この記事では次の内容をまとめています。
- よくある医薬品工場の建設理由
- 医薬品工場建設のステップ
- 建てるときに気をつけるポイント
医薬品工場の建設を考えている方が知っておくべきことを全てまとめました。
よくある医薬品工場の建設理由3つ
この章では医薬品工場を建設するよくある理由をご紹介します。
1 既存の工場の老朽化 |
2 工場を拡大したい |
3 BCP対策 |
既存の工場の老朽化
まず、今の工場を建ててから年数が経っているケースです。
古い工場は次のようなリスクが高まるので、時期が来れば建て替えが必要になります。
- 建物の倒壊
- 雨漏り
- 異物混入
- 見た目が悪く従業員の士気が下がる
工場を拡大したい
「新しい生産設備を導入したい」「扱う商品数が増えた」など、ニーズの変化によって今の工場が狭くなったことで新工場の建設を検討する場合もあります。
この場合は新しい工場の設計を考える際に、今後新たに増える生産ラインについても考えながらレイアウトを決める必要があります。
BCP対策
BCPとは” Business Continuity Plan”の略です。
BCP対策とは災害や感染症の流行といった非常事態が発生しても、打撃を最小限に抑えて事業を継続していくための対策のことを指します。
工場でのBCP対策の1つとして、代替工場を用意するというものがあります。
複数の拠点を持っていれば、1つの拠点が災害により崩壊しても別の拠点で製造を行えるため、企業全体の生産がゼロになることはありません。
医薬品工場建設の11ステップ
この章では医薬品工場を新しく建設する際の大まかなステップをご紹介します。
1 現状の課題を明確にする |
2 目標を定める |
3 社内の生産に関する情報をまとめる |
4 法令・条例を確認 |
5 発注方式を決める |
6 基本設計 |
7 見積もり |
8 見積もりを受けての調整 |
9 実施設計 |
10 施工 |
11 アフターメンテナンス |
現状の課題を明確にする
まず、現在企業が抱えている問題を明確にしましょう。
例えば次のようなものが考えられます
- 新しい設備を追加したいがスペースが足りない
- 生産量を増やしたい
- 災害時に別の拠点をカバーできる仕組みが必要
今ある課題を解決することができなければ新しく建設する意味がないので、慎重に考えましょう。
目標を定める
1つ前のステップで明確にした課題をもとに工場建設においての目標を決めましょう。
このとき、数字で具体的な目標を設定したり、期限を定めたりすることで、建設会社と認識のズレが発生するのを防ぐことができます。
また、実現するために何をすべきかが分かりやすくなるというメリットもあります。
社内の生産に関する情報をまとめる
医薬品工場の建設を成功させるためには、あらかじめ生産に関する情報を正確に把握することが欠かせません。
次のような情報をまとめましょう。
- 生産プロセス
- 生産品目
- 生産量
- 生産方法
- 生産設備
法令・条例を確認
建物を新しく建てる際は様々な法令や条例が関わります。
そこで、関連のある法令や条例を把握し、違反しないよう、計画を進めましょう。
発注方式を決める
建物を建設する際の発注方式には次のような種類があります。
- 設計施工分離発注方式
- 基本設計からの設計施工一括発注方式
- 実施設計からの施工一括発注方式
- ECI方式
それぞれメリットや特徴が異なるので、条件や優先したいことに合わせて適切なものを選びましょう。
基本設計
依頼主からの要望や、クリアしなければならない法令や条例を踏まえて大まかな設計を行うプロセスです。
具体的には次のようなものを作成します。
- 全体配置図
- 断面図
- 各階平面図
- 動線設計図
- フローシート
- 機器仕様書
見積もり
大まかな建設計画ができたところでコストの概算を行います。
正式な見積もりを行う前に工事費の見積もりを行う理由は予算を大幅に超えそうにないか確かめるためです。
予測されるコストをこまめに確認しておくことで、正式な契約の直前になって調整を行う必要が生じるのを防ぐことができます。
見積もりを受けての調整
コストの概算を行い、予算を大幅に超えていた場合は次のような方法で調整します。
- 予算を増やす
- 設計内容を見直す
工場建設にかかるコストはかなり高額なので、納得がいくまで調整することが大切です。
