いま、日本の各地で地震や大雨による災害が続いています。
住宅だけでなく、工場やビルなどが倒壊したり傾いたりしています。
私たちもニュースなどで、これまでの日常が失われ、環境も激変した様子を目の当たりにしています。
こうした背景から、これから建設される建物はどんなところに着目したらよいか誰もが考えます。
どんな建物にも構造があり資材や骨組みに特徴があり、優れた点や弱点となる点などがあります。
そこで今回は、鉄骨造における構造や資材について、ご紹介します。
鉄骨造とは
構造とは、骨組みのことをいいます。
どんな建物にも柱や梁があり、そこから壁や屋根、外壁そして内装へと作業が進められていきます。
鉄骨造の建物とは、骨組みとなる柱や梁が鉄骨でできた建物となります。
この鉄骨造は、さらに3つの構造に分けることができます。
ブレース構造
木造の構造にみられる「木造軸組工法」のように、柱、梁に筋交いを使用した構造です。
筋交いとは、建物の強度を高くするために、柱と柱の間に斜めに補強しています。
耐震性に優れているといわれ、ほとんどの場合が壁に隠れるように設計されています。
ラーメン構造
骨組みである柱や梁を一体化させる構造です。
各接合部分を完全に接合(剛接合)させるので筋交いをする必要がありません。
ラーメン構造は、現代の建築物において主流の構造として取り入れられています。
また、広い空間を作り上げることも可能です。
※ラーメンとは、ドイツ語で「額縁」を意味します。
トラス構造
三角形を組んだ構造であり、接合部がピン接合なので回転させることができる。
トラス橋は、この構造を取り入れた桁橋です。
主に、屋根を支える骨組み、小屋組として使用され、また立体トラスを用いたドームなどでも使用されています。
構造用鋼について
鉄骨造で使用する鉄骨ですが、鉄と炭素が含まれた「鋼」です。
鋼は、加える炭素の量によって変化をします。
- 炭素の量が多い場合 → 硬鋼・伸びない
- 炭素の量が少ない場合 → 極軟鋼・伸びる
こうした性質を活かして、鉄骨が作られ骨組みが建てられます。
使用する建築材料(構造材)のことを「構造用鋼」といいます。
構造用鋼は、構造材として使用される鋼の総称となります。
鉄骨造の骨組みとして必要な構造用鋼は、鋼板・形鋼・鋼管です。
主要な構造用鋼として、この3つは鋼材の厚さによる分類・断面形状による分類に分けることができます。
鋼材の厚さによる分類
鋼板は、厚さによって、分類されます。
厚さによって、呼称が変わります。
- 厚さ3mm未満・・・薄鋼板
- 厚さ3mm以上幅1250mm未満・・・平鋼
- 厚さ3mm以上幅1250mm以上・・・鋼板
鉄骨造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造とあり、鋼板は厚さの違いによって使い分けられます。
軽量鉄骨造は、薄くて軽い鉄骨で骨組みをするので、厚さ6mm未満の鋼板が適しています。
防錆処理をして、柱・梁・筋交いとして使用します。
重量鉄骨造は、一般的に鉄骨造といえば重量鉄骨を指しており、高層マンションや規模の大きい建築の建設には欠かせません。使用する鋼板は、厚さ6mm以上の強度の高いものです。
断面形状による分類
断面形状を工夫して、鋼材の曲げや圧縮の強度を高めています。
形鋼と鋼管がこちらに分類されます。
形鋼ついて
決められた断面形状に仕上げられた形鋼は、使用目的がそれぞれに違います。
また、形鋼にも重量形鋼と軽量形鋼に分けられますが、特に注意がなければ重量形鋼とされます。
H形鋼
型鋼の中で代表的なもので断面効率が優れています。
超高層ビルなど建築物の構造材としてはもちろん、橋梁・高速道路の建設などにも幅広く使用させれています。
また、T形鋼は、このH形鋼をウェブ中心に2つの切断されたものになります。
I形鋼
