現在、日本の建設業界において深刻な問題となっているのが「ウッドショック」です。
木造建築、住宅といった一部だけに影響が出ているイメージですが、建設業界に大きく影響しており、死活問題にも発展しています。
ウッドショックになった現状と、対策としてどうしているのかをご紹介します。
ウッドショックとは
木材の価格が高騰することを「ウッドショック」といいます。現在、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、木材の供給が需要に追いつかない状況になっています。
過去に似たような状況に「オイルショック」があったことから「ウッドショック」と言われています。
ウッドショックの影響は、木造建築をする日本の建設業界にもあります。マンションでも木造を取り入れられるようになりましたが、やはり大きく影響を受けているのは、住宅です。柱や梁に使われる木材が用意できないので、以下のようなことが起きています。
・住宅着工の遅れ
・住宅価格の上昇
・工期の遅れや中断
過去にもウッドショックはあった
世界的に大きな影響が出ているウッドショックですが、実は、今回のウッドショックは3回目になります。
第一次ウッドショックは1990年代の初頭です。世界的に天然林保護の活動が始まったことによる、木材の需給がひっ迫しました。
第二次ウッドショックは2006年です。インドネシアの伐採制限により合板(ベニア板)に影響が出ました。
ウッドショックの原因は何か?
今回のウッドショックの原因は、2020年から今も続く新型コロナウイルスが影響しています。
当初、海外ではロックダウンと言われ、外出が禁止され仕事に出かけることも買い物をすることも、これまで当たり前だった日常が停止していました。
そんな中、建設業界もその煽りを受けており、アメリカでは住宅の建設が一時落ち込みました。ロックダウン解除後には一転して、住宅建築の需要が一気に増加しました。
これまでの日常に戻っていく中、新しい習慣も増えてきました。その一つにリモートワーク(在宅で働く)があります。リモートワークが増えると、出勤の必要はなく家にいる時間が長くなることで、内装やインテリアにこだわるのはもちろん、住宅の購入を考える人が増加する傾向にあります。
そして、時同じしくして山火事や虫害によって木材が不足していたことも相まって、木材の需要が増加し価格高騰という状況が生まれました。
また、日本でも同様の動きが見られるようになりました。新型コロナウイルスにより、経済は落ち込み住宅だけでなく、大規模なビルや商業施設、マンションなどの建設は中止、中断という状況になりました
この状況は長く続き、その経済回復を図ろうと建築ラッシュが始まりったとも言われてています。アメリカの状況が、徐々に世界へと同じ状況になれば、対応しきれなくなるのは目に見えています。経済の急激な動きから、今回の木材価格の高騰となりました。
日本の林業は?
かつて林業が盛んだった日本なのだから、国産の林業で対応できるのでは?と誰もが考えています。しかし、これほどの影響を考えていなかったのか、林業の対応が遅れていると言われています。国土の7割が森林なのですから、十分に対応できるはずですが建設業界と同様に人手不足、高齢化が原因となり、現状に対応できる状況ではないといいます。
ウッドショックはいつまで続く?
今回のウッドショックは、木材の需要と供給のバランスが取れていないことが原因であるため、価格高騰は一時的なものと予想されており、少しずつこれまでの水準に戻るとはいわれています。
しかし、明確な見通しが立ってませんから、水準に戻るといわれても安心できる状況にはまだないことが分かります。建設ラッシュといわれてこれまで通りにいきなり戻すことは、非常にリスクが高いです。
木材の供給量は増やせない?
現在、日本の木材自給率は37.8%(令和元年)とされています。年々国産材の利用量は増えてきていますが、建設業界で使用される木材の半分は輸入木材が使用されています。日本のウッドショックは、この木材が手に入りにくいことが原因です。
それなら「国産の木材の供給量を増やせば問題は解決する」と考えられるかもしれません。しかし、日本の林業従事者の減少、再造林の見通しが立たないこと、コロナ終息後に国産材から輸入材に戻る不安などがあり、国内の供給量を増やすことは安易なことではないのです。
国の対策はなされている?
