この記事では次の内容をまとめています。
- 軽量鉄骨造の特徴
- 軽量鉄骨造のメリット
- 軽量鉄骨造のデメリット
軽量鉄骨造で工場や倉庫を建てようか悩んでいる方が知っておくべきことを全てまとめました。
工場・倉庫によく使われる軽量鉄骨造とは
軽量鉄骨造とは厚さ6mm未満の鋼鉄を使用して建てられる建築物のことです。
6mm以上のものが使われる場合は「重量鉄骨造」と呼ばれます。
どちらも鉄骨造で大まかな特徴は似ていますが、軽量鉄骨造と重量鉄骨造で特徴が異なる部分もあり、工場や倉庫を建てるなら、どちらの特徴も知った上で判断することが大切です。
軽量鉄骨造は工場や倉庫だけでなく、住宅や店舗など、中〜小規模の建物に使われることが多いです。
軽量鉄骨で工場・倉庫を建てるメリット6つ
この章では工場や倉庫を軽量鉄骨造にするメリットをご紹介します。
1 | 重量鉄骨造より低コスト |
2 | 強度がある |
3 | 耐用年数が長い |
4 | 建物の品質が安定している |
5 | 工期が比較的短い |
6 | 建設する土地の選択肢が多い |
重量鉄骨造より低コスト
軽量鉄骨造は重量鉄骨造よりもコストが安く済みます。
その理由は次のようなものがあります。
- 部材が重量鉄骨造よりも安い
- 工期が比較的短く、人件費が削減できる
- 全体的に軽いため、地盤調査や基礎工事に重量鉄骨造ほどコストがかからない
- 部材が軽いので現場までの運搬費が安く済む
木造の方が建設コストは安いですが、鉄骨造で、予算をできるだけ抑えたいという方には軽量鉄骨造がおすすめです。
強度がある
鉄骨造は強度があるのが大きなメリットです。
日本は地震や台風など災害が多いので、強度が高いと安心ですし、従業員や製品を守ることもできます。
軽量鉄骨造は重量鉄骨よりも薄いことから、強度を懸念する方もいるかもしれません。
確かに、耐震性は重量鉄骨造よりも少し劣ります。
ただし、軽量鉄骨も柔軟性があり、力がかかっても折れにくいです。
軽量鉄骨造の耐震性を上げるには、ブレースを設置する方法があります。
これは柱や梁に対角線状に部材を入れて補強するものです。
ただし、ブレースを入れると構造の自由度が下がるというデメリットが生じます。
耐用年数が長い
軽量鉄骨造の耐用年数(国税庁が定めた減価償却できる年数)は次の通りです。
- 金属造のもの(4mmを超えるもの)・・・31年
- 金属造のもの(3mmを超え、4mm以下のもの)・・・24年
- 金属造のもの(3mm以下のもの)・・・17年
ちなみに他の構造の耐用年数は次の通りです。
- 木造・合成樹脂造のもの・・・15年
- 木骨モルタル造のもの・・・14年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの・・・38年
- れんが造・石造・ブロック造のもの・・・34年
木造よりは長く、鉄筋コンクリートやれんが造などよりは短いことが分かります。
ただし、これらの数字はあくまで目安の1つで、メンテナンスを適切に行えばより長く使うことも可能です。
建物の品質が安定している
軽量鉄骨造には建物の品質が安定しているというメリットがあります。
これは部材が工場で大量生産されるため、品質にばらつきが出にくいのが理由です。
また、現地での作業も担当者の能力によって仕上がりの質はあまり変わりません。
一方で、木造の場合、使用する部材を職人が見極めて使用するため、知識や経験によって選び方に差が出ます。
木は鉄と違い、種類や育った環境によって特性が異なるため、どこにどの木を使うかという判断はとても重要です。
また、木造は建設のプロセスでも職人の腕によって出来が左右されます。
工期が比較的短い
軽量鉄骨造は次のような理由から、工期は比較的短いです。
- 部材が工場で生産される
- 部材はある程度工場で組み立てられてから出荷される
- 現場で作業する期間が短いため天候の影響でスケジュールが遅れることが少ない
- 地盤改良や基礎工事に時間があまりかからない
工期が短いので、できるだけ早く新しい工場や倉庫が欲しいという場合に向いています。
また、工期が短いとそれだけ稼働時間が短くなるため、コスト削減にもなります。
建設する土地の選択肢が多い
軽量鉄骨造の建物は重量鉄骨造に比べて選べる土地の幅が広いです。