また、設計内容を見直してコスト削減を図る際は、建物の耐久性や機能性に影響を与えない範囲で行うのがポイントです。
実施設計
施工に移るにあたって必要な図面を作るプロセスです。
基本設計よりももっと詳しい設計図を作成します。
この段階では次のような内容についても決定します。
- 外部や内部の仕上げ材
- 電気や設備関係の詳細
- 外構
- 看板
このあと、最終の見積もりを行い、問題がなければ正式に契約を結びます。
施工
設計図をもとに現場で工事を行います。
この段階では定期的に建設会社と打ち合わせをして進捗状況について共有したり、細かい仕上げのやり方について話し合ったりします。
終盤では試運転を行い、問題がなければ引き渡しが行われ、完成となります。
アフターメンテナンス
建設業者によっては引き渡し後にアフターメンテナンスを行う場合があります。
新築の建物に問題が見つかることはほとんどありませんが、時には1年の間の気温の変化によって部材が伸び縮みし、割れてしまうことが稀にあります。
だからこそ、アフターサービスがついている業者と契約しておくと安心です。
医薬品工場を建てるときに気をつけるポイント7つ
この章では医薬品工場を建てる際に考慮すべき点をご紹介します。
1 GMP |
2 害虫対策 |
3 壁や床の材質 |
4 清掃効率 |
5 廃棄処理設備 |
6 交叉汚染 |
7 動線 |
GMP
GMPとは” Good Manufacturing Practice”の略で、製造管理や品質管理の基準のことです。
医薬品工場は次のGMPの原則を遵守しなければいけません。
- 人為的な誤りを最小限にすること
- 汚染及び品質低下を防止すること
- 高い品質を保証するシステムを設計すること
これらを実現するためには建物のレイアウトや、設備・機器に何を選択するかが大きく関わります。
そこで、建設の始めの段階から、GMP規定を満たすように意識する必要があります。
害虫対策
医薬品工場では害虫対策に力を入れなければいけません。
なぜなら、異物混入の原因となるからです。
しかも、虫は小さく、建物のあちこちから侵入するため、徹底的に対策することが欠かせません。
対策としては次のようなものがあります。
- 虫が発生しやすい箇所(樹木、水路、側溝など)が近くにない場所に建設する
- 排気口や換気口に防虫フィルターを設置する
- ドアや窓の隙間から侵入しないようにテープで塞ぐ
壁や床の材質
劣化したときにヒビが入り、細かい粉が発生するような素材を壁や床に使用すると異物混入の原因となってしまいます。
そこで、医薬品工場の壁や床の材質を選ぶ際にはこうした特徴のあるものは避けましょう。
清掃効率
医薬品工場は衛生面が非常に重要です。
そこで、清掃効率が高い工場を目指しましょう。
清掃効率が高ければ、稼働する中で工場が汚れてもすぐに清潔な状態に戻すことができます。
具体的にはこんな方法があります。
- ロッカーの上など、埃やゴミが溜まりやすい部分が斜めに処理されている設備を採用する
- 壁と床の境目はゴミが溜まりやすいので、直角ではなくカーブになっている構造にする
- 水を使用するスペースでは水はけが良くなる設計にする
廃棄処理設備
医薬品製造の過程で発生する有害物質は適切に処理し、無害化しなくてはいけません。
ここを疎かにすると、周辺地域の生態系に影響を与えたり、近隣住民の健康問題に繋がったりと様々な影響をもたらし、企業の信頼問題にも関わります。
そこで、廃棄処理設備についても慎重に検討しましょう。
交叉汚染
- 作業員の服に製品の粉が付着
- 機械の中に前に製造した製品の粉が残っている
- 同じ空間で別の製品を製造
このような様々な原因によって医薬品の交叉汚染が発生します。
交叉汚染が発生しないように考え抜かれた設計にすることが求められます。
動線
医薬品工場では衛生管理や品質管理が重要ですが、企業としてはやはり生産性も追求したいですよね。
生産効率を上げるには設計段階で無駄のない動線を作っておくことが欠かせません。
しかし、どのようにすれば最適な動線になるのかなかなか分からないと思います。
そこで、工場の生産実績が多い建設会社に依頼し、ベストな提案をしてもらいましょう。
まとめ
医薬品は特に衛生面や品質面が重要視される製品です。
そこで、新しく医薬品工場を建設する際は衛生管理や品質管理を徹底できる建物を目指して建設会社としっかり打ち合わせをすることが求められます。
消費者に安全な製品を届けられるよう、ベストな工場建設を行いましょう。