食品工場は人の体内に入れるものを製造する場所なので、衛生面や安全性が重視されます。
もし、異物が混入したり、製造過程でミスがあったりすれば大問題になるでしょう。
そこで、食品工場では安全性に気をつけなくてはいけません。衛生的な工場にするには建設の段階から計画的に準備することが必要です。
なぜなら立地選びや建物の設計は工場の安全性に大きく影響を与えますが、建設が完了したあとでは修正が難しいからです。また、建物内の設備にどんなものを採用するかも大切ですよね。
さらに、食品工場を建てるならHACCPについても知っておかなくてはいけません。HACCPは食品を扱う事業所での衛生管理の手法をまとめたもので、2021年の6月1日から原則として全ての食品事業者が取り入れることが求められています。
そこで今回は食品工場を建設するときに注意すべきポイントや、HACCPについてご紹介していきます。食品工場を経営されている方はぜひ参考にしてくださいね。
食品工場の建設における立地の注意点3つ
まずは食品工場の土地を選ぶ際に注意すべきことをまとめていきます。建設する環境によっては工場の安全性が脅かされることがあるので、土地選びは慎重に行いましょう。
ネズミや害虫の発生源を避ける
食品工場を悩ませる存在といえばゴキブリなどの害虫やネズミです。害虫やネズミが工場内に侵入すると食品を食べたり、糞尿によって汚れたり、異物混入の原因となったりします。
飲食店が近くにある場合、周辺にネズミや害虫がたくさんいる可能性が高いので、飲食店に近い場所や飲食店が多い地域を避けることが食品工場の土地選びのポイントの1つとなります。
煙や塵埃が飛んでこない場所を選ぶ
食品工場を建設するなら煙や塵埃にも注意しましょう。煙や塵埃が飛んでくる場所に建ててしまうと施設内が汚れてしまう可能性があります。
そこで、他の工場など煙を発生させる施設や、塵埃の発生源となる場所が近くにないかどうかを確認しなくてはいけません。また、これらが遠くにある場合でも風に乗って運ばれてくることがあるので、周辺の風向きの状況も把握しておく必要があります。
排水しやすい土地を選ぶ
排水しやすいかどうかも食品工場を建てる上でよく確認すべきポイントです。製造によって発生した水がいつまでも工場の周辺に溜まっていると衛生的によくありません。
そこで、土地の高低差などから排水しやすい土地かどうかを見極める必要があります。
食品工場の建設における構造の注意点3つ
衛生環境が整った工場にするためには建物の構造の工夫も欠かせません。構造は工場が完成してからではなかなか修正が効かないので、設計の段階から安全な工場を作るためにどんな配置にすべきかをよく考える必要があります。
そこで、食品工場を建てるために注意すべき3つのポイントをご紹介します。
汚染区域と清潔区域はしっかり分ける
食品工場は大きく2つの区域に分けることができます。汚染区域と清潔区域です。清潔区域は食品を製造するエリアや消毒エリアなど衛生に特に注意を払うべき場所で、汚染区域はそれ以外のエリアのことです。
この2つの境目が曖昧だと外の汚れを作業場に持ち込んだり、作業員が仕事中に汚染区域に入ってしまったりします。すると当然、安全性が脅かされてしまうので、まずはそれぞれのスペースが汚染区域と清潔区域のどちらに当たるのかを明確にし、その上でしっかり分けることが求められます。
作業員の行動プロセスを元に設計する
食品工場の設計を決めるときの基準の1つは作業員の行動プロセスです。作業員はまず出勤し、作業服に着替え、汚れを落とし、作業場に入るという流れがありますよね。これに沿って構造を作ると衛生的な環境を作ることができます。
もしもこの流れを考えていなければ、消毒をした後に汚染区域を通って作業場に入るというような問題が生じてしまいます。
トイレは作業場から離れたところに設置する
作業員は勤務中に何度かお手洗いに行くはずです。トイレはもちろん汚染区域に当たります。作業員のことを考えるとトイレが作業場から近い方が便利ですが、この2つのエリアが近いとどうしても菌や汚れを持ち込んでしまうリスクが高くなります。
そこで、トイレは作業場から離れたところに設置するのが望ましいです。
