新築のビルやマンションなどの建設が続く中で、既存する古い建物が注目されるようになりました。住宅でみられるケースですが、古民家や長屋をリノベーションして居住とする人たちが増えています。
こうした動きは、住宅だけでなく、鉄骨造の建物でもリノベーションをするケースが増えているのはご存知でしょうか?
古くなった鉄骨造の建物を解体せず、できることなら活用したという流れには理由もありますが、その活かした方次第では、古い鉄骨造の建物を選んで良かったという意見もあります。
今回は、古い鉄骨造の建物の現状と活かし方についてご紹介します。
鉄骨造の建物について
鉄骨造の建物とは、鉄骨で骨組みに使っている建物をのことをいいます。
柱や梁に使い、接合部を剛接合することで耐久性が上がります。
住宅などでは「軽量鉄骨造」と呼ばれる建物もありますが、鉄骨造は鋼材の厚みが6mm以上あるものを使用していることを条件の一つとしています。
住宅でも珍しくはありませんが、ビルやマンションといった高層となる建物のほとんどが、鉄骨造で建設されています。
鉄骨造のメリット
鉄骨造で建設メリットは3つあります。
・間取りを広くできる
柱と柱の間隔を大きく空けることができるので、空間を活かした部屋づくりができます。
・コストパフォーマンスが良い
工期が短く、予め別の場所で鉄骨を加工しているので、現場では組み立てるだけです。
・大きな建物が建設できる
鉄骨は、鉄筋コンクリートのように重量が重くありません。そのため、面積の広い土地に大きな建物を建設できます。
鉄骨造のデメリット
鉄骨造のデメリットは3つあります。
・耐火性が劣る
鉄骨は540度以上の火の中では、強度が急激に下がります。
・基礎作りに費用がかかる
建物とは別に、基盤コンクリートの費用が必要となります。
・錆びる
鋼材を使用するので、錆びて柱や梁が経年劣化していきます。
古い鉄骨造を解体する
鉄骨造に限らず、築年数が古い建物を維持して利益を出すことは難しいです。
例えば、古い建物では外壁や内装が汚れていたり、設備が古く使い勝手が悪いイメージがあります。物件を探している時に、検索条件からも除外されがちです。
古い鉄骨造は、工場やビルなどの大きな建物が多くあります。古くなれば上記のようなことはもちろん、耐震性や錆などの問題から、買ったり借りてもらう機会が減ってしまいます。
費用が高い
古い鉄骨造の建物を所有するメリットがないなら、解体してしまうことで解決するのでは?と、多くの人が考えれると思います。しかし、鉄骨造の建物を解体するのにも、問題があるのです。
鉄骨造の解体費用が高いということです。
費用が高額になる原因としては、建物の規模や場所によっても違いますが、作業工程が多いことが挙げられます。
作業工程には、建物を解体だけでなく、基礎コンクリートについても解体が必要ですし、解体時のゴミや埃についても処理があります。
さらに、古い建物の場合に心配されるのは、「アスベスト」が使用されていることです。アスベストは体や環境に悪影響があり、現在では「大気汚染防止法」によって、除去するためには届出をして、専門業者に除去作業を依頼する必要があります。
そのため、アスベスト除去費用が追加されるので、さらに費用が高くなります。
解体費用の目安としては、坪単価で4万円〜4万5000円とされています。住宅や規模の小さい建物でも状況によっては、解体するだけで2000万円ほどになるケースもあります。
これが、ビルや工場のような規模の大きな建物となれば、費用はさらに増えます。
古い鉄骨造を活かす方法
古い鉄骨造の建物を解体するのにも費用がかかるのなら、維持して活かすことはできないのかと考えるのは自然です。
悩みである一方で、古い建物に興味がある人が増えているのはご存知でしょうか?古民家を移築したり、実家を継承して住む人が増えています。そして、鉄骨造の建物も同様な傾向がみられるのです。
リノベーションする
リノベーションとは、建物に大規模な修復をすることで元々の建物の価値以上にすることをいいます。利用する人、理由、環境などに合わせて、内装やデザインを大きく変えてるので、外観とは違う印象になることも魅力の一つです。
リノベーションと聞くと、住宅のイメージが大きいのですが、鉄骨造の建物の場合は使用目的を大きく変えてしまうケースもあります。
例えば、ビルの場合です。これまでオフィスなど事務所として利用していたビルを、住居用にリノベーションしています。住宅と違い元々の間取りが広く取られているのが特徴で、大きな空間を利用してデザイン性を高くして、おしゃれな部屋となっています。
不便さも魅力
古い建物を活かすということでは、日本よりヨーロッパのイメージがあります。日本では、景観や街並みを残していくために「保存」という形が取られますが、ヨーロッパでは、保存としてではなく実際に住んでいたり、学校やビルとして活用がされています。
古い建物を活かすのに不安に思うのは、やはり不便さです。長い年月の中で点検や改修はされているもの、廊下が狭かったり天井が低いことは、否めません。
しかし、その不便さもアイデア次第で魅力に変えることができます。天井の低さをカバーするために奥行きを出したり、廊下の狭さは壁を一部壊したり窓を増やすことで解消することができます。設備に関しても同様に、効果を上げる方法を取り入れることでストレスを減らすことができます。
費用について
古い建物を活かす方法があっても、問題は費用です。既存の建物を利用するとはいっても、希望するものや建物の状況によって費用は大きく違ってきます。
費用については、自治体の助成金や融資を申請するなど方法があります。こうした制度を利用することで、古い鉄骨造の建物を活かすことができます。
また、建物や部屋を借りる場合には、家主がリノベーション費用を負担してくれるケースもあります。金額に限度はあるものの建物に費用がかからない分、設備やインテリアにお金が使えるのはメリットです。
活かすために見直すポイント
古い建物を活かすためとはいえ、確認しておくべきことが2つあります。
この2つをクリアしておかないと、リノベーションをしたとしても利用されないままで終わってしまいます。
建築基準法
日本で建物を建設するためには、「建築基準法」にある基準を満たしていないといけません。
特に日本の場合には、地震大国と呼ばれ過去に大規模な地震が多発しています。こうした経験を踏まえて、建築基準法は改正を繰り返しています。
過去の地震で震度7を経験しており、耐震基準では震度7規模の地震を想定して改正されているので、かなり厳しものとなっています。
対象となる鉄骨造の建物がいつ頃に建設され、どの程度の基準を満たしているのかを確認してください。調査や改修が必要であれば優先して行いましょう。
錆について
鉄骨造の建物のデメリットでもある錆については、細部まで確認する必要があります。
鋼材は錆びることで強度が下がりますし、建物に大きく影響します。
むき出しになっている部分はほとんどありませんが、柱や梁など重要な部分で使用されているので、必ず改修工事を行なってください。
まとめ
古い鉄骨造の建物の活かし方についてまとめてみました。
古い建物が注目されるようにはなりましたが、まだまだ認知されるまでにはいきません。だからと言っても解体には莫大な費用がかかります。
所有する鉄骨造の建物の様々な活かし方を考えて、利益が出せる建物として活用してください。