H型鋼と似ていますが、板厚が厚い・重量・剛性に違いがあります。
フランジの内側にもテーパーをつけるなどして、区別しています。
山形鋼
断面が「L形」をしている。この2つの辺が等しいものを等辺山形鋼といい、等しくないものを不等辺山形鋼といいます。
需要は、H形鋼の次だとされており、鉄塔や橋梁にも使用されていますが、意外に門や柵の枠にも使われているのが特徴です。
溝形鋼
断面が「コ形」をしている。背中合わせにして柱、梁とすることができる。
また、溝形鋼は「チャンネル」と呼ばれるが、軽量形鋼にはリップ溝形鋼は断面が「C形」に見えるので、「Cチャンネル」と呼ばれている。
鋼管について
鋼管の断面は2種類で、円形と角形です。
径の大きさや厚みにによって、用途が決められます。
また、ガス管などにも使用されることがあり、構造用鋼以外としても幅広く使用されています。
角形鋼管
断面が、箱のように四角になっている鋼材です。
柱として使用される場合が多く、曲げや捩れにも強いのが特徴です。
円形鋼管
断面が円形で、用途としては角形鋼管と同じ鋼材です。
鋼管杭として
今回は構造、骨組みとしての構造用鋼をご紹介していますが、鋼管は建築物の基礎となる部分でも使用されています。
鋼管杭は、建築基準法の基づいて軟弱な地盤に打ち込みます。特徴としては、垂直にも水平にも耐力があります。錆びによる劣化が心配されますが、耐用年数は50年ほどとされます。(メーカーによって異なる)
打ち込んだ鋼管杭には、コンクリートが注入されるので強度はさらに高くなります。
構造用鋼は鉄骨工場にて製造される
これらの構造用鋼は、事前に規格や用途、サイズに合わせて鉄骨工場にて製造されます。
大きさは様々ですが、建設弁ば現場のスペースは限られていますから、搬入される順番も決められています。
鉄骨造のメリットとデメリット
鉄骨造の構造用鋼を理解したところで、メリットとデメリットについてもご紹介します。
鉄骨造のメリット
梁を支える両側の柱から中心となる位置を「スパン」といいます。重量といいましたが、鉄筋コンクリートよりは軽くスパンを広く取ることができるので、工場や倉庫など大きな建築物にも適しています。
また、スパンが広く取れることで、柱の数も少なくすることができます。
ラーメン構造とした場合は、筋交いが不要なので間取りも広くなるので、建築空間も確保できます。
材質が均一であり、解体となった時も鉄なので有価物として売却が可能となります。
鉄骨造のデメリット
鉄骨造のデメリットは、急激な変化とともに現れます。
1つは、火事による変化です。燃えるというより、摂氏550度以上になった途端に建物が崩れるのです。倒壊を防ぐためにも消火は急ぎたいですね。
そして、建築物の荷重の変化です。建物にはあらかじめ人や物などどれくらいの重さになるのか計算され、構造に反映されます。しかし、それがキャパを超えた場合には耐えきれなくなり弓なりになって崩れてしまいます。通常、骨組みの部分は見えないため限界が近いことは分かりません。
こうした現象を「座屈」といいます。
その他にもサビによる劣化も挙げられます。
防錆処理はもちろん、火災保険への加入など、対策を考えておきましょう。分からない時には、専門家に相談することをオススメします。
まとめ
鉄骨造の構造や構造用鋼について、ご紹介しました。
鋼材をメインとする構造であって、建て方などに制限が多いイメージでしたが住宅だけでなく、大規模な建設にも適していて、広い空間を作り上げることも可能であることが分かりました。
また、意外だったのは木造の構造が見られる、柱や梁の強度を高めるために筋交いを使用していることです。木造と鉄骨造は真逆のようで似ている部分があることは驚きでした。
鉄骨造は、急激な変化に弱いという課題はありますが、東京オリンピックに向けて建設ラッシュの続く日本では、必要な構造のとなりそうです。