食品工場の建設における設備の注意点6つ
食品工場の中にある設備は時に工場の安全性を脅かす原因になってしまいます。
そこで、食品工場を建てるなら知っておきたい設備に関する注意点もまとめていきます。
温度管理ができるシステムを整える
食品工場では温度管理が非常に大切です。例えば肉や魚などの生鮮食品は一定の温度で管理しなければ腐ってしまいます。もちろん、その他の食材にも保管するのに適切な温度があります。
日本は四季の変化がはっきりしていて、夏は40度近くになったり、冬は氷点下になったりと1年を通して激しい気温の変化があります。
そこで、食品工場ではエアコンや冷蔵庫など、温度を管理するシステムの用意が欠かせません。
ネズミや害虫が発生しにくいゴミ捨て場を作る
食品工場ではたくさんのゴミが発生します。生ゴミはネズミや害虫の餌となり、その他の段ボールなどのゴミもネズミの住処になり、数を増やす原因になってしまいます。
そこでゴミの管理には工夫が必要です。例えば生ゴミは密閉容器に捨てるようにしたり、ゴミ捨て場にネズミや害虫が入らないようにしたりと対策をしましょう。
換気扇から虫が入らないようにする
換気扇は虫が侵入する経路になることがあります。そこで、ゴミ捨て場のような害虫が発生しやすい場所の近くに設置するのは避けたり、フィルターをつけたり、虫の侵入を防ぐ構造になっている換気扇を設置したりと、対策をしましょう。
埃が舞いにくいエアコンを選ぶ
エアコンは機械の内側に埃が溜まると、稼働したときに埃が舞ってしまう恐れがあります。
そのため、エアコンは埃が舞いにくいものや、自動で掃除をする機能がついているものを選ぶのがおすすめです。もちろん、定期的にエアコン内の掃除をするのも忘れないようにしましょう。
剥がれにくい素材の壁を採用する
新しく建てた工場でも、時間が経つと劣化します。壁に使われている部材は種類によっては剥がれて地面に落ちてしまうことがあります。これは異物混入のリスクを高めます。
そこで、工場の壁に使う素材は剥がれにくいものを使うのが理想的です。
扉や蛇口は手を触れずに使えるようにする
勤務中は扉を開閉したり、蛇口をひねったりすることがよくあります。扉や蛇口はたくさんの人が触れる場所なので、使うたびに触っていると作業内に菌を持ち込む原因になりかねません。
こうしたリスクを下げるには手を触れずに使えるものを導入しましょう。例えばセンサーで反応して開閉する扉や、足でペダルを踏めば水が出る水道にすれば菌が体につく心配がありません。
安全な食品工場を建設するために知っておくべきHACCPとは
食品事業に関わる人なら一度はHACCPという言葉を聞いたことがあると思います。
HACCPとは食品事業所において衛生に関するリスクを下げるために、原材料の入荷から製品の出荷までの中で特に重要な工程で衛生管理を徹底し、製品の安全性を確保する手法のことです。
HACCPには「7原則12手順」という複雑な手順があり、これを取り入れることで現場の安全性を高めることができます。
日本では2020年6月までに「原則全ての食品等事業者はHACCPに沿った衛生管理に取組むこと」が決められています。なお、1年の猶予があるため、実質2021年の6月までに全ての食品事業者がHACCPを取り入れることを求めています。
法律を守り、何より衛生的な工場にするためにもHACCPの導入を進めましょう。
食品工場を建設するときの業者選びのポイント
食品工場を建設するときにはこのように注意すべき点がたくさんあります。そのため、建設会社を選ぶときには食品工場を建設した実績がある会社を選ぶのがポイントです。
一度食品工場を建てた経験があると、どんな点に注意すべきか、設計はどうするのが望ましいのかといったことを理解しているため、頼もしいパートナーになります。
まとめ
食品工場は人の体内に直接入れるものを製造する場所です。そのため、工場の経営者は消費者に安全で安心な食品を届けられるよう、様々な対策をしなくてはいけません。
工場を建設する際には、今回ご紹介したように土地選び、構造、設備と色々な面で気をつけるべきポイントがあるので、建設会社と話し合いながら最適な環境を作り上げましょう。