも登場しているようなので、代替えのタイミングで騒音の視点からも機械を選ぶようにするといいのかもしれません。それができない場合は騒音対策その1で触れたように工場建屋対策と組み合わせて考えるようにしてみましょう。
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