国は、適正数を発注し過剰在庫をおさえるよう企業に要請を出したり、資金繰り悪化の特例措置を出したり対処はしているものの、先行き不明で不安なままの状態が続いています。
工期遅れと中断を回避する3つの方法
このウッドショックの中、建設業界で最も避けたいのは「工期遅れ」と「中断」です。
何かしら対策は立てていると思いますが、一例として回避する3つの方法をご紹介します。
1.代替の木造工法を検討・提案
まずは、このまま輸入木材を待っていても目処が立ちません。一度やり方を見直す必要があります。ウッドショックのリスクに強いものがあることを再度確認して、設計の段階で検討してください。
大規模木造建築の場合、設計~供給~加工~施工までをワンストップで提供する仕組みが、リスクに強い安定した施工提供となります。住宅とは違い、工法を変えることの方が費用に大きな影響がでます。そして、1から設計をやり直すと工期に遅れもでるのでデメリットとなります。こうした点を踏まえて、代替案はないのか確認してください。
2.使用材料の在庫確保ができる業者に依頼する
日本国内全ての在庫が不足しているわけではありません。
・製品市場や製材所から木材を購入している工務店
・木材の種類や発注量によっては在庫を確保できる業者
こうした工務店、業者は、木材の保管等ができる施設を所有しています。在庫確保ができる業者との繋がりのあることは強みであり、100%ではありませんが木材供給に対する不安を回避することができます。
3.生産元と木材産業の現状把握
ウッドショックだからといって、業界全体がそうであるとは言い切れない部分もあります。つまり、木材が不足している、価格が高騰しているわけではないということです。
生産元と木材産業の関係性、物流方法などを確認してみたり、実際に聞いてみたりしてください。思いがけない情報を入手することはもちろん、木材を確保することができます。
ウッドショックによるリスクを回避できるのか?
ウッドショックによる材木不足、価格高騰は、いつもで続くのでしょうか?
新型コロナウイルスに対する感染対策は国によって違いが出てきました。海外ではマスク着用の義務がなくなったり、流行前の日常に戻したりする国もみられます。その一方で、いまだ感染防止を徹底する動きをみせる国もあります。現状では、どれが正しいとは言えませんから、経済を同じように回したいと思っても、リスクを考えてしまう国や企業がほとんどです。
正しい情報をキャッチして、建設業界で盛り上げていける体制を整えるまでにはまだ長期戦が予想されます。
第四次ウッドショック
現在、ウッドショックについて新たな問題が出ています。それが、ロシアによるウクライナへの侵攻です。今回の侵攻理由、民間人への被害など、ロシアのやりかたを避難する国が多いです。
すでにロシアに対して経済的制裁が始まっており、撤退する企業、物流の流れが止まってしまうという状況が始まっています。
こうした動きは、生活にも直結してきます。その中には、木材もあります。
ロシアは世界全体の木材輸出量の21%を占める世界有数の森林大国です。
このまま、ロシアの侵攻に対する経済制裁で木材の輸入が難しくなった場合を考えると、新型コロナウイルスとは別の理由から、価格高騰は避けられなくなります。
主に影響が出るのは、床や壁の下地に使う合板です。ロシア産のカラマツを原料にした合板は、日本でも多く使用されています。ロシア産の合板の特徴は、強度があり耐震性の高さです。
このまま、ロシアが侵攻を続けていたら、経済制裁によりロシア産の木材を使った合板を入手するルートが途切れてしまいます。
また、現状もウッドショックですから、こうした情報には敏感になっているため、建設業界でも在庫を確保する動きが始まっています。すでに通常の価格より8割近く上がっているということなので、深刻さが伺えます。
今後、価格高騰が考えられるもの
ここまでの流れを見ると、価格高騰の波は木材だけとは考えにくくあります。
すでに、半導体の影響により業務用の冷蔵庫の製造が止まっており、飲食系の工場や店舗では納期がいつになるのかわからない状況が続いています。
同じようなことが起きてくると、内装、設備が整わないから建物の建設も保留となることが考えられ、建設ラッシュにも影が見えてくるようになります。
今後、価格高騰が考えられるものとして、ステンレスの質感を生かしたシステムキッチンの製造販売には影響がでそうです。ステンレスの原料となる「ニッケル」は、ロシアが世界の輸出量のおよそ13%を占めています。
これが、ウクライナ侵攻によってロシアからの供給が滞ると誰も予想しており、このまま侵攻が続いた状態、もしくは停戦など状況が変わった場合でも、価格上昇は免れないといわれています。
また、ロシアが主要な生産国となる「パラジウム」は半導体に使われていています。建物に欠かせないLED照明はもちろん、事務所やテナントに必要な給湯器や温水洗浄トイレにも影響が考えられます。
まとめ
ウッドショックをテーマに、建設業界の現状と対策についてご紹介しました。
さまざまな建設方法がある中で、木造が見直されている日本では、ウッドショックは大きな影響があります。日本国内林業の見直し、人材の確保など、建設業界と悩みは変わりません。
こんご、厳しくなっていく状況が考えれる中で、国内の資源でどこまで回復することができるのか期待もしたいところです。