その理由は軽量鉄骨は重量鉄骨よりも部材が軽く、建物全体の重さも軽いからです。
軽いとより多くの地盤に建てることができます。
一方で、重量鉄骨造は土地によっては建設前に大がかりな地盤改良工事が必要なこともあり、時間もコストもかかります。
また、土地の性質によってはどうしても建設できないという場合もあるでしょう。
ちなみに、重量鉄骨造は重さに耐えられる造りにするために、基礎工事にも費用がより多くかかります。
軽量鉄骨で工場・倉庫を建てるデメリット6つ
この章では工場・倉庫を軽量鉄骨造にするデメリットをご紹介します。
1 | 大空間を作れない |
2 | 耐火性が重量鉄骨造より低い |
3 | 部材が錆びやすい |
4 | 夏は暑く冬は寒い |
5 | 通気性が低い |
6 | 遮音性が低い |
大空間を作れない
重量鉄骨造は部材が厚く、強度が出ることから、柱のない大空間を作ることが可能です。
大空間があれば工場では大きな機械を置くことができますし、生産効率を高める動線を作ることができます。
また、倉庫は天井近くまであるような大型の倉庫を設置することができます。
一方で、軽量鉄骨造は重量鉄骨造ほどの大空間を作ることは難しいです。
強度を保つために一定の距離で柱や壁が必要なので、構造や部屋の間取りの自由度はどうしても低くなってしまいます。
大空間を作りたい、間取りにこだわりたいという場合は重量鉄骨造の方が向いています。
耐火性が重量鉄骨造より低い
部材が薄いことから、重量鉄骨造よりも耐火性は低いです。
火災によって鉄骨が歪んだり、溶けたりして、最悪の場合は倒壊する恐れがあります。
ただし、耐火性を上げる方法はいくつかあります。
そのうちの1つが耐火被覆材を用いることです。
これは部材の周りにつけることで耐火性を高められるものです。
耐火被覆材は断熱性や吸音性も高められることがあります。
万一のために耐火性の低さへの対策をしておくと安心です。
部材が錆びやすい
鉄骨には錆びやすいという特徴があります。
鉄骨は錆びると性能が落ち、耐久性の高さがメリットの鉄骨造も強度が下がってしまいます。
このデメリットに対してすべきなのは防錆対策です。
使用する部材にあらかじめ防錆対策をしておけば錆の発生を予防することができます。
構造部分を建設完了後にメンテナンスするのは簡単ではないので、建設段階のうちから対策をするのが望ましいです。
夏は暑く冬は寒い
軽量鉄骨造は断熱性が低いです。
つまり、夏は暑くなりやすく、冬は寒くなりやすいです。
これは鉄骨に熱を伝えやすいという性質があるためです。
対策をしなければ従業員は過酷な環境下で働かなくてはいけなくなってしまいます。
断熱性を高めるには色々な方法がありますが、建設段階なら屋根や外壁に断熱材を入れるという手があります。
また、エアコンなどの空調設備を用意することも大切です。
不快な環境の中では従業員の士気が下がり、生産効率の低下を招くので、断熱性の低さへの対策を考えましょう。
通気性が低い
軽量鉄骨造は湿気が溜まりやすいという特徴があります。
湿気が溜まるとカビが生えやすくなり、原材料や製品が劣化して出荷できなくなるケースも考えられます。
衛生面が重要な食品工場では特に問題となります。
また、湿気が溜まると結露ができやすく、製品を汚す可能性もあります。
湿気や結露を防ぐには換気をしっかりしたり、防湿剤を置いたりと様々な方法があります。
工場や倉庫でできる結露対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
遮音性が低い
鉄筋コンクリートに比べると防音性は低いです。
防音性が低いと近隣トラブルの原因になったり、従業員が落ち着いて休憩できなかったりと、様々な問題が生じます。
遮音性は建物に吸音性のある素材を使用することで高めることができます。
また、防音シートを貼ったり、防音性のあるカーテンを使用したりと、建設後にできる対策もあります。
まとめ
軽量鉄骨造にはメリットもデメリットも両方あります。
そのため、工場や倉庫を建設するときには両方を把握し、他の構造の特徴と比べた上で最終的にどの構造を採用するかを決めるのが理想的です。
軽量鉄骨造のデメリットの中には対策をすることで問題を解消できるものもあるので、軽量鉄骨造で建てたい場合は建設会社と対策を相談しましょう。